M&Aやアクセラレーション、将来的に高い成長が見込まれるスタートアップ企業への投資によって様々な産業の企業価値向上を目指すU&A株式会社。U&Aの代表である梅谷様は、今回バトンズを通じて香川県で2店舗経営されている美容サロンを引き継がれました。これまで様々な事業のM&Aやコンサルティングを行ってきた敏腕経営者の梅谷様に、事業の選定基準やその先に見据えている成長戦略ついてお伺いしました。
譲渡企業 | |
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スキーム | 会社譲渡 |
業種 | 美容サロン |
拠点 | 香川県 |
譲渡理由 | 働き方の改善 |
譲受企業 | |
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社名 | U&A株式会社 |
業種 | コンサルティング業など |
拠点 | 東京都 |
譲受理由 | 新規事業への参入 |
3つの選定基準を軸に、美容サロンのマーケットに着目
現在は東証プライム市場に上場している、ITベンチャー企業の創業役員としての経営経験をもつ梅谷様。2019年まで役員を勤められたのち、同年にU&Aを設立されました。
U&Aは、新しい事業を連続的に生み出し育成するスタートアップスタジオのような形で経営をされており、また梅谷様個人としても、プロスポーツチームのアドバイザーやベンチャー企業のコンサルティング業など多岐にわたる活動を行っています。
現在の活動内容に至るまでには、梅谷様がこれまで培ってきた知見をお借りしたいといった声が、人脈の中で広がっていった背景がありました。
「元々、U&Aは資産管理会社として立ち上げたので、事業を創る目的はありませんでした。しかしこれまで出会ってきた様々な業界で活躍する経営者の方々との関係性の中で投資やコンサルティング、M&A等のご相談をいただくことが増え、スタートアップスタジオのような機能をもつ会社にしていった、という経緯になります。」
日本の中小企業の割合は9割以上を占めており、日本の経済や雇用を支える柱となっています。梅谷様は、そのようなSMB市場を軸に、更なる価値提供ができる事業や会社を支援されています。そして、そのための手段の一つがM&Aであり、事業の非連続な成長に重要なアクションを取りながら、事業創造に寄与されています。
そんな梅谷様が今回引き継がれたのは、香川県で2店舗経営されている美容サロン。案件を探す際には、業種や業界はできるだけ絞らず「マーケットの広さ」「非IT業界」「人海戦術」という3つのキーワードを軸に選定を行い、その中で今回の美容サロンに目をつけられました。
美容サロン業界は、全体で2.5兆円※1ほどにも及ぶ巨大マーケット。新型コロナウイルス感染症拡大により活動が制限されていたものの、2022年度には美容室の1回あたりの利用金額が男女ともに過去10年間で最高額を更新する※2など、市場は回復傾向にあります。
美容サロンは、もともと選定基準としていた3つの軸に当てはまる業態であり、価値発揮できる可能性を感じられた梅谷様は、具体的な交渉へと進んでいきます。
「参照記事」
※1:https://hba.beauty.hotpepper.jp/search_sp/
※2:https://www.recruit.co.jp/newsroom/pressrelease/assets/20220623_beauty_01.pdf
前オーナー、従業員の前向きな姿勢に事業の伸び代を実感
美容サロンの中でも、今回の事業に決められた背景について「改善ポイントの明確さ」が理由としてあったと話す梅谷様。
「美容サロンの業態では珍しいと思うのですが、今回買収したサロンはホットペッパービューティーのような予約や顧客管理などを行う外部サイトを活用していなかったんです。
それでもこれまで2店舗運営されてこられたのは、日々のお客様への丁寧な対応や細かい気配りなど様々な積み重ねがあり、リピートする方が多かったからだと、会話を通じて感じました。
そのため、事業運営上の改善ポイントとしては『既存顧客のリピート率を上げる』というよりは、『新規顧客の獲得率を上げる』ことで、そのためにDX化して効率的なマネジメントで事業成長の見込みがあるだろうと感じました。
また、経営においても明確な指針と目標を定め、規律をもった経営管理をすることで利益体質な組織にできるイメージを持つことができました。」
加えて、買収の決め手には従業員の働くスタンスや人柄の良さも理由にあったと話す梅谷様。自身の会社がある東京と、美容サロンのある香川では地理的に距離があったため、他所からの急なオーナーチェンジにネガティブな印象を抱くのではないかと梅谷様は当初予想をしていました。
しかし、オーナーや従業員の方々はその状況をポジティブに受け止め、変化に対して素直で前向きに捉える方が多かったそうです。
起業とは違う、M&AにおけるPMIの難しさ
これまでもさまざまな事業のM&Aやコンサルティングを行ってきた梅谷様。その中には、自らが事業の中に入り込んで指揮をとる形もあれば、前オーナーに代表権を持ってもらいながらサポートしていく形もあり、企業の経営状況に合わせて手腕を振るわれていました。
本事業では、前オーナーや従業員は全員残った状態で、梅谷様がオーナー権を取得。前オーナーだけではやれなかったこと、チャレンジしきれなかったことを、梅谷様が旗を振り実行に移されていきます。
交渉を進める中では、どのような形で引き継ぐのかをすり合わせした上で、重要だと思う項目をヒアリングしていたと話す梅谷様。
「オーナーや従業員に残っていただくことを考えるのであれば、オーナーの人柄や従業員との関係性は非常に大事なポイントだと思います。 仮にオーナーが残らないとなれば、その方がこれまで従業員や取引先とどのような関わりをしてきたか、ということは気にしていました。
自走がすでにできてる状態なのか、手をかけないと自走しない状態なのか。属人化しすぎていないかどうかを判断するためです。また、売りたい理由は常に聞いてましたね。なぜ売るのか、売ってどうしたいのかは必ず聞くようにしていました。」
M&Aにおいて重要なPMI。起業とM&Aは、会社経営という観点では同じだが、使う筋肉が大きく異なると話す梅谷様は、M&Aならではの難しさをどのようなところに感じられているのでしょうか。
「M&Aは引継ぎがとても重要であり、最も大変なところです。前提として、最初に事業を作られた方の想いや価値観、やり方があります。以前からのやり方でバランスが取れていたとするのであれば、そのバランスをうまく保ちながら新しいことを取り入れていくのは、針の穴に糸を通すくらい慎重にやらなければいけないものだと思います。」
そして、引継ぎにおいて重要な、従業員とのコミュニケーション。梅谷様は、とくに3つのことを意識してコミュニケーションを図っているそうです。
「1つ目は、自分とは違う常識を持った人たちであることを前提としてコミュニケーションを取ること。
2つ目は、初めからガラッと変えるというよりは、まずは言葉を尽くして説明すること。なぜやるのか、何を目指しているのかを言語化して、分かりやすく伝えること。
3つ目は、現場の声を聞きながら決断をすること。過去のいいものは残しながら、そうではないものは全部変えることで、より自分たちの価値を上げていきましょう、というメッセージを常に発信するようにしています。」
あくまで、今あるものを前提にアップデートをしていくM&Aは、密なコミュニケーションの中で変化させていく必要があることを、梅谷様は実体験から感じているとおっしゃっておられました。
「非IT業界でのDX化、効率的な店舗運営を目指す」
今後はできる限りDX化を推進することで、効率的な店舗運営によって売り上げを伸ばしていきたいと語る梅谷様。成功のフォーマットを作りながら、出店エリアを広げ、事業を拡大していきたいと話します。
また、サロンだけでは急激な成長曲線を描くのは難しいため、D2Cの美容に関わる製品を現在開発中とのこと。美容製品については、単純にD2Cの製品開発をやるのではなく、店舗とオンラインの合わせ技のOMO戦略を取って事業成長を目指していきます。
「サロンのスタッフは良い意味で職人気質の女性がほとんどで、経営や事業にあまり触れてこなかった人たちです。そういう意味では、僕との役割分担が明確にできています。反対に僕は、現場のことを知るために情報を取りに行くということを積極的にしています。
オンラインでももちろんですが、オフラインでも店舗に直接出向いて、従業員とコミュニケーションをとっています。どのようなお客様を相手にしていて、どんなマーケットなのかというミクロ的な情報収集と、市場データ等のマクロ的な情報収集をかけ合わせることで、自分たちの強みを生かしてどこまで何をすれば伸ばせるのか、今後も考えていきます。」
SMB市場のスタートアップスタジオとして、様々な事業の成長過程に関わるU&A。今回のM&Aでは、東京と香川という地理的な壁を越え、美容業界という新たな市場へと挑みます。
梅谷様とU&A株式会社の今後の更なるご活躍を、バトンズ一同、心より応援いたしております!
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