▼近年、話題に上るのが地方農業の後継者不足です。都心部と違い、地方農家は土地も広く、65歳以上の高齢者が多くを占めています。また、農業に新規参入するというのはスキル的に敷居が高いと、二の足を踏んでいる人も少なくありません。その中で注目されているのが「アグリテック」です。ITやIoTを取り入れた農業用ロボットを活用して、だれでも高品質と大量生産が担える無人農機具の導入のことです。今回は日本の地方農業の現実と将来性を、アグリテックを交えて解説していきます。
ビニールハウスの環境を制御するシステムから、無人で収穫できるロボットなど、アグリテックは年々新技術が出てきています。
新規参入が増えつつある農業
少子高齢化が進む日本にとって、地方農業の後継者不足は深刻を究めています。第二次安倍内閣による「アベノミクス」では、第三の矢である成長戦略において、農業は新たな市場の創出として期待されていました。
しかし、農林水産省のデータによると、農業就業人口(注1)は平成22年の約260万人に比べ、平成30年には約175万人と大きく減少しており、人手不足に悩む農家は増加しています。
一方で、新規就農者(注2)をみると、平成25年の約5万8百人に比べて平成29年には約5万5千人と増え、44歳以下も1万6千人から2千人ほど増えています。女性の新規就農者も微増していることから、地方都市によってばらつきがあるとはいえ、農業に少しは興味を持っている若い世代が増えていることは確かなので、一定の政策効果があったという見方もできます。
この中でも人手不足の農家という視点では、就農者あたりの農地面積が増えていることを指しており、収益をプラスに転換できる下地があるといえます。足りない人手をどうやって補うのか。この問題に大きな改革となるのがITやロボット技術を活用した「アグリテック」です。
アグリテックの普及に人気ドラマが追い風
IoT(モノのインターネット)を駆使し、敷居が高いといわれる農作業をだれでも簡単にプロの技として究めることが可能となります。しかし、元々資金力に乏しい地方農家にとって、新しい農業用機械の導入は死活問題といえます。
この問題を解消するには実用化に向けて農業用ロボットを大量生産するために、大手メーカーの参入や市場の活性化が必要となります。これに追い風となっているのが人気ドラマ「下町ロケット」です。原作は2018年現在でシリーズ4部作からなる小説であり、第4弾シリーズのヤタガラス編をドラマ化しているのが、2018年10月から始まったテレビシリーズです。ここでは、まさに高齢者が7割を占める日本の農業改革をテーマにしています。
同ドラマでは、あと10年もすれば高齢者は離農することになり、日本の農業は危機を迎えていることを訴えています。技術者の主人公が委託されている大企業メーカーでは宇宙ロケット(衛星)を打ち上げに成功したことにより、GPS機能は誤差がほとんどない状態で、無人で農機具を作動し、農家の収入面アップや若者雇用拡大につなげる将来を視野に入れています。
日曜9時から放送のドラマ枠だけに、幅広い世代に高評価を受け、人気ドラマに取り上げられたことにより、アグリテックがさらに注目され、若者の就農支援につながることが期待されています。
健康とリンクしている農業は無くてはならないものとして存在
日本では農業が衰退していることを多くの人が周知しているものです。しかし、スーパーで食料品はカット野菜や冷凍野菜が中心の外国産よりも、お米や野菜などは国産が人気を博しています。外国産の安価ばかりが注目されるものではなく、これまでの日本農家が築き上げた品質面での信頼が上をいっているのでしょう。
特に食という分野は健康にリンクしているので、多少野菜価格が高騰しても、安易に外国産に切り替えるというのは、日本では浸透していません。農薬を抑えて新鮮さを売り出すという面では地方農家の頑張りがとても重要になっています。そこで、人手不足を解消し、細かい作業を自動で操縦することができるアグリテックは、地方農家の救世主として小説やドラマの世界だけでなく、現実問題として日本の将来に大切な課題といえます。
このことからも、日本の農業は無くしてはいけないものといえます。日本の農業がダメになってしまうと、中国やアメリカといった広大な土地を持つ国から大量に輸入で賄うしかありません。そうなると、腐敗を遅らせるためにキツイ農薬を使うことも考えられます。
今後の農業の担い手となるのは、ITやIoTに関して抵抗が少ない若い世代といえます。ある程度は資金があったほうがいいでしょうが、農業は国や地方自治体から補助金を申請することが可能ですし、低金利の貸付もJAなどの機関で受けることができます。
注:1 「農業就業人口」とは、15歳以上の農家世帯員のうち、調査期日前1年間に農業のみに従事した者又は農業と兼業の双方に従事したが、農業の従事日数の方が多い者をいう。(農林水産省HPより)
注:2「新規自営農業就農者」とは、家族経営体の世帯員で、調査期日前1年間の生活の主な状態が、「学生」から「自営農業への従事が主」になった者及び「他に雇われて勤務が主」から「自営農業への従事が主」になった者をいう。(同HPより)
※参考
https://www.kantei.go.jp/jp/headline/seichosenryaku/nougyou_kaikaku.html
http://www.maff.go.jp/j/tokei/sihyo/data/08.html
https://www.tbs.co.jp/shitamachi_rocket/
https://www.shogakukan.co.jp/pr/rocket/
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