皆さんは、竹細工と聞いて何を思い浮かべるでしょうか?
最近では生活のなかで触れる・見る機会がすっかりなくなってしまったかもしれませんが、例えば、日常的に使われているものであれば、蕎麦のせいろや蒸し器があるでしょう。竹細工の器具は調理に適しているため、日本では長く使われてきました。他にも、お茶の道具の茶せんは、先端の部分が竹ひご細工で作られていたり、農具や漁をする際の道具にも竹細工が使われていたりします。また、今はそんなに馴染みがないかもしれませんが、子供達が夏に遊ぶ玩具、水鉄砲も竹で作られており、これら竹を用いて作った商品を総称して、“竹細工”と呼んでいます。
全国的に職人の数が減っている
せいろや蒸し器、茶せんなどは、竹を“ひご”と呼ばれる紐状にして編み込まれており、用途に合わせた編み方が何種類もあります。仕上がった時に装飾性が感じられるように、太さが違う竹ひごを使って編み上げると、メリハリがついてよりデザイン性のある仕上がりが魅力です。
竹のしなやかさ強さを美しいデザインが魅力の竹細工ですが、品物を一つ作り上げるのに必要な工程は200ともいわれています。全てがそうではないですが、それらの工程はたいてい、一人の職人によって行われています。
しかし、竹細工も他の伝統産業と同様、作り手・職人の数が今後も減り続けていくことが予想されています。いまいる職人や次の世代のために技術を継承していくこと、作り手を増やしていくことが、竹細工を途絶えさせないための近々の課題です。
竹細工の盛んな土地における取り組み
竹細工といえば、大分県の「別府竹細工」や、奈良県で作られている「高山茶筌」が“経済産業大臣指定伝統的工芸品”に指定されています。特に伝統行事と切っても切り離せない古式ゆかしいものや、装飾性が高い細工ものが一般的に知られているようです。
別府竹で作られた風鈴
大分県は竹林面積が全国でも2位を誇る土地柄であることから、竹を適正な本数に伐採してそれを維持する優良竹林化が積極的に行われています。そのため、真竹が豊富に採れ、装飾性の高い別府竹細工が繁栄しました。現在は、別府竹細工の普及のため、東京教室での別府竹細工体験や、外国人訪日客に向けたパンフレット作成、竹細工体験の講座といったPR活動が行われています。
個人商店による取り組みとは
・創業から100年続く谷中銀座の竹工芸 翠屋
指定伝統工芸品ではない日用品として使われている竹細工も最近は注目されています。例えば、“谷根千(谷中根津千駄木エリアの総称)”には、谷中銀座と呼ばれる庶民的な商店街があり、その谷中銀座にある竹工芸 翠屋。この翠屋では“花籠”と呼ばれる花器を専門に作っています。創業から100年、3代続く歴史ある企業なのです。現在、花籠を作っている3代目の武関翠篁(すいこう)さんは、伝統工芸展の入賞の常連でもあり、腕前が認められ美術館などにも数々の作品が収蔵されています。
本来、摘んだお花を入れる花籠。この花籠の素材は茅葺き屋根に使われている“煤竹”です。ただし、茅葺き屋根の家屋が減っていることから、煤竹に関しては材料を調達するのに苦労しているようです。
こじんまりとしたギャラリースペースも備えるお店には、花籠の他にバッグや、箸置き、簪といった製品が並びます。翠屋で買い物をするために、はるばる来日をする訪日客もいるとのことで、地道に作り続け生活に役立つものや形の美しさを追求していることが奏功しているようです。
・500点以上の商品が陳列されている水木屋馬場商店
台東区蔵前にある水木屋馬場商店も、明治期に創業された歴史ある商店です。バッグ、かご類を中心に、素材も竹製品の他に籐や柳、芒草、山葡萄、山胡桃などのかご・バッグが取り揃えられていることでも知られています。同時に、この水木屋馬場商店は卸売りにも対応していて、個人でもまとめ・複数購入で単価を安く下げた価格での購入ができるようです。
本格的な天然素材使いの竹をはじめとした各種のバッグやかごには、高級品も含まれていて、一点の価格が数万円といったものも珍しくありません。反面、日常的に使う雑貨としてのざる、かご、トレーのようなものは数百円から購入することも出来て、お店にある品物をあれこれ吟味するのも楽しいようです。
入りやすそうな店内に、ところ狭しと並べられたバッグ、かご類は素材のバリエーションの豊富さもさることながら、大きさや用途・目的別にさまざまな種類が取り揃えられていて、思わずいくつも手に取ってしまうようです。
・近藤竹製品
同じく台東区にある食器や調理道具の卸売り商店が軒を連ねる、かっぱ橋道具街にある近藤竹製品も、竹細工の食器・道具などを販売しています。飲食店が多い上野エリアにあるお店は、現在は外国人が多く訪れ活気ある浅草エリアにもほど近く、専門商店としての強みである、豊富に取り揃えた竹細工の商品が特徴です。
視覚的な美しさを武器に、職人として、また専門商店として活路を見出す
冒頭でも触れましたが、竹細工には多彩な編み込み方があります。いずれも古くから伝わる伝統的な編み込みの手法で、実用品としての竹細工としてのみならず、仕上がった時の視覚的な美しさを意識して考案されているものばかり。
いずれの取り組みでも見えてくるのは、作り手として、販売する側として相手に届き、喜ぶ顔が見たい、竹細工の良さを知って欲しいといった部分です。時代が変わり、日本全国でみても本格的に竹細工を作り続けることが出来る産地は今後も減っていくことでしょう。個人商店として出来ること、作り手として出来ること、これらの取り組みの真髄は、伝統産業や昔ながらの手法で作られる製品に日常的に触れてくれる人々を、少しずつでも増していくことにほかなりません。
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