東京都内でも有数の商店街を持つ品川区。全国に300以上ある「○○銀座」の元祖といわれている「戸越銀座商店街」や、東京で最も長いアーケード商店街の「武蔵小山商店街」ほか、区内には105もの商店街があるのだそうです。休日になると、全国から観光客が訪れて賑わいをみせる商店街がある一方で、空き店舗が目立つ商店街もあります。二極化が進みつつある品川区の商店街の現状と、その取り組みについてレポートします。
品川区で店舗数が最も多い戸越ブロック、店舗数は307店
品川区の商店街のブロック分けは、区内共通商品券取扱店データ(平成 27 年12 月 31 日現在)に基づき10に区分されています。店舗数が最も多いエリアは東急線の戸越銀座、戸越公園、荏原中延、中延が最寄り駅の「戸越ブロック」、次いで東急線の武蔵小山駅を中心とする「小山ブロック」、京浜急行沿線とJR品川駅に広がる「品川ブロック」がベスト3となっています。
反対に店舗数が少ないエリアは、JR西大井駅の「西大井周辺ブロック」と、JR西大井駅と東急線の下神明駅近くに広がる「二葉ブロック」京浜急行の鮫洲駅から大森海岸駅に広がる「大井海岸ブロック」です。一番店舗数の多い戸越ブロックの店舗数は307店、一番店舗の少ない「西大井ブロック」の店舗数は73店舗で、その差はなんと4倍以上の開きがあります。
商店街の個店店主の平均年齢は58.3歳
平成28年1月~2月にかけて商店街にある各商店に経営形態、従業員数と店主の年齢、個店の課題などのアンケートを実施、その結果個店の現状が浮かび上がりました。経営形態については、法人化している店舗が全体で55.5%を占める結果に。また、従業員数は1人から4人が最も多く、全体の56%を占めました。さらに店主の年齢については60代が最も多く、回答者の23%を占め、ついで50代、40代、70代と続き、店主の平均年齢は58.3歳という現状が浮かび上がってきました。
広がる空き店舗、現状とその対策とは
アンケートによると、品川区全体の商店街にある店舗総数が1924なのに対して、空き店舗数は109。全体の約5%が空き店舗ということになります。ブロックで見ると、「二葉ブロック」が18.5%、大井海岸ブロックが13.8%となっています。空き店舗が埋まらない理由で一番多かった回答は「所有者に貸す意思がない」が最も多く、全体の35.9%、次いで「借りたい人がいない」23.1%、「家賃などの条件が折り合わない」20.5%と続きます。さらに空店舗対策については「特に対策を取っていない」が実に79.5%を占めています。とはいえ商店街の中には、空き店舗を借りて地域の交流の場やフリースペースなどを有効活用しているというケースも見受けられます。商店街を活気づかせるために地域密着型で空きスペースを解放することは、市民にとっての貢献度が高い取り組みでしょう。
品川区の場合は、活性化への取り組みのひとつとして「品川区の一番店発見プロジェクト」を行なっています。商店街にある店舗の中から、区民による投票で「元気のある店」「魅力のある店」といった基準で選ばれた店舗を、品川区が「マイスター店」として認定するものです。平成18〜23年の5年間で、延べ200店が選ばれました。
さらに品川区の105の商店街のうち68店舗が加盟している品川区商店街連合会によるイベントなども多数開催されており、商店街を盛り上げる取り組みを積極的に支援しています。例えば「しながわまちゼミ品川塾」(主催:しながわまちゼミ実行委員会、協力:品川区商店街連合会、後援:品川区)も好評です。これは「得する街のゼミナール」がコンセプトで、商店街のお店の人がプロの知識を持って料理や健康のアドバイスなどをしてくれるというもの。講座は5つのカテゴリーから選べ、少人数でミニ講座を実施しており受講料は無料です。
また品川区主催で2月初旬に開かれた「伝統の技と味/しながわ展」(共催:品川区伝統工芸保存会)は年に一回開催されています。このイベントは“品川で育まれた伝統と歴史に間近で触れられる”をコンセプトに和菓子やお茶など伝統の味も楽しめるというもの。和裁や浮世絵刷り、江戸すだれ等の伝統の技の実演ブースには毎年多数の人が訪れています。なお伝統の味のブースは品川区の商店街にある店舗が出店しており、品川区マイスターに選ばれた店舗もあります。
<伝統の味・店舗紹介>
今回は品川区の商店街にあり、マイスター店に選ばれた店舗3店をご紹介します。
東急池上線・荏原中延駅から徒歩約5分の距離にある「丸田商店」はシューマイの専門店です。中延ブロック内、昭和通り商店会に店舗があります。創業は昭和47年。名物の「シューマイ3姉弟」という3種のシューマイの串刺しは、品川みやげの認定品にもなっています。一本190円と気軽に購入できるので食べ歩きに人気なのだとか。店の看板商品の五目シューマイをはじめ、餃子、ちまき、肉まんなどが販売されています。品川区の伝統の味と技の常連店でもあります。
創業は安政3年と160年を超える歴史があり、坂本龍馬や山岡鉄舟も訪れていたという「そば会席 立会川 吉田家」は、京浜急行・立会川駅近くの旧東海道沿いにある老舗です。農林水産大臣賞を受賞したというこだわりの蕎麦粉を使った蕎麦は、格別の風味があります。厳選した胡麻油を使った天ぷらのほか、お刺身などの和食も人気があり、特に四季折々のメニューが堪能できる「蕎麦会席」は会食や法事などに最適です。鯉が泳ぐ中庭もあり、料亭の雰囲気も味わえます。
北品川商店街にある「菓子司 木村屋」は、品川区の「伝統の技と味/しながわ展」に参加している店舗。創業は明治25年、地元で長年親しまれている地域密着型のお店の名物は「品川餅」と「大福」。品川餅は昔ながらの餅の味を基本に、よく練った求肥に大納言の鹿の子豆を入れて黄名粉をまぶしています。また大福は、都内でも珍しい青えんどうに大納言のつぶし餡が入りほのかに塩味がする逸品です。毎月7がつく日の縁日には大きな大福になるのだとか。ほかにも、手軽な価格で手作りの和菓子が楽しめます。
課題は従来の商店街のリブランディング
品川区の商店街は、観光名所から地域密着型まで、幅広い用途があるのが特徴といえます。ただ、エリアによっては空き店舗が目立つ商店街は増え、個人商店店主の高齢化も進んでおり、日本全国共通の後継者問題がここにも垣間見えます。シャッター街となり地域経済の停滞のシンボルとなってしまわないよう、今後は第三者による店舗の有効活用や、店舗資源を活かして経営できる最適な後継者への事業譲渡が多く実現することで、商店街ならではの活気を呼び戻し、持続的なコミュニティー運営を図っていくことが求められているのではないでしょうか。
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