レポート

2019.10.30

都内の印刷会社を譲り受けたスピックバンスターの拡大戦略。M&A経験社員多数の自由闊達な会社にベテラン人材を迎える。

2019年10月1日、業歴約50年の東京都内印刷会社が、同じく都内のスピックバンスター株式会社に株式譲渡されました。売り主様はどのような想いで今回、株式譲渡されたのでしょうか。また、買い主様はどのようなシナジーを期待して譲受されたのでしょうか。それぞれに成約までの道のりを伺いました。

 

【譲渡された売り主様】

 

バトンズに登録された経緯について教えてください。

売り主様:息子の知り合いに証券会社の方がいて、その方の紹介がきっかけでバトンズについて知りました。

 

インターネットに自社の譲渡内容を掲載することについて抵抗はありませんでしたか?

売り主様:インターネットに自社を譲渡情報として掲載することについては、Batonzの営業の方がしっかりと秘密保持契約について説明してくれていたので、不安はありませんでした。それよりも、M&Aというと大手同士というイメージがあったので、うちのような小さな会社は対象外なんじゃないかと思っていました。

 

スピックバンスター様とトップ面談をされた時、どのような感想を持たれましたか。

売り主様:私は社長といっても経理しかやっていなかったので、面談を迎える時はすごく緊張していました。

しかし、佐中専務(スピックバンスターの三代目)と常務さんが事務所に入ってきた時、まるで知り合いのような感じであまりにも自然だったので、それで緊張がほぐれたのを覚えています。あぁ、自由闊達な会社なんだろうなと、とても信頼できる方たちだという印象を持ちました。

 

従業員にはどのように説明をされましたか?

売り主様:従業員のモチベーションは実は説明した当初は高くありませんでした。印刷業界はM&Aを行なったという同業が結構いるんですが、そうした人たちのイメージがあったので躊躇したり消極的になった人もいました。

そこでスピックバンスターさんの専務と常務たちに面談をしてもらいました。そしたら一変して。やはり、うちにはなかったしっかりした管理体制があり、強みもたくさんあることが魅力に感じたのだと思います。

うちは受注できずに外部に依頼することが多くなっていて、それが原因で仕事の幅にも制限がでてきてしまっている…とちょうど悩みを抱えていた時期でした。そんな矢先にいただいたお話だったので、従業員も最終的には違う形で羽ばたけるんじゃないかなと思います。彼らも最初は不安な顔色を見せていましたが、面談後は徐々に期待が芽生えてきてみんなで頑張ろうという雰囲気になっていました。

従業員を迎え入れてよかったとスピックバンスター様が思ってくれるように、頑張って欲しいと思っています。

 

【譲受されたスピックバンスター様】

 

トップ面談の時、売り主様にはどのような印象を持たれましたか?

スピックバンスター様:アットホームな会社なんだなという印象でした。非常に温和なお人柄で、財務のことや趣味のお菓子のことなど、色々とお話しさせていただきました。社長は非常に実直で混じり気のないお人柄で、嘘のない方だということがわかり、これならば大丈夫だと感じました。

 

どのような課題があってM&Aを決断されたのですか?

スピックバンスター様:当社は印刷の事業を初めて25年になります。実は印刷会社としては割と若い方なんです。当初は紙の卸しを行っておりました。それから印刷事業をはじめて徐々に拡大していきましたが、印刷業界は縮小傾向にあり、拡大する為の人員確保が困難になってきています。

印刷物を作るオペレーターやその営業員はすぐに用意できるわけではなく、新卒や中途を採用するとなるとそれなりの時間がかかります。そのうえ、激しい業界の変化に対応するため単純な印刷だけでなく付加価値の高い仕事もやっていくとなると、人手が足りないのです。

M&Aを行えば、熟練の技術をもったベテランの人材を確保できるので、短期間で当社に不足している課題を補うことができます。

売り主様:うちの従業員は、一番若くて10年で、だいたい25年以上勤めています。実は、説明した当初は年だからと気恥ずかしさがあったようです。

スピックバンスター様:以前、50代半ばの従業員が当社に入社しましたが、その従業員が入社されてから、今まで当社が取っていなかった仕事を取ってくれるようになり売上も上がりました。そういう前例も当社にあるので、決して50代だから当社では活躍できないという訳ではないですね。

 

スムーズな統合のため人員の受け入れについては、今後どのように取り組まれますか?

スピックバンスター様:人員の受け入れはM&Aにおいて難しいところだと思います。中途採用でさえ難しい問題ですから、ましてや会社ごと受け入れる場合はより関係性を慎重に築くべきであると思います。

当社は始まって25年ですが、これまでにも何社か合流してきているという経緯があります。例えば、営業員が40名弱いますが、そのうち1/3ほどは社外から合流されてきました。そんななかで、我々の社風が「共存共栄」なんですけれど、社内の者も社外の者もみんなで一緒に頑張ろうという意識の醸成を大切にしてきました。そうした空気感が社内にあるので、大丈夫じゃないかなと思っています。

当社の番頭である常務は、一番最初にM&Aで合流してきた社員でもあります。そのため、M&Aで入社される従業員は何が不安なのかといった色々な心情については、常務が一番わかります。当社は過去に合流してきた社員がすでにリーダーや中間管理職になっています。「人が頑張れる環境」がここにあることが当社の社風であり、大切なことだと思っています。

 

合流した社員はこれまでの業務経験を活かしつつ新しい業務に当たられるということですか?

スピックバンスター様:オペレーターの方達はまずは弊社の設備に慣れていただくところから始まると思います。営業の方は、今までの取引先様との関係を引き続き維持していただき、余力次第では弊社の既存のお客様も担当していただきたいと思っています。

 

マッチングから成約までは3ヶ月というスピード成約でした。交渉をサポートしたアドバイザーについてはどのような感想をお持ちですか?

売り主様:アドバイザーの笠間会計の堂阪さんは、本当に親身になって真剣に付き合ってくれました。瞬時の判断力と実行力にすごく長けている方で、堂阪さんがいなかったら今日を迎えられなかったと思います。本当に感謝しています。

スピックバンスター様:最後に判断させるのは人だと思うので、堂阪さんが間に入ってくれて本当に良かったです。堂阪さんはどうやって落とし所をつけようかを考えて真剣に対応してくれる方でした。今後ともぜひお付き合いをお願いしたいと思っています。

 

最後に

印刷業界はオペレーション・営業ともに特殊なスキルやノウハウを必要とし、即戦力となる人材の採用が難しいと言われています。そんななか、M&Aによって適切な人材を迅速に獲得することができれば、人材確保のハードルが下がるだけでなく事業拡大の足掛かりにもなります。さらに、譲渡企業は第三者承継によって創業者利益を獲得できればハッピーリタイアにも繋がり、双方にとって円満なM&Aを実現できます。

印刷業界では、今後も多くの印刷会社の統合が進んでいくと思われますが、今回の売り主様とスピックバンスター様の成約は、業界内の貴重な人材を戦略的に獲得された好事例と言えるのではないでしょうか。

専務取締役 営業本部統括 兼 管理本部長 佐中 翔太郎 氏

国内大手コンサルティングファーム、中国株証券会社を経て2010年10月スピックバンスター株式会社入社。シェアハウス事業(tetoteハウス)、デザイン事業を立ち上げる。経理システム効率化プロジェクト(1億/年)、営業増収計画(3億/年)を達成。2017年専務取締役就任(現職)。スピックバンスターHP