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ロールアップ戦略で売上1,000億円へ。「不動産×建築」M&Aが生み出す事業シナジー

2026年07月17日

滋賀県を拠点に不動産・建築業で全国展開を目指す株式会社エム・ジェイホーム。東京都の一級建築事務所をグループに迎え入れ、首都圏へのエリア拡大と建築設計機能の強化を果たしました。今回のM&Aを成立させるにあたり、どのような事業戦略のもと企業選定を行い、交渉プロセスにおいて売り手の心を掴んだのか。エム・ジェイホームの代表を務める葛川睦様に、M&A戦略や交渉時のこだわり、カルチャーを尊重するPMI(買収後の統合プロセス)の方針などについて伺いました。


 

譲渡企業
社名 株式会社エフイーエー設計
業種 建築設計業
拠点 東京都
譲渡理由 後継者不在

 


 

譲受企業
社名 株式会社エム・ジェイホーム
業種 不動産・建築業
拠点 滋賀県
譲受理由 ノウハウの強化、エリア拡大

 


 企業概要 

株式会社エム・ジェイホーム
HP:https://www.mj-home.co.jp/

不動産の仲介・売買・管理・建築をワンストップで手がけるほか、教育や子育て支援サービスを展開。滋賀県有数の不動産仲介・管理会社から、積極的なM&Aにより全国規模へと事業拡大を加速している。

 

仲介業から総合不動産業へ。事業拡大の現実的な手段としてM&Aを検討

――まずは、貴社の事業内容について教えてください。

当社は滋賀県を拠点に、アパート・マンションの仲介業を行う不動産会社として2005年に創業しました。そこから徐々に領域を広げ、現在は「総合不動産会社」として、不動産の売買や買取、そして建築・リフォームまでをワンストップで提供できる体制を整えています。なお、建築業に関しては、投資用アパートや障がい者向けのグループホーム、老人ホームなどを対象としています。

――創業当初から建築業への進出を目指していたのでしょうか?

不動産の仲介業としてスタートした当初から、管理物件数が一定数を超えたら建築事業部を立ち上げるという構想は持っていました。実際にその計画に沿って、仲介・管理・建築と広げていきました。建築については小さな戸建て賃貸から始めて、そこから徐々に領域を拡大している状況です。

――M&Aを検討された背景についてお聞かせください。

私たちは将来的なIPOを見据え、事業領域を「縦」と「横」の両軸で拡大する構想があります。

「縦軸」の戦略としては、建築の川上から川下までを押さえ、垂直型のバリューチェーンを築いていくこと。そして「横軸」の戦略としては、各事業のエリアや規模を滋賀から全国へと拡大していくこと。この両軸での成長をスピーディに実現するためには、M&Aが不可欠な戦略と考えています。

欠かせない専門人材の継続雇用。売り手の人柄で離職の不安が払拭

――どのような企業を譲受先として検討していましたか?

私たちは今後、東京を本拠地として建築事業を大きく進めていくことを前提としていたため、まずは「首都圏の企業であること」が第一条件でした。

ただ、 「縦軸」であるバリューチェーンの強化、特に工事や設計に関しては対応できるエリアの制約が厳しく、施工体制や技術的な相性もあるため、非常に慎重に選ぶ必要がありました。

そんな中で出会ったエフイーエー設計は、当社が事業領域としている福祉施設の設計に強みがあり、我々の建築ニーズとも非常に親和性の高い「木造2×4(ツーバイフォー)工法」を得意とされていました。エリアの条件はもちろん、技術面でも「一緒になれば確実に大きなシナジーが得られる」と思い、最初に情報を見た段階から非常に強い興味を持ちました。

――売り手様にお会いしての第一印象はいかがでしたか?

初めて曽根社長にお会いして率直に感じたことは、「人柄の素晴らしさ」です。従業員を大切にしている様子が伝わってきて、「譲渡対価の半分は従業員に還元したい」という申し出もあるなど、利益を最大化することよりも従業員を優先している姿勢が印象的でした。

設計会社の場合、従業員、特に一級建築士などプロフェッショナル人材がいなくなると事業として成立しません。そのため、従業員が残ってくれるかどうかは非常に重要なポイントなのですが、曽根社長と従業員の方々がよい関係性を築かれていることが想像できたので、その点の不安はありませんでした。

M&A交渉時に、具体的な成長戦略を伝え売り手の心をつかむ

――設計事務所ではない貴社が選ばれた理由はどこにあったと思われますか?

単に買収するという話ではなく、「お互いにどう成長するか」という提案ができたことが大きいと思います。エフイーエー設計の強み・弱みを徹底的に分析し、「弱みは当社が補完するので、強みを伸ばしていきましょう」というところに焦点を当てて提案しました。

さらに、従業員”個人”のレベルにまで踏み込み、「能力があるのにノンコア業務に追われている方の負担を当社が引き取り、空いた時間で得意分野を伸ばしてもらう」といった、具体的な業務配置までブレイクダウンして説明しました。

ここまで具体化することで、社長に「自社にはまだこれだけのポテンシャルがあり、ここまで伸ばしていけるんだ」とご想像いただけたこと。この未来のイメージの共有が、成約の決定打になったと感じています。

――PMIはどのように進めていく想定でしょうか?

当社では、M&A後にグループ入りした企業がコア事業に集中できる環境づくりを重視しています。合理化できる業務は見直し、不要な業務は削減し、アウトソーシングや本部への集約を進めることで、現場の負担軽減を目指します。

M&A前の段階から課題やボトルネックを把握し、PMIの準備を進めることで、クロージング後すぐに具体的な改善施策を実行できる体制を整えています。

PMIではDay1から現場に入り込み、必要な業務と不要な業務を仕分けし、重要な業務に経営資源を集中できる体制を構築します。その上で、KPIを明確に設定し、月次で進捗を管理しながら事業成長を支援していきます。

また、我々は元々のカルチャーを変えたり、親会社の名前を押し付けることはしません。各社の文化を尊重しながら成果創出する形を重視しています。

案件数の多さや実務面の使いやすさがバトンズ利用の理由

――今回、バトンズが間に立ってサポートさせていただきました。率直なご感想をお聞かせください。

これまでも売り手様と交渉したことは何度かありますが、契約の直前になって売り手様の気が変わってしまったり、売却をなかなか決断できずに破談になってしまうケースが度々ありました。

今回はバトンズのコンサルタントの方が間に立ち、売り手様が不安にならないよう心境をしっかりとグリップしていただきました。短期間で交渉をまとめられたので大変助かりました。

――バトンズのシステムについてのご感想はいかがでしょうか。

バトンズはかなり初期の頃から利用しています。他にも複数のM&Aプラットフォームに登録していますが、一番利用しているのは間違いなくバトンズですね。掲載されている案件数が多く、希望の相手先を探しやすい点が魅力です。契約書の雛形なども充実していて、実務面でも活用しやすいと感じています。

売上1,000億円、IPOへ向け、ロールアップ戦略で成長を加速

写真)左からバトンズ大村、事業承継・引継ぎ支援センター竹内様、
売り手:曽根ご夫妻、エム・ジェイホーム:葛川社長、野村様

――エフイーエー設計様を譲り受け、今後どのような成長戦略を描いていますか?

エフイーエー設計は2×4工法による木造建築、福祉住宅、集合住宅、RC造・鉄骨造に関する設計領域に強みがあります。これらは当社の建築ニーズと一致しているため、大きなシナジーを生み出せる関係にあると思っています。

また、当社の営業力を活かすことで、エフイーエー設計の事業の幅を広げていき、単体でも売上・利益を伸ばしていけるはずです。グループ全体としてもスピード感ある設計が可能になるため、「不動産×建築」会社として大きく飛躍できると確信しています。

――貴社グループの今後の展望をお聞かせください。

今後もM&Aを軸に、事業を垂直方向に広げてバリューチェーンを強固にしていきます。具体的には、不動産管理会社の「ロールアップ戦略(※1)」を推進し、多様な強みを持つ企業とグループを組むことで、売上1,000億円の達成、IPO、そしてその先に海外展開を見据えています。

このM&A戦略を加速させるため、現在は資金調達も重要ミッションです。金融機関のM&Aに対する理解はまだ発展途上であり、LBOローン(※2)の使い勝手にも課題があります。そのため、私たちは第三者割当増資などによる自己資本の増強を進めており、ベンチャーキャピタルや政府系金融機関からの出資を交渉中です。

こうして集めた資金をレバレッジとしてM&Aへ再投資し、KPIを改善・伸長させながら会社をさらに強くしていくこと。これこそが、私たちの思い描く中長期的な経営戦略です。

(※1)ロールアップ戦略‥同業種や関連業種の複数企業を計画的・連続的に買収し、一つの大きな組織へと統合していく成長戦略。

(※2)LBOローン‥買収対象企業の資産や将来の収益力を担保に資金調達を行う融資

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