新型コロナウイルス感染症の影響で、エンターテイメント業界は大きな変化の時を迎えています。参加者が大勢集まるイベントは、やむを得ず中止になることが増えました。一方で、デジタル技術を活用したオンラインイベントはかつてない盛り上がりを見せています。
このようにかつてない変革期に置かれているエンタメ業界の現状に迫りつつ、将来的にどのようなサービスが人々に求められていくのかを分析していきます。
エンタメ業界の概要
記事のはじめに、「エンタメ業界」には、具体的にはどのような事業が含まれるのかを解説します。
エンタメ業界の事業は幅広い
「エンタメ業界」という言葉には、幅広い事業が含まれます。主なものを挙げると、テレビ・ラジオ放送事業、映画事業、音楽事業、アニメ事業、ゲーム事業、舞台・イベント事業、遊園地・レジャー事業、動画配信事業など。人々が楽しんでいるコンテンツの多くが、「エンタメ業界」の仕事であると言えます。
エンタメ業界の現状
▼テレビ業界に関して
エンタメ業界の中でも、テレビは多くの人々にとって身近なものではないでしょうか。2018年度のテレビ業界の市場規模調査では、民間基幹放送は2兆3,396億円、ベーシックサービスは4,298億円という市場規模になっています。インターネットの発展によって「テレビ離れ」が指摘されることも多くありますが、市場の規模としてはいまだに大きいのです。
▼コンテンツに関して
では、日本のエンタメ業界全体で見るとどうなのでしょうか。2018年の市場規模調査では、国内のエンタメ業界全体の市場規模は約10.6兆円と試算されています。テレビ業界の3倍ほどの規模です。
ではこの数字を、世界のエンタメ業界と比べるとどうでしょうか。同年の調査では、世界のエンタメ業界の規模は約128.8兆円という数字が出ています。つまり日本のエンタメ業界は、世界市場における7〜8%を占めているという計算になります。
ただし、世界的にエンタメ業界が規模を増している昨今、日本市場が占める割合は年々減少していく傾向にあります。
※経済産業省: 令和2年2月 商務情報政策局 コンテンツ産業課「コンテンツの世界市場・日本市場の概観」より
エンタメ業界のトレンド
エンタメ業界の規模について解説しました。次に、現在の業界の課題について見ていきましょう。
昨今の特徴として無視できないのはデジタル関連コンテンツです。年々伸長していて、今後もますます加速し、業界における占有率を伸ばしていくと見られます。デジタル技術を高めていくことは、避けて通れない課題でしょう。
また今のエンタメ業界では、サブスクリプション方式が広く利用されるようになったことで、ライフスタイルとして、さまざまなコンテンツに日々接するということが定着してきています。コロナ禍の巣ごもり需要で、家でサブスクリプションの動画やアプリ、ゲームなどを楽しむ人も増えました。人々の暮らしに最適な方法でコンテンツを提供することは、これからも重要な課題となりそうです。
さらに昨今、国境を超えてアニメ・漫画・映画が世界各国で流行するケースが多くみられます。海外への突破口となるコンテンツを作り出して、広く発信していくことも課題になっています。
現在のエンタメ業界は、少子高齢化の影響をダイレクトに受けているという特徴があります。子ども向けのコンテンツは縮小傾向にあり、反対に大人向け・シニア向けのコンテンツが拡大傾向にあります。この現状も踏まえて上記の課題にあたっていくと、事業の将来的な成長に繋がります。
エンタメの今後成長する業種はITをうまく活用している
コロナ禍において、大勢が集って行うイベントは、実施の判断がなかなか難しいところです。そこでこのご時世の産物として、ITをうまく活用した形のエンターテインメントが大きく発達しました。
動画ビジネス業界
人々の暮らしに「動画」は欠かせないものとなりました。これらの盛り上がりの根幹には、スマートフォンの急激な普及があります。
動画配信プラットフォームYouTubeやSNSライブ配信など、誰もが個人単位で簡単に動画を作り、情報発信を行うことができるようになりました。その結果多くのインフルエンサーが生まれ、強い影響力をもつようになりました。
また、TVerやHuluなどのテレビ番組の見逃し配信サービスも絶好調です。映画・アニメ・テレビ番組などの幅広いコンテンツを時間と場所を選ばずに楽しめるのが人気の理由でしょう。サブスクリプション型のサービスが多く、多種多様なコンテンツを金額を気にせずに楽しめるようになりました。外出先や移動中でもスマートフォンなどから気軽に視聴できることもあって、人々の生活に組み込まれるようになっています。
動画ニーズの高まりは、広告業界にも変化を起こしています。インターネット広告が、新聞・雑誌・ラジオ・テレビの4大マスメディアに匹敵するほど急成長する中で、インターネット広告において特に動画広告に、いま高いニーズがあります。動画視聴は多くの生活者にとってすでに日常の一部であり、特に若い層を中心にテレビ視聴に代替する形で利用されています。テレビと違って性年齢や趣味嗜好などのユーザーターゲティングがしやすいこともあり、広告主にとってのユーザビリティが高いと判断されているためです。
5G通信の技術による通信高速化への期待も高まっていて、今後もますます注目を浴びるジャンルです。
体験型ビジネス業界
コロナ禍では、オンラインイベントの需要が高まりました。無観客ライブ・無観客試合・SNSライブ配信などが数多く実施されました。オンラインで行うことで感染対策になることや、場所の制約を受けないので移動の手間がなくなるなど、オンラインならではの利点を、多くの人が発見することになりました。
またイベントによっては、ただオンラインで視聴するだけでなく、まるでリアルの場にいるかのように会場に合図やコメントを送ることができたり、視聴者同士が交流できたりと、従来の形とは一味違ったシステムで参加者を魅了するものもありました。
さらにバーチャル空間にアバターを使って参加する、いわゆるバーチャルフェスなども行われました。ARやVR(バーチャルリアリティー)とエンタメの融合が、より身近な存在になってきたと言えます。
ゲーム業界
電子機器を使う競技「eスポーツ」も、世界的に普及を見せました。今や競技人口は全世界で1億人を超え、さらに観戦者数は4億人にのぼると言われています。最近では、「サブスクリプション型ゲーム」と呼ばれる定額サービスも盛り上がりを見せています。料金を支払うことで、契約期間中サービス側が提供するゲームを自由に遊べるというものです。
今後も発展し続けるであろうeスポーツですが、日本では法律の整備が追いついていない現状があります。海外ではeスポーツの大会に高い賞金が設定され、盛り上がることが多いのですが、日本でそのような大会を行うと、賭博罪に該当する可能性があるためです。そのため、eスポーツ法の整備が急務となっています。
エンタメ業界で将来性が期待されるサービスは?
変革期を迎えているエンタメ業界ですが、これからの時代において将来性が期待されるのは、どのジャンルなのでしょうか。
無観客試合
コロナ禍以前では、スポーツの試合は会場に集まり声援を送りながら楽しむというのが主流でした。しかし感染症対策として、プロ野球をはじめ多くの種目で、会場に観客を入れない試合が開催されることになりました。
感染者を出さないという点では安心ですが、試合中の声援がない環境は、選手にとって不慣れなものです。声援は選手の気持ちを高める重要なファクターでもあります。そこで複数の企業で、リモートで声援を送ることができるシステムが開発されています。手元のボタンで拍手や声援を送ると、リアルタイムで試合会場に音声が届くのです。このような技術活用が、今後も期待されています。
無観客ライブ
スポーツ界だけでなく音楽業界も、無観客でのイベント実施に取り組んでいます。
大物アーティストをはじめ、たくさんの人が映像と音だけでライブ体験を届けました。ライブならではの盛り上がりや一体感が失われてしまったという欠点がありますが、一方で無観客の状況を活かし、無観客でしかできないライブを開催するアーティストも多くいました。客席一面にライトを置いたり、通常なら観客の視界を遮るのでカメラマンが立てない場所に、カメラマンを配置したりなど。アーティストの工夫によって、無観客ライブでも十分に楽しめるものことが世の中に周知されました。リアルなライブでは遠方で行けない人や、抽選に外れて行けない人が発生しますが、それがないのも無観客ライブの醍醐味です。今後も、一定の需要が継続されることが見込めます。
オンラインファンミーティング
アーティストやタレントが開くファンミーティングも、このコロナ禍でますます浸透しました。
Zoomなどのビデオ会議ツールを利用して、複数人で会話をする形をとって進むミーティングが増えています。握手会など、近距離で触れ合えるイベントの開催が難しくなっている今、多くのファンが利用しています。
タレントとファンがじっくり話せる貴重な場として、これからも重宝されていくことが期待されます。
SNSライブ配信
InstagramやYouTubeをはじめ、SNSでリアルタイム配信をする人が増えています。通常の投稿と違って、同じ時間を共有しながら楽しめるのがポイントです。
視聴者は、コメントなどで、出演者とコミュニケーションを取ることが可能。スマホ1台でどこでも出演者と繋がれるライブ配信は、これからも多くの人に利用されると予測できます。
エンタメ業界で成長するためにはM&Aを活用しよう
エンタメ業界には、M&Aによって成長を目指す企業も多く存在します。実例と共に、そのメリットを紹介します。
エンタメ業界でM&Aを行う意義
エンタメ業界でM&Aを行うメリットは、ノウハウを共有することでシナジーが生まれ、これまで取り組めなかった内容の業務にも手を広げられることです。自社が得意としていない分野があれば、その領域で力のある企業と手を組むことで、業界にいまだかつてない価値を生み出せるかもしれません。また、財務基盤や雇用が安定するというメリットがあるのもポイントです。
エンタメ業界に関するM&A事例
例として、ソニーグループの事例を挙げます。ソニーグループは2021年10月、米ソニー・ピクチャーズエンタテインメントの子会社に当たるオンラインゲーム会社を、アメリカのゲーム事業会社に1,100億円で売却しました。理由は、ソニーが行なっている他の事業との相乗効果が見込めないからというものでした。
ソニーは、2021年からの3年間に使うエンタメ事業への投資枠として、2兆円を充てる想定を公表しています。状況に応じて、時に売り手になり、時に買い手になりという形で、M&A市場を乗りこなしている企業です。
まとめ
新型コロナウイルスによるライフスタイルの変化や、デジタル技術のめまぐるしい進歩によって、エンタメ業界は形を変えて盛り上がり続けています。
エンタメ業界で活躍し続けるためには、成長するジャンルを的確に捉え、最先端の動向を踏まえたコンテンツを提供していくことが重要です。
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