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女性が家業を継ぐ時代!跡取り娘が経営を学ぶ

2019年01月24日

「息子がいないから跡継ぎがいない」
何年か前まではこれが当たり前の世の中でした。実際、帝国データバンクの調査によれば、日本の女性社長の比率はたったの7.8%です。

しかし近年、娘が会社を継ぐということが徐々に増えてきています。そして、そんな“跡取り娘”たちがいま集まってきている場所があります。昭和女子大学のダイバーシティ推進機構が開く「“跡取り娘”人材育成コース」です。月に一度、女性経営者ら経済界で活躍している人物を講師に招き話を聞くほか、企業訪問等のアクティブラーニングをし、半年後の最終回で受講者全員が研究発表を行うというこのコース。

“跡取り娘”は、後継者不在問題を解決するための手段として、主流になっていくのでしょうか。

 

 

家業を継ぐ跡取り娘たちが集い、共感しあえる場所に

「実家の運輸業を継ぐ予定で、経営について勉強するために来ました」と話すAさん。もともとは美容業界で働いていたそうで、運輸業というと男社会で大変そうな印象を受けますが、「妹が一緒に継いでくれるということが決め手になった。ひとりだったら正直継がなかったと思う」と笑って話します。5年かけて事業承継の準備をしている最中だそうで、「会社での男性社員とのコミュニケーションの仕方を学びたいと思っています」と参加のきっかけを語ってくれました。
実家がネジ屋さんを営むBさんは、なんと小さな娘さん2人の子育て中。いずれ3代目として会社を継ぐ予定だそうです。「最初は継ぐつもりはありませんでした。しかし、父から『どうする?』と聞かれた時、気づいたら『継ぎます』と答えていました」。
このプログラムは、業種も年齢もバラバラで、しかも全国から集まってきています。だからこそBさんは、「女性経営者はまだまだ少ないので、こういう横のネットワークができるのはありがたい」と話します。
本プログラムの全体監修を務める昭和女子大学キャリアカレッジ学院長の熊平美香氏は、「家業を継ぐ娘さんたちが増えています。しかし、さまざまなバックグラウンドを持った彼女たちが悩みを共有し、解決できるきっかけになるような場所はほとんどない。もっと気軽に女性経営者が集い、共感し学べるコミュニティーが必要だと考えました」と開講のきっかけを話します。

昭和女子大学 キャリアカレッジ学院長 熊平美香氏

経営者として「決断力」「リスクテイク能力」「統率力」を学び、家業を継いでいくための素養を身につけられる“跡取り娘”人材育成コースは、実際に受講生たちにとって、貴重な場になっています。

 

 

各界の第一人者を招いた講義  – 中小企業で使えるAIとは?

プログラムの目玉ともいえる講義は、毎回、様々な分野の一線で活躍する講師を招き、経営者が心得ておくべきテーマについて学びます。
12月に開かれた第3回の第一部では、ソニー株式会社 R&Dセンター要素技術開発部門 AIコア技術開発部の小林由幸氏が、Deep Learningのもたらす産業の変革や、AIを応用することで実現できる中小企業経営の効率化と発展の可能性について講義
「職人がいなくなってしまう前に、これまで属人的だったノウハウや技術をAIに学習させることで、跡継ぎ問題の解決にもつながる。今後は、データとして技術を継承できない会社は淘汰されていく」と話す小林氏に対して、受講生からは「この業界だったらどうAIを活用できるか」「自分たちのような中小企業でも、ディープラーニングのためのデータを蓄積することはできるのか」「年配の社員にAIについて理解してもらうには」といった質問が、次々に飛び出します。
ソニー株式会社 R&Dセンター 要素技術開発部門 AIコア技術開発部 小林由幸氏

そして第二部は、メディア出演や著書のドラマ化で一躍有名になったダイヤ精機株式会社の代表取締役社長、諏訪貴子氏によるロールモデルセッション。
ダイヤ精機株式会社 代表取締役社長 諏訪貴子氏

諏訪社長は創業者である父親が亡くなったことを機に、2004年にダイヤ精機を引き継ぎました。予期せぬタイミングでの社長交代を受けて、当時は会社が危機的状況になったそうです。当初は職人気質の社員に自身の話を聞いてもらうだけでも苦労したそうですが、会社組織を強固なものにすべく、社員のマインドチェンジを図る3年の改革を断行。その改革とその後の会社の成長について語り、同じ女性経営者の立場からアドバイスを送りました。
講義後の質疑応答では、「経営の相談は社員にするのか」「どうしたら中小でも人材採用ができるか」など、積極的に質問が飛び出していました。

 

 

 

「今まで自由に生活できたのも父の会社のおかげ。自分の代で潰したくなかった」

今回の講義の参加者の1人である30代のCさんは、おせんべい屋さんの3代目として最近家業を継ぎました。実家の父親からは「継いでも継がなくてもいい」と言われていた中で、なぜ継ぐことにしたのでしょうか。
「今まで自由に好きなことをして生活できたのも父の会社のおかげだと気づきました。自分を育ててくれたこの会社を潰したくなくて、跡継ぎになることを決めました」。
「父の会社を残したい」と思ったとしても、実際に行動に移すのは容易ではありません。まして20代の若さで、周囲に同じような境遇の人はほとんどいなかったはず。Cさんは悩みに悩み抜いて決断を下したのではないでしょうか。
“跡取り”という枕詞には、”息子”をついついイメージしてしまいますが、全国の“跡取り娘”たちは確実に増えています。結婚・出産・子育てと、第一線でバリバリ働く年齢の間にいくつものライフイベントをこなす女性たち。「経営者」を選ぶのも、働き方に自由を求める時代の流れなのかもしれません。
昭和女子大学の熊平学院長によれば、好評につき今後もこの講義を開催していく予定とのことです。気になる方は、昭和女子大学のWebサイトをチェックしてみてください。

昭和女子大学 キャリアカレッ

https://career-college.swu.ac.jp/

本記事はMA Channel―ちょっとためになるコラム―より転載されたものです。

 

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