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旅行業界の今後の展望を徹底解説。コロナ前後での変化とは

2022年02月16日

新型コロナウイルス感染症による社会の変化の影響を大きく受けた業界の1つが、旅行業界です。

コロナ拡大前と拡大後でどのように変化したのでしょうか。そして、コロナの完全な収束が見通せない中、旅行業界の今後はどうなるのでしょうか。この記事で詳しく見ていきましょう。

(※2022年2月現在の記事です。)

 

旅行業界はコロナ以前は順調に成長していた

2019年までの数年間、インバウンドの取り込みに成功したことにより日本の旅行業界は好調でした。2011年、東日本大震災やそれに伴う津波、原発事故等の影響もあり、訪日外国人旅行者数は前年から大きく減少しました。しかしその後の2019年までの8年間、訪日外国人旅行者数が伸び続けており、2019年には3,188万人と過去最高を記録し、アジアでは中国とタイに次ぐ第3位の観光客を受け入れています。

また、訪日客は中国や台湾、韓国など、アジアからの人々が大多数を占め、中でも中国人旅行客は増加傾向にありました。日本国内で大量の消費をするなど地域経済にも好影響をもたらし、「爆買い」という言葉が流行したのを覚えている人もいるでしょう。中国の休暇シーズンである春節の時期には、多くの観光地が中国人旅行客で賑わっていました。

中国からのインバウンドを取り込んだことだけでなく、外国人旅行者向けの消費税免税の範囲拡大など、旅行者の消費を喚起する施策もとられ、旅行産業の成功につながりました。

また、2020年に予定されていた東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催に伴って、東京を初めとした都市の国際化やバリアフリー化が推進されるなど、旅行客も過ごしやすいような環境整備が進められました。旅行産業に力を入れていた政府は、観光立国推進基本計画において2020年までに訪日外国人旅行者数を2,000万人とする目標を掲げていましたが、実際には1年前倒しの2019年に計画を達成するなど、旅行業界は非常に好調だったと言えます。

日本人の旅行に関しても、海外への出国者数は2015年から2019年まで4年連続で増加、国内旅行に関しても、日本人国内旅行消費額の増加など、旅行市場は2019年まで全般的に拡大しています。2020年の新型コロナウイルス感染症拡大が始まるまで、旅行業界は成長市場でした。

 

旅行業界がコロナ禍で受けた損失

市場規模の成長が著しかった旅行業界は、新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大により大きな損失を受けました。

2019年12月、中国で新型コロナウイルスの最初の感染者が報告されました。翌2020年の1月中旬には日本でも第一例目が報告されます。当初は限定的な流行に過ぎないと予想されていた新型コロナウイルスですが、瞬く間に世界中に広がり、各国が外国からの渡航を禁止したり厳しい制限を課したりするようになりました。日本も水際対策として外国人の入国を制限するなど規制を行ったため、インバウンドの旅行客が激減し、外国からの観光客による消費の恩恵を受けていた旅行業界には大打撃となりました。

国内でも、外国への渡航や県をまたぐ移動の自粛が要請され、テーマパークや観光施設等も政府の要請に応えて相次いで休業するなど、日本人の旅行は激減しました。その結果、多くの旅行会社は需要のほとんどを失ってしまいました。

 

コロナ禍でも、政府の各種支援策や補助金、秋に行われたGoToキャンペーンによる国内旅行需要の一時的な回復などもあり、2020年度中の旅行関連企業の倒産はそれほど多くありませんでした。もちろんコロナ前と比較すると増えてはいたものの、その数は2017年から2019年の3年間平均から122%の増加(※)という比較的緩やかなものでした。
しかし、長引くコロナ禍で旅行関連企業の体力が徐々に減っていく中、東京オリンピック・パラリンピック競技大会への海外からの観客受け入れ取りやGotoキャンペーン制度の休止など、旅行業界には不利な話題も続き、より深刻な影響が現れ始めています。2021年上半期の旅行関連企業の倒産は前年同期比166.6%と急増し、2020年よりも厳しい状況です(※)。

コロナがなければ好調に推移していたはずの旅行業界ですが、その模様は2020年以降、大幅に変わってしまいました。

(※:https://www.tsr-net.co.jp/news/analysis/20211006_03.html
旅行業の倒産・廃業、年間200件超えの情勢 帝国データ調べ あきらめ型も加速

 

コロナ禍で生まれた旅行業界の課題

新型コロナウイルス感染症の完全な収束はまだ見込めておらず、今後も旅行業界は不透明な環境の中での経営を強いられるでしょう。コロナ禍で旅行業界に生まれた課題を見ていきます。

 

旅行というコア事業の弱まり

新型コロナウイルス感染症の拡大が始まって以来、旅行会社はコア事業である「旅行」を提供することができなくなりました。2022年1月現在も依然として、国内旅行については自粛や周囲への配慮などが求められているほか、海外旅行に至っては国境を越えることさえ難しい状況です。以前のように自由に旅行ができる世の中にいつ戻れるのかは、不透明と言えます。

こうした状況の中で旅行会社によっては、実際の移動を伴わない「バーチャル旅行」などのコンテンツ制作に力を入れるなどの工夫をしているところもあります。しかし、それだけでは本来の旅行事業をカバーすることはできません。

苦しい状況下で生き残るために、旅行以外の事業に取り組み始めた企業は数多くあります。たとえば日本旅行グループがワクチン接種事業に取り組むなどの事例も見られています。

 

このように旅行会社が旅行領域以外への進出を進めることは、経営を存続させる戦略の1つではありますが、良い面ばかりではありません。日本旅行業協会(JATA)の菊間会長は、2021年のインタビューにおいて「旅行というコア事業のパワーを強めようという動きが弱まってしまうのではないか」という懸念を表明しています。

事業を存続させるために領域を広げる工夫は必要である一方、旅行というコア事業が滞ってしまうのは中長期的に見ても良いこととは言えません。

 

感染症危険度の引き下げと隔離期間の緩和

厳しい状況に置かれている旅行業界の雲行きを変えるためには、コロナ禍以前には堅調な成長を見せていたインバウンド・アウトバウンドの旅行を再開させることが挙げられます。そのためには、政府が指定している各国の感染症危険レベルの引き下げや、入国者に課せられている隔離期間の短縮がポイントとなります。

長期化するコロナ禍で変異株の登場やワクチン接種率の向上などによって、コロナウイルスへの認識が変化し始めました。こうした動きを踏まえて、すでにヨーロッパなど一部の国では移動制限の緩和など、コロナウイルスに対する扱いを緩やかにする措置を進めており、経済と感染症流行とのバランスを見た政策がとられています。

一方、日本では特に水際対策において、世界的に見ても厳しい条件が課されており、今後は一層、隔離期間を短くするなど入国者に対する制限の緩和が求められていくでしょう。日本旅行業協会(JATA)は、日本企業の海外交流再開を模索している日本経済団体連合と協力しながら、政府への働きかけを行っています。

 

旅行業界がコロナ打撃から回復する見通しと今後の展望

今後、旅行業界がコロナ禍の苦境から回復する見込みはどの程度あるのでしょうか。未曾有の世界的な感染症拡大により、観光旅行などの移動は世界的に下火となりました。しかし、人々の旅行への欲求が抑制されている分、コロナの流行が落ち着くことで観光需要が再び高まると考えられています。

旅行会社は、コロナ禍で培った新しいビジネスを活かしてコロナ後を迎えることが重要です。たとえば、今までは海外旅行を専門に扱ってきた業者がコロナの影響がやや少ない国内旅行に参入し、国内の観光関連団体や企業と関係を築くようになりました。このような新たなネットワークを活かして、通常通りに渡航ができるようになった際には、訪日旅行者に対して質の高い経験を届けることができるようになるでしょう。

なお、コロナ後のインバウンドでは今までの戦略からの軌道修正が望ましい点もあります。これまで、海外に向けたプロモーションでは日本の食や日本の文化、日本のレジャーといった名目で売り出していました。しかし、日本を訪れる観光客の中には日本への理解や関心が高い層がますます増加してくると考えられます。今後は「日本」ではなく、各地域のブランドを活用したプロモーションへと軌道修正していく必要があるでしょう。たとえば、「飛騨牛、所沢の茶葉、伊賀・甲賀の忍者」のように、地域性を前面に押し出しながら独自の体験を提供する必要があります。訪日観光客の満足度を高めるためにも、このようなフレームの変更が求められます。

また、2025年には大阪万博も控えています。2021年に開催された東京オリンピックでは海外からの観戦者を受け入れることも、選手や関係者に観光を提供することもできませんでしたが、大阪万博では海外から多くの訪日客を迎えることが期待されています。日本のレベルの高いサービスや独自の文化体験をアピールする格好の機会として、旅行業界で注目されている国際イベントです。

 

旅行業界のコロナ後の課題

新型コロナウイルス感染症は今の旅行業界にとって最大の課題ですが、コロナの収束によって旅行業界の課題のすべてが解決するわけではありません。旅行業界が今後ますます目を向けなければならないものが、環境問題です。

SDGsや循環型社会といったワードが注目を集める中、二酸化炭素の排出の削減など、環境に配慮した暮らしの必要性が叫ばれています。そんな中、長距離の移動を伴う旅行は、脱炭素社会に逆行するものだという意見も見られるようになりました。飛行機を筆頭に、鉄道やバスなどの長距離移動のための乗り物は、現在の技術では二酸化炭素の排出をゼロにすることは難しいためです。

また、景勝地や自然文化遺産などのあるエリアでは、許容できる人の数を大幅に超えて観光客が訪れるために環境破壊につながる、という現象が問題視されています。たとえば、観光客の排出するゴミや汚水が処理能力を上回り海や川が汚れたり、ホテルの建設等が森林伐採につながったりと、観光による地域社会への悪影響が懸念されています。こうした課題に向き合うことが、コロナ収束後の旅行業界には必要となります。

今後考えられる方向性として、旅行パッケージに含まれる移動費に環境保全にあてるための費用を上乗せしたり、環境に配慮した施設等を利用するツアーを企画したりすることが挙げられます。自然環境や文化を保全することに主眼を置いたエコツーリズムに力を入れることも戦略の1つです。また、企業としても、独自に二酸化炭素排出の取り組みを行ったり時限を決めた排出量ゼロの数値目標を立てたりする姿勢が求められるでしょう。

長期化はしているものの、新型コロナウイルスの影響は一過性かもしれません。しかし、環境配慮はこの先もずっと求め続けられる課題です。旅行業界全体として、地球環境を守り二酸化炭素排出量を削減することが必要となります。

 

まとめ

この記事では、旅行業界の現状と今後について解説しました。

新型コロナウイルスが流行するまでは好調だった旅行業界ですが、世界的な感染症の流行と共に人の移動が激減し、すでに2年近くも海外旅行や長距離移動の自粛が続いている状況です。旅行業界にとっては今後、旅行に関する新たなコンテンツを生み出したり感染症対策を充実させたパッケージを売り出したりすると同時に、コロナウイルスとの共存への働きかけも重要になるでしょう。そして長期的に考えた際には、これまで以上の環境配慮を取り入れて、旅行を地球に優しい体験にしていかなければいけません。

旅行業界のこれからの成長のためにも、時代に合わせてサービスを変えながら取り組みを続けていくことが必要となります。

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