創業45年を迎える「株式会社秋田イマイ」は、秋田県北秋田市に縫製工場を構える老舗の裁縫企画会社。そこで代表取締役社長を務める近藤 勝男様は、開業当時から事業を支えてきた生え抜きの元・工場長でした。
これまで幾度にもわたる逆境を乗り越えながら、秋田イマイを守り抜き育ててきた近藤様が、この度会社を譲渡するに至るまでに、どのような経路を辿ったのか。一番苦しい時期に先代から事業を継承し、市場の大きな流れに抗いながら必死で戦い続けてきた激動の半生について、詳しくお伺いしてまいりました。
譲渡企業 | |
---|---|
社名 | 株式会社秋田イマイ |
業種 | アパレル・縫製 |
拠点 | 秋田県 |
譲渡理由 | 後継者不在 |
譲受企業 | |
---|---|
区分 | 法人 |
業種 | アパレル、製造・卸売業 |
拠点 | 千葉県 |
譲受理由 | 新規エリアへの進出、取引先拡大 |
町の縫製工場が倒産。そこから始まった、秋田イマイの歩み
近藤様が株式会社秋田イマイにご入社されたのは、今から45年ほど前のこと。事の発端は、100名以上の従業員を抱えた町の縫製工場が倒産して、大量の解雇が出たことから始まります。
その頃、第一子を授かった近藤様は出生届を提出するために町役場を訪問。そこで、縫製工場の倒産による解雇者の受け皿になる『新しい技術工場の立ち上げ』に動いていた町長と、ばったり遭遇します。
町長は、たまたま居合わせた近藤様に「工場長をやってほしい」と頼み、そこから近藤様の約半世紀にわたる激動の人生がスタートしたのです。
「その頃、日雇いをしていて家族が増えたばかりだったので、定職につけるのは魅力的だったんですが、『工場長だなんて自分には荷が重い』と思って最初は断りました。ですが、社長との引き合わせの場になって、町長から半ば強引に口説かれて。
出生届を提出するタイミングで町長に出会わなければ今回の話はなかったのだと思うと、これも御縁なのかなと感じて、引き受けることにしたんです。」
そうしてスタートした秋田イマイは、開業直後の2年間こそ赤字が続いたそうなのですが、徐々に大口顧客の獲得にも成功して順調に業績を伸ばしていき、10年目を迎える頃にはホテルを貸し切って周年記念パーティーが開けるほどに。
開業15年目には、2つ目の工場を開設して従業員も80名超。20年目ともなれば、社員旅行でハワイにいけるほどの羽振りの良さがあったそうです。
そんな順調の伸びを見せていた秋田イマイでしたが、突如襲ってきた「海外生産」という業界構造の変化により、これまでの順調ぶりが一変します。
圧倒的な安価で大量生産が可能となる海外工場への発注は、当然ながら多くのアパレルメーカーにとって魅力的でした。そして、気がつけば孫請けの仕事を受けるしかなくなり、急速に業績が悪化。
そのまま為す術もなく苦しい経営状況が続く中で、創業25年目を迎えると、先代社長が高齢を理由に引退したいとのことで、直々に後継者として指名されたのが近藤様だったのでした。
「全く経営には自信がなかったのですが、家族もいるし、新築を建てたばかりということもあって引き受けることにしたんです。とても厳しい状況ではありましたが、これが底辺だろう、しばらくすれば上向きに改善するだろうと思っていました。」
ところがその後も景気が戻ることはなく、孫請けの孫請けまで手を出すような形で、そこから約20年間なんとか事業を継続させてきた近藤様。そんな近藤様も今年で75歳を迎え、精神的にも体力的にも限界だと感じ始め、誰かに会社を譲りたいと考えるようになったと静かに語ってくださいました。
希望を持たせてくれたアドバイザーと、男気あふれる社長との出会い
こうして「会社譲渡」へと乗り出した近藤様でしたが、後継者探しを始めてから2年ほど経ってもなかなか良い御縁には恵まれなかったのだと言います。
「こんな貧乏社長が経営する縫製工場を受け取ってくれるような会社なんて、どこにもないのだろうと諦めかけていました。そうしたら、金融公庫からバトンズを紹介されて。早速電話をかけてみたところ、すぐにアドバイザーの鈴木さんが訪ねてきてくれたんです。
そして、世の中には色んな人がいる、売り手の何倍もの買い手がいる、だからこの会社を買いたいという人も必ずいますよ、と希望を持たせてくれたんです。
あの時、鈴木さんに励ましてもらえてなかったら譲渡先探しを続ける気力が尽きてしまっていたかもしれないので、本当に感謝してもしきれないという気持ちです。」
今回、M&Aアドバイザーとして近藤様をご支援されたのは、「GSPartners税理士法人」の鈴木森様。GSPartners税理士法人は秋田県でバトンズM&A相談所を開設されており、これまで10回以上M&Aを支援されてきた経験豊富な専門家。今回のM&Aは、そんな鈴木様の適切なサポートもあり実現したご成約でした。
また、近藤様はバトンズ登録後に10社ほどの社長と面談をしたそうなのですが、その中でも一際お人柄が良く行動力もあって、経営者として結果も出されていたのが今回の買い手である田中様(匿名)だったのだと言います。
「実は今回の会社譲渡にあたり、色々と会社上の問題があったのですが、田中様は歯切れ良く現状を許容してくださって。状況に応じて型にハマらない決断を下せる男気あふれる社長さんだと思い、この人であれば安心して従業員をお任せできると思ったんです。」
実際、田中様は譲渡後も株式会社秋田イマイの従業員の皆様を役職・給与もそのままに全員受け入れてくださったそうで、近藤様の長きにわたる後継者探しは、理想的な形で着地したのでした。
「責任は最後まで果たしたい」人を育てるのが自分の使命
良いお相手が見つかり、無事にご成約を果たされた秋田イマイ。アドバイザーの鈴木様や買い手様はもちろん、このニュースを心から喜んでくれたという多くの支援者の皆様に「抱きついて御礼を言いたいくらい感謝している」と笑ってお話しいただいた近藤様に、最後に今後のことについてお伺いすると、従業員に対する熱い思いを語ってくださいました。
「まずは、最後まで自分の責任を果たしたいと思っています。具体的には、これまで海外から受け入れてきた外国籍の従業員たちに勇気を与え、彼らが自立できるように支援していきたいです。
外国籍の労働者については賛否両論あると思いますが、うちの従業員は皆、本当に真剣に働いてくれていて、お互いに強い信頼関係で結ばれていると感じています。
私自身、彼らのことを自分の子供のように思っていますし、言葉の壁はあるものの、今まで一度もトラブルが起きたことはありません。彼らを支え、しっかりと導いていくことが今後の私の使命だと感じています。」
長い経営人生を終えられた近藤様は、誰よりも会社のこと、そこで働く仲間のことを考え、周囲への感謝の気持ちを忘れない、温かく謙虚な経営者でいらっしゃいました。
近藤様の今後の更なるご活躍を、バトンズ一同、心より応援いたしております!
この案件を担当したGSPartners税理士法人の紹介ページ
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