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楽天事業承継アシストを通じて新たな挑戦。「時計ベルト販売のEC事業」に参入した背景と展望

2025年08月13日

都内で水産系商社の会社員として働く傍ら、「妻が満足して働ける職場を作りたい」という想いを持ち続けていた斉木克仁様。ECサイトで時計ベルト等の販売を手掛けている「株式会社TMプラネット」から、EC事業を譲り受け、新たな事業をスタートさせました。EC事業は未経験だという斉木様は、なぜこの分野に挑もうと思ったのか。地元や事業への想いについて、お話を伺いました。


 

譲渡企業
社名 株式会社TMプラネット
業種 時計ベルトの製造・販売事業
拠点 岩手県
譲渡理由 後継者不在

 


 

譲受企業
社名 合同会社アシーク
業種 作業着等の加工・卸売業
拠点 東京都、青森県
譲受理由 独立・起業

 


EC事業のM&Aと八戸の事業の引継ぎを決断

奥様である斉木美樹様が「彼女らしく働ける環境」を用意したいと感じていた斉木様は、ひとつの選択肢としてM&Aによる事業承継を模索。「地理的な制約が少なく、既に一定の実績があってリスクの少ない事業」という条件で探していくうちに、株式会社TMプラネットが運営するEC店舗「腕時計とバンドのアビーロード」に出会います。

この店舗は楽天市場で20年以上運営され、月間優良ショップ賞を数多く受賞した実績を持つ店舗でしたが、後継者不在により譲渡先を探している状況でした。斉木様は、アビーロードを選んだ理由を以下のように話してくれました。

「時計のベルト販売という分野であれば、新規参入も多くはないだろうし、競争相手も少ないはず。であれば、爆発的な伸びは期待できなくても、安定した売上は見込めるだろうと思ったのです。また、EC事業なので地理的制約もない。もともとニッチな事業を狙っていたので、これなら妻でも無理なく、長く安定して取り組めると思ったのが大きいですね。」

一方で、アシーク設立に至るまでには、もう一つ大きな要因がありました。それは、斉木様のご実家で営まれていた繊維卸事業の存在です。60年近く続く老舗の卸問屋で、最盛期には青森県内に3店舗と3事業所を構えるほどでした。そんな由緒ある事業も諸事情により廃業止むなしと思っていた矢先、一部の従業員から「まだ働きたい」という声が上がり、斉木様はこの声を無視することができなかったと言います。

「これからますます高齢化社会が進んでいく中で、自分がシニアの働き場所を作らなければと思ったのです。シニアの方がまったく新しい仕事に挑戦するのは大変なはずなので、これまでの経験を活かせる仕事を用意してあげるべきだと。特に北東北の三県(青森・秋田・岩手)は高齢者の割合が多く、この問題に向き合う必要性を強く感じました。」

こうした想いから、従業員を迎え入れる形で会社設立と同時に八戸営業所を開設。結果として、東京&八戸の二拠点体制でアシークをスタートさせる形となりました。なお、アシークとしてはあくまでも譲り受けたEC事業がメインで、八戸の事業は譲り受けた従業員の方々が主体となって運営しているそうです。

想いがつないだ楽天事業承継アシスト初の成約事例

本件は、楽天グループが運営する「楽天事業承継アシスト」における成約案件でもあり、約1年8カ月に渡る交渉の末に実現したM&Aでした。

「当初掲載されていた譲渡金額が想定より高く、一度は候補から外していました。それでも、アビーロードの魅力が忘れられなかったため、条件が変わったタイミングで『予算はまだオーバーしているが、内容次第ではなんとかなるかもしれない』と思い、交渉を申し込みました。」

斉木様はバトンズを通じて正式に商談を申し込み、交渉を開始。その後、TMプラネットの拠点である盛岡まで足を運び、代表の田口様と直接対話を行いました。

「盛岡は実家へ帰省する際に立ち寄りやすい場所だったため、直接お店を訪問したいという想いが湧き、『事業を営む現場を見せてほしい』と田口様にお願いしました。」

この訪問で、初対面ながら東北出身同士ということで意気投合し、距離以上の親しみやすさが生まれたと言います。そうした信頼の積み重ねが実を結び、再提示されていた金額よりもさらに譲歩いただいた金額で合意に至りました。

そして成約直前、田口様から一通の手紙が斉木様に届けられます。そこには「自分が起こした事業をきちんと将来につなげていってほしい」というメッセージが綴られていました。単なる金銭的なやり取りではなく、「この事業を未来につなげてほしい」という想いが込められたその手紙は、斉木様にとって深く心に残るものでした。

加えて、譲渡後1年間は田口様が顧問として伴走することも決定。事業への愛着と信頼が、形としても引き継がれることになりました。

譲れなかった想いと自己資金で踏み出した一歩

無事にM&Aの成約が決まったものの、一筋縄では行かなかったのが資金繰り。当然、金融機関からの借入を検討しましたが、その交渉は難航を極めました。

「真っ先に日本政策金融公庫に相談しましたが、結果は否決。実績のあるEC事業とはいえ、譲受側がEC未経験の人間であることは、金融機関から見ると大きなリスク要因だったのかもしれません。また、借入の目的が買収資金メインであったことも、審査のハードルを高めた要因だったと思います。」

しかし、斉木様は「これだけの歴史と信頼を持つECサイトには、絶対に投資する価値がある」と信じていたので、最終的にご自身の保有資産を売却することで資金を確保。念願だったM&Aを実現させました。

近年では数多くのECサイトが乱立し、信頼性が疑問視される中で、20年以上続いてきたこと自体が信頼の証。斉木様は、アビーロードの歴史に価値を見出していたこと、そして「自分が生まれた東北で誰かの力になりたい」という想いを重ね合わせながら、大きな決断をするに至ったのです。

アシークとして、個人として、今後の展望

今後、アシークとしては、アビーロードの信頼と歴史を大切にしながら、EC市場での成長を軸に、新たな展開を模索していくとのこと。具体的には、ECと実店舗のシナジーや、同様の商品カテゴリにおける新たな展開など、多方面からの成長戦略を検討しているそうです。また、全く異なる業種であっても、事業として成立する見込みがあれば積極的にM&Aを活用し、新しい領域に挑戦したいともおっしゃっておられました。

一方で、八戸の事業については、斉木様自身が作業着やタオルといった商材に対する専門的な知見が不足していることや、東北エリアにおける問屋業界の合従連衡の動きを鑑み、ゆくゆくの事業譲渡も選択肢の一つとして検討しているとのこと。「より強固な基盤を持つ企業のもとで事業を継続・発展させる方が、地域にとっても良い形になる可能性が高い」というのが、現時点での考えだそうです。

また、斉木様は中小企業診断士の資格を所有しており、特に北東北三県における高齢経営者の事業承継支援に強い関心を寄せています。将来的には、行政書士や社会保険労務士等の専門家が事業主体である事業のM&Aも視野に入れており、専門家としてM&A支援の事業を展開していくことも構想しています。

斉木様と合同会社アシークの今後のさらなるご活躍を、バトンズ一同、心より応援しております!

【成約をサポートしたバトンズ 中武昂陛のコメント】
今回の事業譲渡をサポートさせていただきました。買い手様はご夫婦で事業承継に臨んでおり、人柄のよさと引継ぎに対する強い意気込みが印象的でした。

 

M&Aのプロセスにおいては、販売の多くを占める「楽天市場」の店舗アカウントの移行審査が通るかどうかが重要な論点でした。楽天のご担当者様がアカウントの移行審査を事前に進めていただけたことは、本案件をスムーズに成約まで進める上で大きなポイントだったのではないかと感じています。

 

売り手様・買い手様双方の良好な人間関係のもと進んでいった事業承継型のM&Aとして、私自身とても心に残るご成約となりました。このご成約に携わることができたことを、大変嬉しく思います。

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