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医療機関の事業承継・M&Aの増加背景と買い手が理解すべきポイント

2020年10月27日

病院・クリニックのM&Aの成約件数は、ここ3~5年で増加傾向にある状況です。

わが国の少子高齢化社会の到来により、病院やクリニックの患者数は緩やかに増加しており、売上も増加傾向にあります。

しかし、規模の小さい地域の病院では、医師の高齢化や後継者不在が顕著です。資金力の乏しい病院は施設の老朽化が進んでいるにも関わらず、建て直しができないという状況もあります。

このような現状にあって、昨今注目されているのがM&Aによる医業承継です。

今回は医療機関の事業承継・M&Aが増加している背景と、病院・クリニックを買収するにあたって買い手が理解すべきポイントについて解説します。

医療機関M&Aの現状について

医療機関M&Aが増加している背景には、オーナーの高齢化や後継者不在で経営が困難になったことや、あるいは国が打ち出した医療費抑制政策にともなう診療報酬の削減などの影響があります。

医療機関のM&Aは一般の事業のM&Aとは全く異なり、単に大きな利益を上げることよりも、「地域医療を存続させる」といったような社会的な意義が非常に強いことが特徴です。

たとえば、過疎化の傾向にある地方の病院やクリニックは、そこがなくなると地域住民の方がだれも医療を受けられない、わが町の病院が存続できなければ隣町の病院まで車で30分かけて通わないといけないといった深刻な事情があります。

このような事情があることから、事業承継や後継者不足に悩みながらも、「地域のために閉じたくても閉じられない」という病院やクリニックのオーナーは日本全国に多いのが現状です。

しかし、病院のオーナーである医師やドクターは、医療の専門家であっても経営の専門家ではありません。

オーナーの高齢化や後継者不在によって将来の病院の経営をどうすべきか悩んでいる方でも、M&Aで事業承継をすれば病院を存続できるという手段すらも知らないケースが少なくないのです。

医療機関の買収を検討されている方は、M&Aによって金銭を得る目的よりも、前オーナーの「これまで築き上げてきた病院を誰かに引き継いで残してもらいたい」といった意思を汲んだうえでM&Aを決断する必要があるでしょう。

医療機関の市場(マーケット)について

病院とクリニック、それぞれの市場の現状について見ていきましょう。

病院M&Aのマーケット

2020年現在、日本全国には約8,400の病院があり、うち6,000弱が民間によって運営されている病院です。

20年前は約9,500あった病院が毎年1年間で50ずつ閉院、直近では8,400まで減少しています。

日本は少子高齢化が進んで人口が少なくなっていることはもちろん、国も病床を削減していく方針を打ち出しており、昨今の診療報酬の改定でも明確に病床の削減を促している背景があります。

病院のM&Aは今後も増え続け、その数は少しずつ減少していく傾向が続くと考えられますが、再編のピークは今後3~5年、2025年を境に減少トレンドとなることが予想されます。

クリニックM&Aのマーケット

病院が減少傾向にあるなかで、クリニックは毎年約6,400件が廃止、約7,300件が開設という新陳代謝が激しいマーケットの様相を呈しています。

クリニックを開設されている方々は、大学病院や一般の病院で部長クラスの役職を勤めた後、独立して自身の「城」を築くというケースが多数派です。

一方で、第三者がクリニックを承継して開業するケースはまだまだ少数派ですが、現在はM&Aを活用した承継開業が少しずつ増加しています。

このような現状から、今後もクリニックのM&Aは右肩上がりに増加、2025年以降も恒常的にM&Aが行われることが予想されるでしょう。

M&Aを活用して事業存続、開業することができるということを知らない医師も多い

病院やクリニックを売りたい方々の理由

病院やクリニックを売りたい、第三者に承継したいとお考えの方のおもな理由は以下の3つです。

  1. 後継者不足
  2. 経営不振
  3. 施設の老朽化

それぞれの理由について深く掘り下げていきましょう。

1.後継者不在

1つ目の理由は後継者不在の問題です。

病院やクリニックのオーナー医師が高齢者となると、多くの場合でその子どもに後を継がせたいと考えます。

しかし、後継者不在は業界を問わず深刻化の一途をたどっており、医療機関もまた一般の事業会社と同じで後継者がいないという問題を抱えています。

医療機関でも親が病院を経営しており、その子どもに後を継がせるといった承継が行われていますが、以下のように承継が上手く行かないケースも少なくありません。

 

  • 地域の大病院の医院長の子どもが地元に帰ってこない
  • 大手病院の勤務医のほうが楽で良いという考え
  • 子どもが自分の診療所を開業している
  • 親と子で専門分野が異なる

 

日医総研の2019年の「医業承継の現状と課題」によると、2017年時点で有床診療所の79.3%、無床診療所の89.3%、病院の68.4%が後継者不在と回答しています。

全業種合計が65.5%であったことを考えると、医療機関はとくに後継者不在率が高いということがわかります。

2.経営不振

2つ目の理由は病院・クリニックの経営不振です。

多くの病院・クリニックのオーナー医師は、診療報酬も単価も右肩上がりだったバブル期の時代に開業しています。

今から30~40年前は、現在のような必死の経営努力をしなくともある程度の利益が出ていましたが、昨今は国が診療報酬の削減を打ち出し、社会保障費の削減をしていかないと日本そのものが成り立たないという状況にあります。

2000年以降の診療報酬は右肩下がりとなっており、医療機関にとっては締め付けの厳しい改定が続いています。

このトレンドのなかで経営の工夫ができない病院・クリニックのオーナーは収益が下がったり、財務状況が悪化したりして経営不振に陥り、「先行きが非常に不安」という方も少なくありません。

医療報酬が今後もプラスに転じることが期待できない状況下では、医師が経営者を兼ねていた時代は終わりを迎えています。

たとえば、外部から非医師の経営者を招き入れて医療と経営を分散、病院経営を効率化するという経営戦略も考えられるのではないでしょうか。

3.施設の老朽化

3つ目の理由は施設の老朽化です。

1985年に病床数の増加と医療費増大を抑制する目的で、第1次医療法改正が成立しました。この改正は日本で初めての病床数の総量規制、新規の病院開設を許可制としたものです。

改正前後にはいわゆる「駆け込み増床」が急増しており、この時期に建てられた病院・クリニックは35年経った現在、老朽化を迎えています。

新築から35年といえば、建て替えを検討しなければいけないタイミングです。施設の老朽化とともにオーナー医師も高齢化しており、建て替えが困難であるという病院・クリニックも少なくありません。

したがって、病院・クリニックの建て替えのタイミングで譲渡を検討する方が増えています。

医療機関M&Aのポイント

結論から言うと、病院やクリニックの実質的な経営者には、医師でない人でもなれます。

たとえば、MS(メディカル・サービス)法人として間接的に病院の経営をする手法もあれば、最近では一般社団法人が病院・クリニックを開設する手法も出てきています。

医療機関のM&Aと一般企業のM&Aの大きな違いは、医療機関のM&Aはお金が目的ではないことです。

病院・クリニックの譲渡を検討しているオーナー医師は、「地域に病院を残さなければならない」「従業員を守らなければならない」「地域医療を崩壊させてはならない」という意思を持っています。

医療機関の買収にあたっては、オーナー医師が求めていることは何かを追求し、営利目的よりも地域医療に貢献するという気持ちでM&Aを検討する必要があるでしょう。

まとめ

医療機関の現状やM&Aが増加している背景、およびM&Aを検討するにあたっての重要なポイントについて解説しました。

医療機関M&Aはお金が目的ではないため、買い手が営利を目的としたM&Aを推進したところ、売り手からの賛同が得られません。

病院・クリニックを存続させること、地域医療を守ることなど、オーナー医師や従業員が求めていることは何かを追求することが大切です。

 

 

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