レポート

2019.03.18

まるわかり!中小企業が軽減税率制度に備えるための対応策を一挙紹介!

いよいよ、今年の10月から消費税が10%へ引き上げられます。今回の増税に伴う制度変更では、事務負担が増えることやシステムの買い替え・改修などの対応で、大企業よりも中小企業のほうが影響を受けやすいと考えられています。ところが、東京商工リサーチの「消費増税によるアンケート」調査によると、中小企業の6割(同内容で大企業の回答は4割)が増税に対する準備をしていないという状況です。

中小企業はこのまま何の準備・対策も行わないままとなると、業績への大きな圧迫要因となりかねません。今回の増税では、軽減税率制度キャッシュレス決済によるポイント還元制度インボイス制度の導入の3つの大きな制度変更が予定されているため、過去の税率変更時よりも企業の負担が確実に増えると予想されているからです。

今回は、消費税増税に伴う3つの制度変更について、その概要、運用時の留意点及び補助金などの支援策をご紹介していきます。初回は、軽減税率制度とその対策です。

軽減税率制度とは

軽減税率とは、今年の10月1日から実施される見通しの消費増税における、経過措置のことです。この措置によって、一定の商品・サービスは、例外的に8%に据えおかれることになります。

対象となるのは、飲食料品と週2回以上発行され定期購読される新聞です。しかし、同じ飲食品でも、増税後は消費税10%のものと8%のものが混在します。下図は、8%の商品と10%の商品を整理したものです。基本的には、酒類と外食が軽減税率の対象外ですが、細かに見ていくと軽減税率かどうかの判断は非常に複雑といえるでしょう。

例えば、

・ミネラルウォーター(飲用)は8%、水道水は10%

・レッドブル(医薬品等に該当しない)は8%、ユンケル(医薬品等に該当)は10%

・レストラン等で購入した商品を持ち帰る場合は8%、イートインで購入したものを食べる場合は10%

・椅子・テーブルのない屋台で飲食品を購入した場合は8%、椅子・テーブルがある屋台で飲食品を購入する場合は10%

といった具合に、飲食料品を扱っている事業者は、販売している商品や提供している形態によって税率を判断する必要がでてくるのです。

【出典:東京商工会議所 消費税率引上げ・軽減税率制度導入対策

さらに、商品価格(税率)表示も事業者にとって頭の痛い問題です。例えば、「みりん」で「1,000円+消費税」と表示した場合、消費者は、消費税8%(80円)と思うかもしれませんが、実際はみりんは酒類で消費税率は10%(100円)となります。このように、成分表を見なければ判断しにくい場合もあるため、飲食店の販売業者は状況に応じて価格表示を変更したりといった工夫をする必要があるでしょう。

軽減税率は企業の経理処理に影響大

軽減税率制度への対応が必要な事業者は、飲食料品などを取り扱く事業者だけと思われわれがちですが、実は、全事業者に関わることであり、対応を求められることになるでしょう。

わかりやすい例では、贈答用の飲食品や接客時の茶菓子の購入などです。これらも軽減税率の対象となり、経理処理や納税額の計算に影響してきます。

また、企業が仕入れ・支払いをする際にも軽減税率への対応を求められます。例えば、仕入れ業務では支払先ごとに納品書と請求書の各品目の税率や請求金額が正しいかを確認する必要があるでしょう。課税売上に係る消費税と同じように、課税仕入れに係る消費税額も、会計帳簿には標準税率と軽減税率に区分して記帳することになるのではないでしょうか。

さらに、主として軽減税率対象商品を取り扱う事業者であれば、販売・代金回収時に販売する商品や提供形態によって複数の税率が混在するため、新たな事務処理が発生することを予想されます。請求書や領収書を発行する場合、軽減税率の対象商品であることに加え、税率ごとに合計した金額の記載が必要となります。

システム更新が困難な中小企業には、国による支援政策も

10月の施行前に、企業には様々な準備作業と費用が発生すると予想されます。例えば、従業員の教育や運用マニュアルの作成、商品の価格表示の変更、商品展示の変更、レジの複数税率への対応、販売管理システム、仕入システムや会計システムの改修・導入などです。

しかし、リソース不足が顕著な中小企業にとって、こうした大幅な変更にすぐに対応するのはなかなか困難です。そのため、国は補助金など、様々な支援政策を提供しようとしています。

1. 軽減税率対策補助金

軽減税率対策補助金とは、軽減税率対象商品を日頃から販売している中小企業・小規模事業者等が複数税率に対応するためにレジの導入やシステムの改修・導入を行う場合に利用できる、国からの補助金です。審査型の補助金と違って、公募要領とおりの申請をすれば、100%交付される補助金のため、企業は活用しない手はありません。

この補助金には、A型、B型、C型の3つの申請類型がありますが、導入パターンなどにより更に細分化されています。また、補助率や補助上限額は色々なパターンがありますので、詳細は省きますが、例として以下のような補助を受けられます。

A型:レジの新規導入や既存レジの改修

補助率 3/4  補助上限額 20万円

B型:電子的受発注システムの改修・入替

補助率 3/4

上限額 発注システム 1,000万円 受注システム 150万円

C型:事業者間取引における請求書作成などのシステム

補助率 3/4  補助上限額 150万円

軽減税率対策補助金の申請のポイントとは

補助金を申請するには、事務局に登録されているレジや製品だけが補助対象となるため、事前の確認が必要です。その際、販売店やシステム事業者などによる代理申請も可能です。しかし、その場合は事業者が指定事業者として登録されている必要があります。また、申請類型によって、申請受付時期や完了時期が異なるので、申請時期を過ぎてしまわないよう注意する必要があります。

【出典:軽減税率対策補助金 http://kzt-hojo.jp/ 】

2. 税額計算の特例等

税額計算の特例とは、売上や仕入を消費税率ごとに区分することが困難な中小事業者のために、簡便的な計算法をもとに税額計算を行うことができる特例があります。顧問税理士などに、特例の適用を相談してみるのもひとつの手です。

売上税額の計算の特例

売上税額の計算の特例とは、売上の一定割合(3種類の考え方)を軽減税率対象の売上とみなして税額を計算することができます。この特例は、基準期間の課税売上高が5,000万円以下の中小企業が対象となり、2019年10月1日から4年間(2023年9月30日まで)選択ができます。一定割合の考え方は、仕入額の軽減税率対象の割合、10日間の売上の軽減税率の割合及び50%です。

仕入税額の計算の特例

仕入れ税額の計算の特例とは、仕入の一定割合(2種類の考え方)を軽減税率対象の仕入とみなして税額を計算することができます。この特例の対象は、基準期間の課税売上高が5,000万円以下の中小企業となります。実施期間は、2019年10月1日から1年間(2020年9月30日まで)。一定割合の考え方は、売上額の軽減税率対象の割合、簡易課税制度の選択です。

経理処理の対応や補助金の申請等、早めの取り組みが必須

このように、過去の増税時とは異なり、今回の軽減税率の導入は企業への対応負担が増えることが十分に予測されます。制度を充分に理解し、対策を取っておかなければ、売上への影響も招きかねないかもしれません。

また、次回紹介するポイント還元制度など、今後、増税に対応する様々な支援策の実施も予定されています。支援策について情報収集のアンテナを高くし、賢く各支援策を活用することが必要となるでしょう。