「従業員とブランド、お客様を守る」ためにM&Aを決意
2025年08月28日
2025年08月28日
兵庫県丹波市に本社を構え、主にウォーターサーバーのレンタルと天然水の販売事業を手掛ける「株式会社オーケンウォーター」。製品の品質がさまざまな年代から支持され、着実に顧客数を増やしてきた同社ですが、事業のさらなる成長を目指して2025年4月に「大洋ガステック株式会社」へ株式譲渡を実施しました。今回、これまでオーケンウォーターを支え、M&A後も同社の取締役社長として事業を推進する近藤宏之様に、M&Aの背景や今後の事業ビジョンについてお話を伺いました。
| 譲渡企業 | |
|---|---|
| 社名 | 株式会社オーケンウォーター |
| 業種 | 飲料水の製造・宅配事業 |
| 拠点 | 兵庫県 |
| 譲渡理由 | 後継者不在 |


| 譲受企業 | |
|---|---|
| 社名 | 大洋ガステック株式会社 |
| 業種 | エネルギー事業(LPガス) |
| 拠点 | 福岡県 |
| 譲受理由 | 経営の多角化 |

オーケンウォーターの主力製品は、京都丹波、富士山麓、大分天領などの銘水地で採水された天然水。採水から48時間以内に全国の顧客のもとへ届けるという、新鮮な水の提供が多くの世代から支持され、現在1万人以上の定期契約顧客を抱えています。もともと「丹波の銘水を全国に届けたい」という思いから1990年に設立された同社のこだわりについて、近藤様は次のように語ります。
「インフレにより多くの商品価格が上がり続ける中で、企業努力により多くのお客様が求められる価格帯で、質の高いサービスを提供することを心がけてきました。
その上で私たちが守るべきことは、『おいしさ』と『安全性』です。この2つを追求しつつ、多くの人のもとに届けられる価格帯にするにはどうすればいいか。高品質のサービスを広く提供するために、検討を重ねてきました。」
オーケンウォーターの顧客層は30〜40代が中心ですが、20代の子育て世代、東日本大震災直後に増加した50代の顧客など、多様な年代から支持を得ています。また、近年は上場企業を含む大手企業との契約も増えており、個人顧客が7割、法人顧客3割ほどの比率となっています。

また、会社の所在地である兵庫県丹波市の活性化を目的に、オーケンウォーターは2つの取り組みを実施しています。1つ目は、ウォーターサーバーの新規契約者に、丹波産のコシヒカリやトウモロコシ、栗などをプレゼントするキャンペーン。2つ目は、丹波の貴重な働き手が都市部に流出し続けている現状を少しでも防ぐために、「丹波にいながら、日本全国を相手に力を試せる場所を提供したい」という思いで、地域の人が輝ける場所作りを推進することです。
「丹波の農作物・特産物をユーザーに届けることで、少しでも丹波の魅力が伝わればと思い、プレゼントキャンペーンを始めました。また、丹波エリアは都市部への人工流出に伴い働き手が不足しています。当社やこの街が魅力ある場所として働き手から選ばれることで、この現状を少しでも改善できるよう、職場環境の向上や地域活性化に取り組んでいます。
そのほかには、会社の社会的責任として、ウォーターサーバーの水を防災グッズとして活用する方法も積極的に発信を行っています。お客様の安全を守るための啓蒙活動にも力を入れてきました。」

オーケンウォーターが提供するウォーターサーバー「スマートプラス」
創業から30年にわたり事業を続けてきたオーケンウォーターですが、経営環境に変化があらわれます。コロナ禍の影響もあり、2020年から2021年にかけて顧客数が減少。戦略の見直しを迫られた同社は、従来のフィールドセールスやインサイドセールスを一切やめ、Webでの顧客獲得へ舵を切ります。
「2023年に私が社長に就任した後は、Webマーケティングへ戦略をシフトしました。私自身、飛び込み営業からコールセンター、Web業務まで、すべての業務を経験した中で、Webが最も我々のサービスと相性が良いと確信しました。獲得件数や獲得単価、管理コスト、そして解約率などさまざまなデータもとに判断し、Webに振り切りましたね。
当初は自分自身で広告運用やライティング、ディレクションまで全てを行い、コストを抑えつつ高い効果を上げることを目指しました。これが結果に結びついたのですが、当社は従来から水の品質にこだわり、多くの人に届けられる価格帯で提供してきました。それが不特定多数にアプローチできるネットとマッチしたのだと思います。」
戦略をシフトした2023年以降、顧客数は順調に増加。近藤様が社長就任してから顧客数は純増し続け、売上もV字回復を果たしたのです。2024年6月には「価格.com」の人気ランキングで1位を獲得するなど、大手と比較しても遜色のない実績を上げています。

事業成長を続ける同社でしたが、近藤様と共に事業を牽引してきた前オーナーの事業承継においては、明確な道筋が定まっていませんでした。
「前オーナーは年齢のこともあり、2020年頃からM&Aを検討していたようです。私も会社がさらに成長するにはM&Aがよいのではないかと考えていました。」
M&A仲介会社に依頼をし、買い手企業の選定を進めた前オーナーが特に重視したのは、「従業員とブランド、そしてお客様を守る」ということ。単なる目先の利益だけを追求するのではなく、会社を育てるために一緒に事業を伸ばしていける会社という点を条件としたのです。
「仲介会社からは、複数の買い手候補先企業の情報が集まりました。EC関連の上場企業や大手ガス・電力会社など、Webに特化した企業や同じストックビジネスを展開する企業などと面談を行いました。
私たちとしては、あくまで事業の継続的な発展と、顧客や従業員を守ることを優先してお相手を選定しました。」

写真)左:オーケンウォーター取締役社長 近藤様、右:大洋ガステック専務取締役 井上様
さまざまな企業から交渉が入る中で、福岡に拠点を置く大洋ガステックも名乗りを上げます。オーケンウォーターとしても、ガスと水という生活インフラを取り扱う共通点、なによりも「お客様の安心・安全を守る」という根幹の理念が一致しており、最終的に同社との契約を進めました。当時の心境について、近藤様は次のように語ります。
「面談の際、大洋ガステックの井上専務から『ともに長く成長していきたい』という強い想いと『M&A後も従業員の皆さんをしっかり守っていきたい』という誠実な意思を確認することができました。井上専務と私の年齢も近く、お互いに会社を盛り上げていけそうと感じた点も大きかったです。」
初めてのM&Aに取り組まれた近藤様は、その過程においてさまざまな苦労もあったと話します。特にデューデリジェンスのための資料作成は「1人で資料を揃えるが大変で…」と漏らし、仲介会社のサポートが大きな手助けとなったと振り返ります。
現在の体制は、前オーナーがご勇退され、譲受企業である大洋ガステックの専務取締役を務める井上篤様が、新たにオーケンウォーターの代表取締役に就任。一方、近藤様は引き続きオーケンウォーターの取締役社長として、現場の責任者という立場で事業を牽引されます。
「M&Aの目的を、従業員に対して『会社を盛り上げていくためのM&A』であったと説明しました。その際、反発の声は一切なく、逆に『1人でよく頑張った』という温かい声をもらえたことが嬉しかったですね。
また、井上専務も頻繁に現場へ足を運び、共に汗を流し、積極的にコミュニケーションを取ってくれています。そのため、従業員も安心して働ける環境が生まれています。お互いに言いたいことは言える関係性も築けています。」
オーケンウォーター様のこれからのご発展を、バトンズ一同、心より応援しております。
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