ご自身の経験と強みを活かしたアパレル企業「ドレスウェア株式会社」(仮称)の代表を務めるのは、代々アパレル経営者の家系である川中様(仮称)です。ユニークな着眼点で事業を立ち上げ、デザイナーとバイヤーを兼務しながら、“戦友”と呼ぶ従業員1名と二人三脚で育ててきたアパレル事業を、なぜ手放そうと考えたのか。交渉時の心境と併せて、その胸の内を詳しくお伺いしてまいりました。
譲渡企業 | |
---|---|
区分 | 法人 |
業種 | アパレル・EC |
拠点 | 東京都 |
譲渡理由 | 選択と集中 |
譲受企業 | |
---|---|
区分 | 個人 |
業種 | 不動産 |
拠点 | 埼玉県 |
譲受理由 | 新規事業への参入 |
「丈が短い、生地がチクチクする」自身の原体験から、接客用ドレス事業を設立
幼い頃からアパレル業を営むお祖母様やお母様を傍で見てきたことから、『ファッションは自分で作って販売するもの』という考えが根底にあったという川中様。
そんな川中様は学生時代、キャバクラでバイトをしていたときに、専用のドレスを着る度に『座った時に下着が見えやすい』『生地がチクチクする』というような、ドレスファッションに対する想いや改善点を感じておられました。
そんな経験から、俗に『キャバ嬢』と呼ばれるサービス業に従事する女性向けに特化したアパレル製造・販売事業を立ち上げた川中様。
「キャバ嬢という仕事は、人が好き、コミュニケーションを取るのが好き、という自分の性に合っていて、とても楽しく働かせていただきました。だからこそ、彼女たちのニーズもよく理解していましたし、同じ仕事をしている方々の役に立ちたいと思いました。
大学卒業後は5年くらいサラリーマンをやっていましたが、ふとした瞬間にタイムカードを押すのが嫌になり、性に合わないと感じるようになりまして。自分でやるしかないと思ったのと、20代後半の『勢い』と『なんとなるさ精神』で、とにかくやってみようと事業を立ち上げたのが始まりです。」
そう笑って話す川中様には、事業をするにあたって勝算もおありだったようで
「私は中国で生まれ育ったため、中国語も中国の文化も理解していました。そして、その能力を買われて、勤めていた会社では海外とのやりとりや通訳の責任者を任されていました。そのため、いつの間にか世界中にコネクションがたくさんできていまして。
また、もともと衣服をデザインしたり買い付けたりするのは、好きでしたし得意だったので、自分の持っている能力と人脈を最大限に活かせばイケるだろうと考えていました」とのこと。
その思惑通り、川中様が始めた事業は右肩上がりに成長。中国の工場と密な関係性を築き上げることで、仕入れ価格の圧倒的な引き下げを実現。トレンドを取り入れた高品質な商品を低価格で提供することで、若手キャバクラ嬢からの根強い支持を得たのでした。
6期目で迎えたコロナ禍という逆境。「自分の子供」の未来を考え決断したM&A
そんな川中様に転機が訪れたのは、2019年。誰もが予想しなかったパンデミックによって、多くのサービス業が営業自粛を強いられて経営難に陥りました。当然ながら夜間のサービス業界にも大打撃を与え、結果として川中様の事業も業績悪化の一途を辿りました。
「このまま続けるには限界があると思って廃業も考えました。ただ、この事業は6年間苦労して育ててきた『自分の子ども』みたいな存在なので、できれば残したくて。私の代わりにやってくれる方がいるなら是非ともお願いしたいと思い、M&Aセンターに問い合わせたところ、バトンズを紹介されたんです。」
紹介されたその日のうちにバトンズのサイトへ登録された川中様は、わずか1ヶ月半という短期間で調印へと進んでいきました。
「買い手候補の方々から要望される資料作りや連絡のやりとりは大変でしたが、バトンズの画面も分かりやすかったですし、携帯でも対応できたので不便さはありませんでした。」
一連のプロセスを振り返る川中様に、M&Aを通じて印象に残っていることについてお伺いすると
「始める前は、どんな人が買うんだろうとか、難しい交渉をされたら嫌だなとか思っていました。ですが、考えてみれば、条件を出すのは売り手である自分の方ですから、自分のやりたいことを伝えた上で、対等な立場でやってくれる人を見つける場なんだと思い直せた瞬間がありまして。
そこからは、色んなことがスムーズにいきましたし、当初に抱いていたネガティブな印象はなくなっていました。次は買い手として案件を覗いてみたいと思っているくらいです。」と笑顔でお答えいただきました。
問い合わせ件数40者超え!大切にしたのは、直接話をして決めるということ
そんな川中様が苦労して築き上げたドレスウェアの強みは、売値を相場の半額に設定しても収益が出るという中国との繋がりや流通の仕組みでした。
そうした他の追随を許さない圧倒的な競争優位の事業基盤は、M&A市場においても一際輝いていたようで、登録してから受けた問い合わせは40を超える件数だったそうです。
そんな多数の買い手候補者の中から、どのようにして譲渡先を絞り込んでいったのかお伺いすると、ほぼ全ての候補者とzoom会議をしたり、直接お会いしたりと、お相手の人柄を確認するために、とにかく顔を見て話をするようにしていたのだそうです。
「もちろん、会社としての安定性とか安全性みたいなものは意識していたのですが、それよりも話しやすさとか、誠実さとか、そういった人間性の部分を重視していました。
そうなると、メールの文面だけでは分からないことの方が多いので、多い時では1日5〜6件のzoom会議をしていました。直接お会いしたのは10社ちょっとくらいでしたが、最後は自分の直感を信じて、この人だと思えた方を選びました。」
そう語る川中様が最終的に選ばれたのは、埼玉県に事務所を構える物流施設の賃貸・管理をしている企業。事業拡大にあたり、経営の多角化を志向されて手を挙げられた企業でした。
「マッチングした日から、とんとん拍子に物事が進んでいって、3日目には倉庫の見学にいらっしゃって、1週間も経たずに調印に至りました。そのあたりの決断力も含めて、フィーリングが合ったというか、同じ経営者として好感が持てたんです。
私自身は、決断を渋ったところで結果は変わらないのだから、そのリスクを背負って決め切れるかというのが、経営者として大切な要素だと感じています。ですので、同じようにスピード感をもって決断いただけた買い手さんとは、コミュニケーション上のストレスがありませんでした。」と絶賛されており、この度の成約に非常に満足されているのが伝わってまいりました。
そんな買い手様からは、「是非、取締役として来てほしい」と提案されているそうなのですが、今後のことはまだ何も決めておらず、ゆっくり考えたいと穏やかに微笑んでいらっしゃいました。
川中様の今後の更なるご活躍を、バトンズ一同、心より応援いたしております!
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