
岡山県を拠点に清掃業・警備業・廃棄物処理業等のグループ会社を統括する「SANYO HD株式会社」は2025年2月、千葉県で廃棄物処理業を手掛ける「京葉産業有限会社」を譲り受けました。SANYO HDの代表を務める小林寛嗣様は、これまでに約20社のM&Aを手掛けており、経営の多角化と事業成長を続けています。今回、交渉からわずか2ヶ月で成約に至った背景には、どのような思いや戦略があったのか。SANYO HDの今後の事業展望とともに、小林様にお話を伺いしました。
譲渡企業 | |
---|---|
社名 | 京葉産業有限会社 |
業種 | 廃棄物処理業 |
拠点 | 千葉県 |
譲渡理由 | 後継者不在 |
譲受企業 | |
---|---|
社名 | SANYO HD株式会社 |
業種 | 清掃業・警備業・廃棄物処理業 |
拠点 | 岡山県 |
譲受理由 | 事業拡大、新規エリアへの進出 |
清掃業から警備業、廃棄物処理業へと事業を拡大
SANYO HDの原点は、約50年前に小林様のお父様が設立した「サンヨービルマネージメント(当時:サンヨー美装有限会社)」にあります。清掃業と不動産賃貸業の二本柱でスタートした同社は、地域密着型のビルメンテナンス事業として基盤を築いてきました。
SANYO HDの現代表である小林様は、もともとは大学で環境分野を専攻。卒業後はダスキンに約3年間勤務し、そこで学んだ経験を活かして2008年に取締役として「三洋環境株式会社」に入社しました。
「三洋環境は、SANYO HDのグループ企業のひとつで、私の父が創業した企業です。当時の主力事業は清掃業でしたが、業界全体の価格競争が激しく、従業員の給与や待遇改善が困難であると感じたため、事業の多角化を模索しました。
我々の業界の競合他社は、警備や廃棄物処理に事業を展開している企業も多くあります。そこに着目し、我々もそれらの事業に参入しつつ、ゆくゆくは総合ビルメンテナンス企業に発展させたいと考えました。」
警備業は比較的スムーズに立ち上がったものの、廃棄物処理業については「一般廃棄物の収集運搬業」の許認可のハードルが高く、事業の立ち上げは困難を極めました。そこで、小林様のお父様のネットワークを活用し、協力会社から廃棄物事業を譲渡してもらう形で新規事業参入。警備業・廃棄物事業という新たな事業の柱を確立することに成功したのです。
「父も『会社を大きくしていきたい』と常々思っていたようで、事業拡大に向けて私がやりたいと提案したことを好きなようにやらせてくれたことは、非常にありがたかったですね。代表に就任する前から様々なM&Aを実現できたからこそ、思い描いた通りの成長ができたと思っています。」
清掃・警備・廃棄物処理という3つの柱を軸に、その後も事業を拡大。現在はホールディングス化を行い、新たな企業との連携や事業承継の受け皿としての役割も果たしながら、全国規模の企業へ発展し続けています。
廃棄物処理のエリア拡大を目指して、千葉県の企業をM&A
今回のM&Aの決め手となったのは、京葉産業が「千葉市における一般廃棄物の収集運搬に関する許認可を持っていること」だったと振り返る小林様。SANYO HDもすでに岡山県や東京23区エリアにおいて許認可を取得していたものの、さらに発展していくためには、その他の都市における許認可取得が不可欠だと考えていました。
「一般廃棄物の収集運搬における許認可は、特に都市部では取得が困難であり、希少性の高い既得権益です。その点、京葉産業は千葉市での許認可を持っていたので、これはぜひ手に入れたいと。東京23区と千葉県をカバーできるようになれば、首都圏での事業展開を軌道に乗せられると考えました。」
また、今回のM&Aは競合が多いと判断された小林様は、スピード感を重視。京葉産業の案件情報が2024年12月下旬に開示され、翌年2月末に譲渡契約を締結。約2カ月という短期間で譲渡が成立したのです。
「この案件は競合が多いことが容易に想像できたため、早期に意思表示をして行動することが重要だと考えました。その結果、交渉もトントン拍子で進み、早い段階で譲渡候補先として絞り込んでいただけたようです。また、弊社グループの関連領域だったため、企業調査等も比較的スムーズに行えました。」
M&Aの成約後、京葉産業の従業員ドライバー2名のち1名が退職予定だったため一抹の不安を覚えていた小林様ですが、前社長が「自分がしばらくは現場を回る」と申し出てくださり、安心されたとのこと。今後は早急に後任を探すことになりますが、決定次第、前社長にはご希望通りご勇退いただく予定だそうです。
自分の意思で案件を探せるのがバトンズの魅力
これまで約20社のM&Aを手がけられてきたという小林様。当初はお父様の知り合いや、事業承継・引継ぎ支援センターの紹介先がメインだったそうですが、M&Aプラットフォームであるバトンズの存在を知り、3〜4年ほど前から利用するようになったとのこと。
「バトンズは、自分の意思で案件を探せるところが非常に魅力的ですね。使い始めの頃からとてもいいイメージを持っているので、知人の経営者でM&Aに関心のある方にはおすすめしています。
一方で利用者が多いので、魅力的な案件があっても、気づいた時には既に進展していてチャンスを逃してしまうケースも少なくありません。これはM&Aプラットフォーム全般に言えることですが、タイミングの難しさは感じています。」
また、今回のM&Aは「株式会社maXアドバイザリー」が仲介としてサポート。その対応についても、非常に満足していると小林様は振り返ります。
「弊社は大手企業ではないため、M&Aを進める際に経験豊富なM&Aアドバイザーの方の意見は大変貴重です。今回スムーズに交渉を進められたのは、アドバイザーの方の迅速な対応があったからこそ。M&Aの交渉にも慣れている方で、税金や退職金の相談などにも即レスポンスいただけたので、とてもありがたかったですね。」
グローバルに羽ばたくSANYO HDを目指して
既に全国展開を果たしているSANYO HDですが、「今後もM&Aを活用しながら、高松市や姫路市などの近隣エリアを中心に支店を増やしていきたい」と話します。また、グループ会社として加わった企業の組織再編にも積極的で、従業員や顧客に対して理解と納得を得た上で、吸収・合併などの改革も進めていく方針だと話します。
「今後のM&Aの方針は、基本的に同業種や関連業種を中心に考えていますが、時代の変化に伴い柔軟に対応していくつもりです。弊社がここまで成長できたのは、20年前に清掃業一本で経営していくことに固執しなかったことが大きな要因だと思っていますので。
現在、ビルメンテナンス業はM&A市場でも注目されていますが、価格競争が激しく撤退する企業も少なくありません。もし業種に過度なこだわりを持っていたら、弊社も価格競争に巻き込まれて厳しい経営を余儀なくされていたことでしょう。既存のものを大事にしつつ、チャレンジすることも恐れない。そのバランスが大事かなと思っています。」
また、SANYO HDが英語表記になっていることからも示されている通り、SANYO HDは海外人材の受け入れによる「社内のグローバル化」が進んでおり、また今後はグローバル企業として海外進出をしていくことも目指していくと小林様は話します。
「表記を“SANYO HD”とした理由は、弊社に外国人労働者の雇用が増えていることにあります。社内がグローバル化しているので、社名を含め、あらゆるものを英語表記にしていく必要があると考えました。
なお、海外展開を意識した改名は、実はずっと以前に行なっています。そもそも、山陽地方という地域性から父が『山陽』と名付けましたが、私が太平洋・大西洋・インド洋という“三つの洋”にちなんだ『三洋』に変更しました。グローバルに羽ばたく企業を目指すなら、三洋こそがふさわしいと思ったのです。」
その時に込めた想いを実現するためにも、海外展開も見据えて今後も事業拡大を目指していくSANYO HD。今後のさらなるご発展を、バトンズ一同、心より応援しております!
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