ZOZOTOWNがYahooに買収されたり、世界的に有名なファストファッションブランドForever21がアジア圏から撤退することが決定したりと、様々なニュースが飛び交うアパレル業界。物流のIT化に伴い、実店舗においてもオンラインにおいても、販売方法がここ数年で激変しています。
日本では、少子高齢化の影響でアパレル業界は縮小産業といわれていますが、実際にどうなるのでしょうか?今回は、アパレル業界が置かれている現状と将来性について解説します。
アパレル業界の業態
一言で「アパレル」といっても、業態は以下のように大きく2パターンあります。
・製造から販売までを一貫して取り扱う企業
・出来あがった商品を仕入れて販売をする企業
どちらの場合も「アパレル」という一言で表現されますが、前者がメーカー、後者が小売と分類されます。それでは、アパレル業界全体ではどのように衣類が製造されているのでしょうか。
製造
生地やボタン、商品に必要なパーツを仕入れ、作る工程を指します。国内の人件費高騰により、日本に工場を持ち、国内で製造しているアパレル企業の数は大幅に減少しています。
例えば、今や世界的有名アパレル企業となった株式会社ファーストリテイリングは、約半分の主要素材工場を中国、次いでタイ、ベトナムに持っています。
流通
これまで日本では、製造した商品は百貨店や店舗に流通していました。しかしインターネットの普及に伴い、オンラインショップで消費者が直接洋服を購入できるようになり、従来とは異なる流通経路が確立されています。
販売
販売についても昨今では店頭に限らず、ネット上でも行っています。消費者の動向としても、店頭で試着したものをネット上で購入するなど、店舗の役割は時代と共に変化しつつあります。実際に、GUでは昨年2018年11月に「オンライン・オフラインをつなぐ次世代型店舗」として「GU STYLE STUDIO(https://www.gu-japan.com/jp/feature/gustylestudio/pc/)」をオープンしています。このような流れは今後拡大すると考えられます。
アパレル業界の現状は
では、日本におけるアパレル業界の現状はどのようなものなのでしょうか。将来性も交えて解説していきます。
国内アパレル市場の縮小
国内市場は縮小傾向にあります。その要因は、婦人服の売上高が微減していること、また少子化により子ども服の売上が減少していることにあります。紳士服は微増ですが、婦人服と子ども服の売上減を埋められるほどの伸び率ではありません。
また、これまでの日本のアパレル市場を牽引してきた百貨店の売上高も減少しています。売上減のピークと比較すると今のほうが落ち着いていますが、市場の縮小は抑えられないのが現状です。
矢野経済研究所:2017年の国内アパレル総小売市場規模の推移
ファストファッションとラグジュアリーへの二極化
さらにアパレル業界は、GUやユニクロのようなファストファッションと、オンワード樫山や三陽商会に代表されるようなラグジュアリーブランドの二極化が進んでいます。消費者にとっては「安い」「高い」がはっきりしますが、この二極化が進むと、値段やブランドコンセプトにおいて企業はよほどの魅力や特徴を打ち出していかない限り、似たラインナップが溢れてしまい顧客獲得は一層厳しくなっていくことが予想されます。
ネットプレイヤーの台頭
インターネットを通した販売が増加し、更にデータをもとにした販売戦略が進化してきているため、店舗スタッフの雇用は縮小傾向にあります。例えば値引き、これまでは店舗スタッフの経験則や季節要因で値引きのタイミングやセールの時期を決めていましたが、現在では顧客データをもとに、値引きに最も効果的な時期や値引き額を判断し、自動で最適化出来るようになってきました。
消費者の海外への流出
インターネットが普及することで、誰でも簡単に海外の商品を購入することが出来るようになりました。このことで、国内の店舗で洋服を購入するしか選択肢がなかった消費者が、海外へ流れてしまっているという現状があります。
アパレル業界の将来性
このように、国内では現状苦境に立たされているアパレル業界ですが、以下のような打開策もあります。
1. 販売形態を国内から海外へ向ける
2. 直接消費者へ販売するという2点があります。
海外展開
先述したように、消費者が海外の商品を購入できるようになったということは、アパレル企業側も海外の消費者へ向けて販売することができます。国内だけに焦点を合わせるのではなく、海外展開も視野に入れて商品開発をすることが重要です。これは販売先だけの話にはとどまりません。製造拠点そのものを海外へ移してしまうという判断もできます。
SPAで勝ち組になったブランド
SPAはspecialty store retailer of private label apparelの略で、いわゆる「製造小売」という意味です。デザインから製造、流通を経て販売まで一貫して取り扱うビジネス形態を表現しています。
SPAの強みは、流行をいち早く取り入れ商品化し、店頭に並べることが出来るため、消費者のニーズに柔軟に対応することが出来ます。また、これまで外注していたフローを社内で進められるようになったことで、自社の収益がアップする点も大きなメリットと言えます。
しかし、その一方で他社との差別化が難しくなっていきます。「ニーズに合った今売れそうなもの」を他のアパレル企業も取り入れようとするため商品が似通ってしまい、結果として同質化しているのです。どのようにして他社と差別化を図っていくかが、今後のSPAを取り入れた企業の課題となっていくでしょう。
SPAを取り入れているブランドとして知られているのは、国内で「ユニクロ」「無印良品」、海外のブランドでは「ZARA」「GAP」などが該当します。
消費の波は次第にSPAからD2Cへ、アパレルで生き残るためのカギ
しかし、時代はすでにSPAからD2Cという販売形態へとシフトチェンジしようとしています。このD2Cは、今後のアパレル業界再生のためのポイントになるとも考えられます。D2Cとは、「Direct to Consumer」の略で、製造後の商品を百貨店など店舗に卸さず、消費者へ直接販売する仕組みです。代表的なものに、大手アパレルメーカーが自社サイトで直接消費者にネット販売している形態があります。
ZOZOTOWNや楽天などのIT企業のアパレル部門が業績を伸ばしているように、今後はアパレル企業のオンラインショップから直接ユーザーが欲しい服を注文する流れが、ますます加速していくでしょう。
アパレル業界で生き残るために、M&Aはコスパの良い戦略
これまでお伝えしてきた海外展開や、D2Cの仕組みを自社で作ることもできますが、非常に時間がかかるうえに、失敗して投資が無駄になってしまうリスクもあります。また、仕組みを作るだけではなく、少子高齢化による事業承継に悩むアパレル企業もあるかもしれません。そこでこれらの問題を解決する有効な手段として、M&Aがあります。ここからは、具体的なアパレル業界のM&Aのパターンを解説します。
M&Aでノウハウ・技術を獲得
既存のアパレル企業にとって、現代のICTやAIを利用した販路拡大は並大抵のものではありません。専門の人材を雇うには、採用コストや時間がかかり、実現させるまでの難易度やリスクが高くなります。
そこで活用したいのがM&Aです。メールやチャット、SNSのほか、通信販売に関する技術を持っている会社や部門と統合することで、ネット販売に必要な知識や技術を組織に取り込むことができます。国内でもM&Aによる技術の獲得は一般的になりつつあります。
後継者問題解決のためのM&A
先ほど触れたように、アパレル業界のM&Aの事例として、後継者問題があります。後継者は見つからないものの、非常に高い技術を持ち合わせている場合、事業譲渡をすることでお互いがwin−winの関係を構築できます。譲渡する側は後継者問題の解決を手にし、買収した側は欲しい技術を手に入れるといったお互いに有益な取引を実現できます。
不採算部門の立て直しを図ることもできる
また、M&Aの活用方法は上記2点に留まりません。事業を立て直す際に、不採算部門はそのままで好調な部門のみを売却し、その時の売却益で不採算部門の立て直しを図ることもできます。また、不採算部門でも買い手企業から見れば1からその部門を立ち上げられないので、基盤だけを手に入れるためにM&Aを実施するケースもあります。このように、M&Aには様々な活用方法があるのです。
アパレル業界に将来性はある
現在、業界レベルで低迷を続けるアパレル産業ですが、将来性がないわけではありません。現在の業界の傾向を知り、問題を打開する方法はさまざまです。SPA化や、D2Cなど様々な方法がありますが、その中のひとつの戦略としてM&Aを活用することもできるかもしれません。自社の現状と、今後を見据えながら最も有効な解決策を導き出しましょう。
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