▼ ネットマッチングの本当の使い所、教えます!
さて、のっけからなんですが、こう見ても私、以前はM&Aの世界ではちょっとした有名人でした。いや、残念ながら凄い実績とか実力がある、とかそういうのでは全然なくて、単に業歴が長いのでどっかで名前を聞いたことがある、というだけなんですけど、それでもこの道一筋28年。
俗にそば打ち3年、こね8年とか桃栗3年、柿8年、柚子は大馬鹿18年などと言いますので、年月だけならそれこそ日本トップクラスのベテランな訳です。
さて、そんな私が最近よく聞かれるのが、
ということです。
世の中亀の甲より年の功ということで、今日は、誰しもが疑問に思うであろう、その問いにお答えしようと思います。
▼ マッチング、相手探しと簡単にいうけれど・・
ところでみなさんは、私達のようなM&Aの専門家がどうやって相手を見つけるか知っていますか?もちろん本当の現場のことをご存知の方は滅多にないとは思いますが、これがなかなか大変な作業です。
まず最初に私達は譲渡企業のあらゆる情報に(本当にあらゆる、です)目を通し、正確な財務内容や収益性を把握することから始めます。そして、次に財務データを更に精査し、ディールの基準となるべき適正な企業価値を算定するわけです。
まあ、それでもここまでならある意味単純作業なのですが、この次がアドバイザーの実力が分かれるところで、ビジネスインタビューを元に、ヒアリングを繰り返し、製品やサービスの内容、ビジネスモデルや技術力、販売力、社員の構成や将来性、さらに業界内における位置付けやポテンシャリティなどを分析し、本質的な企業の実態を掴んでいくのです。
正直これだけでも2−3週間は余裕で作業にかかるのですが、そのデータをベースに、もっとも一緒になった時の”相乗効果(シナジー効果とも言います)”の高い会社を概ね50社〜100社程度ピックアップし、更にそこから上位10社程度に絞ってアポイントを取り、1社1社個別に提案書を作って、最適な提案をしていく、というステップを繰り返すのですね。
この方法は、とても手間がかかるのですが、何せその道のプロが、凄い時間を使って全国からもっとも優れた会社を選ぶだけに、うまくハマると本当に素晴らしいスーパーマッチングが生まれることになります。
このマッチングの腕、というのが、要はM&A業界における専門家の腕、という訳なのですね。
しかし、この方法には大きな弱点があります。
例えば地方の商店とか小さな工場など、他社との”相乗効果”が小さい、あるいは皆無な場合は、そもそもマッチングが難しい、あるいはほとんど不可能だということです。
一般的には相乗効果は、名前の通り企業規模に正比例して乗数効果を生むため、企業規模も小さければ、マーケットも小さい地方企業は、最初からターゲットにならないということが起こるのです。
だから、M&Aのプロであればあるほど、売り手だろうが買い手だろうが、地方の小規模企業のお話はそもそも仕事として拒絶される、という事態がまま起こるのですね。(もしかしたらそういう経験をしたことのある方もいらっしゃるかもしれません)
私の経験では、業種にもよりますが、売上1〜2億円の間に、この”相乗効果で相手を想定できなくなるライン”が存在するように思います。
しかし、安心してください。論理的相手を推定することができないということは、決して相手がいないということを意味しているわけではないのです。
例えば、それが荻窪の繁盛しているラーメン屋の1店舗の譲渡案件だったとしたら、確かにラーメン屋1店舗という業態自体には、何らの相乗効果も想定できないかもしれませんが、ラーメンが好きだから、独立して自分がやってみたい、という人はいるに違いないのです。
要は、従来のプロによるマッチングが、一番苦手だったのが、こういう相手先を探すことだったのですね。
▼バトンズの成約の64%が年商1億円以下
そこで近年急速に注目を集めるようになったのが、「インターネットマッチング」です。
つまり、専門家が具体的な社名を想定できないのなら、ネットの力を使って、全国から公募したらいいじゃないか、という訳です。
実際バトンズの成約事例を見てみると、何と64%が売上1億円以下の所謂零細企業です。
しかもそのうちの35%が赤字で、55%は債務超過の会社なのです。
もし、M&Aのプロの方がこの日記を読んでいたら、到底信じられない、と頭を振るはずです。
実はそれくらいプロにとっては、今まで難しかった領域なのですね。
ここまで読んで、そんなに凄いのなら、一層のことプロの手は借りないで、全部ネットマッチングでもいいんじゃないの?
そういう感想を抱いた方もいるかもしれません。
バトンズの運営人としては、実際にそうであると大変嬉しいのですが、プロとしての良心から本当のことを言ってしまうと、残念ながらそうではないのです。
▼ ネットでは専門分野のマッチングは不可能 秘密保持、リスク管理にも限界
例えば、今度は半導体のa-Si成膜や不動態膜成膜製造用のロードロック型プラズマCVD装置を製造している企業があったとしましょう。
え、何を言っているかわからないって?
ええ、私も実はわからないので安心して欲しいのですが、例えばこの何を作っているのかよくわからない会社がネット上で相手を探したとして、本当に相手が見つかるものでしょうか?
おそらく、というか間違いなく相手を見つけることは困難でしょう。
つまりネットで相手を見つけやすい会社というのは、基本的に誰でも内容が想像でき、広く相手を募ることのできる会社であって、専門的で狭い分野の会社は、業界や技術に精通したプロが個別に当たっていかないと、到底相手を探すことができないということなのです。
そればかりではありません。
実際には、ある一定以上の規模になると、秘密保持が重要になり広く情報を公開することが難しくなる上に、M&Aにかかる様々なリスクが無視できなくなり、それなりの専門家に依頼し、クローズドな環境でないと安心して取引をすることが困難になるという側面もあるのです(これについてはいずれお話をしましょう)。
何れにせよ、バトンズのようなネットマッチングが最大の威力を発揮するのは、年商2億円以下くらいの規模で、比較的業態がわかりやすく、広く相手を募ることができる会社 だということができます。
M&Aを考えるときは、このように対象によってネットマッチングと専門家による探索を上手く使い分けることが、成功の秘訣なのですね。
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