宮城県仙台市で調剤薬局を運営する「合同会社KYS」は、同じく仙台市で調剤薬局を営む「有限会社ケーエスアイ」を譲り受けました。KYSの代表である石井健太郎様は「仙台市内及び近郊で地域密着型の調剤薬局を展開したい」という想いから、積極的にM&Aを検討。条件に合致したケーエスアイとのM&Aが成立しました。独立時にもM&Aによる起業をされている石井様に、M&Aに至る経緯や交渉の過程、今後の展望などについて伺いました。
譲渡企業 | |
---|---|
社名 | 有限会社ケーエスアイ |
業種 | 調剤薬局 |
拠点 | 宮城県 |
譲渡理由 | 後継者不在 |
譲受企業 | |
---|---|
社名 | 合同会社K Y S |
業種 | 調剤薬局 |
拠点 | 宮城県 |
譲受理由 | 事業拡大 |
製薬会社のMRから薬剤師、そして調剤薬局の経営者へ
大学卒業後、製薬会社に就職して社会人のキャリアをスタートした石井様。MRとして約5年の経験を積んだ後に、千葉県から地元の仙台に戻り、調剤薬局で薬剤師として第2のキャリアを歩み始めました。
約10年勤め上げた後、調剤薬局を譲り受けて独立。同時に合同会社KYSを設立します。製薬会社のMRから調剤薬局の経営者に転身しようと思った経緯について、石井様は次のように語っています。
「製薬会社に就職した当初から、会社員として長く勤めるキャリアを描いていたわけではなく、いずれは独立したいと考えていました。ただ、調剤薬局でいろいろな経験を積んだり、業界をもっと研究してからの方がいいだろうと思い、製薬会社や薬剤師の現場で長らく働いてきました。
薬局で働き始めた時点では、独立に向けて具体的な計画があったわけではありませんでしたが、ご縁があれば独立したいとは常々思っていました。そのため、開業のための自己資金を少しずつ貯めていたほか、地元仙台の銀行で働く同級生にも相談しながら、融資を受けられる準備も進めていました。そして、2年前に知り合いの方からM&Aの話をいただき、独立開業したという経緯になります。」
MRから薬剤師へ、そしてご縁により2年ほど前に経営者として第3のキャリアをスタートした石井様。その後も調剤薬局の事業拡大に向け、さらなるM&Aを考えていたといいます。様々なM&A仲介業者から話はもらうものの、なかなかしっくりくる相手先が見つからない中、バトンズを通じておおまち調剤薬局(有限会社ケーエスアイ)が譲渡先を探していることを知り、交渉依頼を打診します。
「おおまち調剤薬局は私の自宅から徒歩圏内にあり、以前からお世話になっていて雰囲気もよく知っていました。また、創業30年の安定した薬局で、多くの患者さんが定着していることを肌感で分かっていました。現在経営している薬局からも近いため、ドミナント戦略の観点からも効果的だと考え、M&Aを決断しました。」
財務デューデリジェンスは専門家のサポートが大きかった
お互いに知っている間柄だったこともあり、ケーエスアイとの交渉はスムーズに進捗。初回面談から1ヶ月以内に独占交渉を開始、その後決済まで3ヶ月というスピード感は、身近な関係性でなければ難しかったと石井様は話します。また、交渉がスムーズに進んだ要因として「仲介者の存在も大きかった」と石井様は振り返っています。
「今回のM&Aでは、仲介者として税理士の福田哲也先生に入っていただいたのですが、財務デューデリジェンスを真摯にサポートいただいたのは本当に助かりました。私自身、ケーエスアイの財務状況は事前にある程度は調べていて、特に問題ないと思っていたのですが、融資を受ける金融機関から『財務デューデリジェンスは必須です』という条件を提示されたので、短期間で対応する必要が出てきたのです。
その際に、当社の顧問である会計士と、ケーエスアイ代表のオーナーさんや税理士の方、そして福田先生の迅速な対応により、銀行を納得させる資料を提出することができました。皆様のプロフェッショナルな仕事ぶりには感謝しかありません。」
石井様にとっては、M&Aの相手先として願ってもない条件が揃っていたケーエスアイ。逆に「石井様が選ばれた理由」について分析いただいたところ、次のように回答いただきました。
「恐らく、一番大きな要因は企業風土ではないかと思います。前オーナーさんが『企業の規模や社風が似ている』とおっしゃっていたので。譲渡先が大手企業だった場合、あらゆる物事をビジネスライクに、強引に推し進めてしまう可能性が否めない。それだと、在籍しているスタッフが戸惑うのではないかと心配されていました。
その点、私は同じような規模の調剤薬局を運営しているという実績もあったので、『今の風土を乱さず、従業員が安心して働ける環境を引き継いでくれるだろう』と考えたと伺いました。私も、『従業員の方が安心して勤められること』は最も配慮すべき点だと考えていたので、前オーナーさんの想いは違和感なく受け入れることができました。」
自分を信じてM&Aプラットフォームを活用したことで、良いお相手に巡り会えた
今回が、独立時を含め2度目のM&Aとなった石井様。最初のM&Aは、知り合いの方からの紹介を通じて進めたM&Aだったといいます。
M&Aで起業された当初から、その後もM&Aによる事業拡大を考えていたという石井様。次のM&Aを見据えて、バトンズを含めた複数のM&Aサイトに登録していました。石井様自身はM&Aに対して前向きな姿勢ですが、周囲からは心配する声もあったといいます。
「正直なところ、東北ではまだバトンズのようなM&Aプラットフォームはあまり一般的ではないと思います。ですので、サイトを通じてM&Aをすることに関して心配されることもありました。ですが、私はバトンズが最もメジャーなM&Aサイトだと思っていたので、毎日チェックしていればきっといい相手が見つかると信じていました。
現在、薬局のM&Aは非常に活発になっており、M&A仲介業者も乱立しています。その結果、仲介手数料の高騰化や案件獲得競争の激化によって、仲介業者によってはなかなか良い条件が見つからないという問題もあります。その現状を踏まえれば、バトンズを利用して広く検討できたことは良かったと思います。」
地域密着型の調剤薬局チェーンとして発展させたい
ケーエスアイからの譲渡契約もまとまり、石井様は現在「おおまち調剤薬局」含め二店舗のオーナーとなっています。今後、それぞれの店舗の運営をどのように考えているのかについても伺いました。
「二店舗間で人員・在庫・情報などの資産を共有して、シナジー効果が生まれるような環境を作っていきたいですね。また、おおまち調剤薬局の前オーナーさんには、年内は時々でも現場に顔を出していただいて、私との二人体制でシームレスに対応していければと思っています。それで特に問題なさそうだとなれば、来年からは私が完全に引き継ぐという想定です。」
二店舗間の資産共有により、より良い事業体制を構想している石井様。最後に、その先に描いている将来的な展望について語っていただきました。
「今から約30年前に医薬分業が始まり、その頃に独立・開業された先輩方がリタイアするタイミングがここ数年に集中しているため、業界全体の動きが活発な時期が続いていると推測しています。このチャンスを活かして、ご縁があればさらなるM&Aで店舗を増やしていきたいという想いはあります。
ただ、M&Aをするといっても、闇雲に店舗を増やしたいという訳ではありません。まずは地域で一番の調剤薬局チェーンとなって、そこで皆さんから支持を得られるようになれば県内全域へ、という青写真を描いています。」
合同会社K Y Sの今後のさらなるご活躍を、バトンズ一同、心より応援しております!
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