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建設業界の今後は?現状や課題から紐解く

2022年01月18日

建設業界は一時の危機的状況を脱していています。それは政府(国土交通省)の資料からも明らかですが、多くの建設業者が業界の行く末を案じているはなぜでしょうか。

この記事では、建設業界の現状と課題を確認したうえで打開策を考えてみます。その1つとして、M&Aをご紹介します。

 

建設業界の現状

国土交通省によると、建設投資額はバブル経済によって上昇を続け、1992年度には84兆円に達しました(*1)。しかし日本経済が「失われた20年」に突入すると、建設投資額もそれに引っ張られる形で下降しました。
今は、底を脱したものの、回復しきれていない状況にあります。

*1):https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001314888.pdf

 

建築投資額、業者数、就業者数それぞれ減少傾向にある

建設投資額の直近の最低額は、2011年度の42兆円で、ピークの1992年度(84兆円)のちょうど半分です。2008年に世界的な経済事件といわれたリーマンショックが発生し、日本はその傷がなかなか癒えませんでした。

しかし、2013年ごろから長期経済成長が始まり、2017年度の建設投資額は57兆円になり、そのあとも60兆円前後で推移しています。

その他の数字も堅調とはいえません。建設業者数(許可業者数)のピークは1999年度の約601,000社でしたが、2018年度には約468,000社と22%減っています。(*2)また建設業界の就業者数も、ピークの1997年度の約685万人から、2018年度の約503万人へと27%減っています

⋆2):https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001314888.pdf

 

現在の下請構造について

建設業界の下請構造は、いわゆる古くて新しい問題として現存しています。

建設の仕事は、現場ごとに規模も内容も異なり、1件ごとに受注して生産していきます。建設業界の商品は「屋外の単品」であり、建設業界の生産システムは「受注生産」です。いずれも生産性を上げにくい特徴といえます。

さらに、1)工事によって必要となる職種が異なる2)工事量が発注者の動向と経済情勢に左右される3)建設業者は最大の工事量を前提として労働力と機械を保有しなければならない、という特徴もあります。これらはいずれも、建設業者にとって大きな負担となります。

また日本の企業に中小企業が多いという特徴がありますが、なかでも建設業界は規模が小さい事業者が特に多く存在します。そのため2次下請け、3次下請けは当たり前で、4次、5次の仕事を請け負っているところも珍しくありません。しかも建設の仕事は、設計、構造、杭打ち、型枠、鉄筋、コンクリート、塗装、内装、防水、電気設備、空調設備など多岐にわたります。

この重層下請構造は、大企業にも中堅企業にも中小企業にも零細事業者にも、デメリットをもたらします。大企業や中堅企業は、多数の中小企業や零細事業者を束ねて管理しなければなりませんし、規模が小さい事業者は力が弱いために不利な取引を引き受けなければならないことがあり薄利に陥ります。

 

建設業界の課題

建設業界の課題は多数ありますが、ここでは次の4点についてみてみます。

人材不足
給与問題
社会保障加入
長時間労働問題

人材不足

国土交通省は、現在の建設業界における慢性的な人手不足に対処すべく、厚生労働省とタッグを組んで人材確保に動いています(*3)。

また職人の高齢化も建設業界を苦しめています。建設関連人材の25%は60歳以上であり、これにくらべ10~20代は11%しかいません(*1)。2、3年後はしのげたとしても、5年後10年後は高齢者が大量に離職し、さらなる人材不足が起こるでしょう。

このように人手不足と職人の高齢化は、悪循環を引き起こしています。

*3):https://www.mlit.go.jp/common/001266808.pdf

 

給与問題

悪循環の結果の1つが、給与問題です。

建設業界「だけ」をみると、給与は増加傾向にあります。建設業の男性生産労働者(技能者)の年間賃金は2012年の392万円から2018年の462万円へと18%増となっています。(*3)しかし、製造業と比べると建設業の給与は見劣りします。製造業の男性生産労働者(技能者)の2018年の年間賃金は476万円なので、建設業(462万円)はこれより3%低い額になります。

なお、2018年の全産業の男性労働者の年間賃金は558万円で、建設業(462万円)はこれより18%も低い額です。(*3)

 

保険加入について

2018年の建設業界の雇用保険、健康保険、厚生年金の3つの社会保険の加入率は97%で、これは2011年の84%よりかなり改善しています。(*3)

しかし2018年の97%の内訳をみるととても喜ぶことができる数字ではないことがわかります。

<2018年の建設業界の社会保険の加入率>

  • 元請:98.4%
  • 1次下請:97.2%
  • 2次下請:94.6%
  • 3次下請:90.5%

 

下請の「次」の数が増えると、社会保険の加入率が下がり、3次下請けは1割近くの人が加入していません。そして先ほど紹介したとおり、建設業界では4次、5次の下請も珍しくないのでさらに低くなっていると推測できます。(*3)

 

長時間労働問題

人手が不足すると労働時間が長くなり、長時間労働が慢性化するとそれを嫌う労働者が増えるので人手の確保がさらに難しくなる、という悪循環が現在の建設業界では起きています。2018年度の建設業界の年間実労働時間は2,036時間で、これは全産業平均より300時間も長いのです。(*3)

長時間労働のあおりを受けて休日数も少なくなっていて、完全週休2日(4週8休)を取れている人は、建設業界では9.5%しかいません。週休1日(4週4休)以下は43.0%もいます。(*3)

長時間労働は大きな課題の1つであるといえます。

 

政府と建設業界の取り組み

建設業界の問題については、政府も重大な関心をもっています。ここでは、政府の取り組みと建設業界の取り組みをみていきます。

政府の取り組み

建設業界は、日本経済にも国づくりにも欠かせない重要な産業です。したがって、そこで働く人たちやこの業界を支えている企業が苦しむことは、日本のためになりません。

そのため政府は、さまざまな形で建設業界を支援しています。

 

建設業者の資質の向上や処分の強化

政府は建設業者の資質の向上を目指し、2019年に建設業法を改正しました。

土木工事や建築工事など29業種について、一定規模以上の工事をすることができる業者の許可を厳しくしました。許可を出すための審査項目として、経営能力、技術力、誠実性、財産的基礎の4つを設定しています。

また、下請業者を保護する目的で、元請に施工体制台帳の作成を義務化したり、公正な請負契約の締結義務や請負契約の書面締結義務を課したりしています。

このほか、法令遵守を進めるために、指示処分、営業停止処分、許可取消処分などの監督処分を強化しました。

 

時間外労働の規制を強化

建設業界の労働者保護の観点では、労働基準法の改正も重要です(2018年に改正成立)。時間外労働の原則は月45時間、年360時間で変わりありませんが、改正によって違反者に罰則が科されるようになりました。

 

工期ガイドラインの策定

国土交通省は2018年に「建設工事における適正な工期設定等のためのガイドライン」を策定しました。下請業者を悩ませている厳しい工期設定に一定の規制を設けることにしたのです。

ガイドラインには次のルールが示されています。

・受発注者は法令を遵守し、双方対等な立場で請負契約を締結しなければならない

・受注者は、建設工事従事者の長時間労働を前提とした不当に短い工期とならないよう、適正な工期で請負契約を締結しなければならない

・発注者は、施工条件の明確化を図り適正な工期で請負契約を締結しなければならない

・受発注者は、工事実施前に情報共有を図り役割分担を明確化して、工期の設定にあたっては下記の条件を適切に考慮しなければならない
 ・建設工事従事者の休日、週休2日など
 ・労務や資機材の調達の準備や現場のあと片付けなどの期間
 ・降雨日や降雪などの作業不能日数

・週休2日を考慮した工期を設定した場合、必要な労務費や共通仮設費を請負代金に適切に反・映させる

・受注者は、違法な長時間労働につながる「工期のダンピング」を行なってはならない

・社会保険の法定福利費などの必要経費を、見積書や請負代金内訳書に明示しなければならない

 

いずれも労働者や下請業者を守る内容になっています。

 

働き方改革

国土交通省は「建設業働き方改革加速化プログラム」を作成し、建設業者への支援を強化しています(*1)。このプログラムは3つのテーマと8つの対策で構成されています。

<建設業働き方改革加速化プログラムの、3つのテーマと8つの対策>
  • テーマ1:長時間労働の是正
    ・対策1:週休2日制の導入を後押しする
    ・対策2:発注者の特性を踏まえた適正な工期設定を推進する
  • テーマ2:給与・社会保険
    ・対策3:技能や経験にふさわしい処遇(給与)を実現する
    ・対策4:社会保険への加入を建設業を営む上でのミニマム・スタンダードにする
  • テーマ3:生産性向上
    ・対策5:生産性の向上に取り組む建設企業を後押しする
    ・対策6:仕事を効率化する
    ・対策7:限られた人材・資機材の効率的な活用を促進する
    ・対策8:重層下請構造改善のため、下請次数削減方策を検討する

 

政府はこの8つの対策に実効性を持たせるために、建設業団体に積極的な取り組みを要請しています。

*1):https://www.mlit.go.jp/common/001226489.pdf

 

建設業界の企業が行うべきこと

建設業者が行うべきことは、今まで見てきた課題から1)人手不足の解消2)発言力の強化3)労働環境の改善4)儲け体質になること、の4点に集約されるはずです。

これらを実現する手法として、M&Aが有効です。その理由を解説していきます。

 

M&Aを行うことにより解決できる

建設業者が難題を抱えていたら、M&A(合併と買収)を行うことで解決できるかもしれません。

M&Aは人手不足を解消でき、職人のスキルが上げられる

M&Aで企業を買収すれば、単純に買収した企業の労働者の数だけ人手が増えます。1人1人採用して労働者を増やすより、はるかに効率的です。

そして企業規模が大きくなると、指導を必要とする労働者に指導できる社員をつけることができます。また、一度の研修で多くの労働者を参加させることができるので、効率的かつ効果的に育成・養成ができます。これにより、職人のスキルが確実に向上するでしょう。

M&Aによって発言力が増し、有利な取引ができるようになり、労働環境を改善できる

M&Aで企業規模が大きくなると発言力が強くなるので、契約を自社に有利な内容にすることができます。

また、大きな会社は信用力が増すので、銀行の融資が受けやすくなり、社内投資も進められます。設備や機械を最新のものに更新すれば生産性が上がり、時短も進むので労働者の負担が減ります。

M&Aによって管理業務を集約化でき「儲け体質」になる

M&Aによって、2社が1社になったり、3社が1社になったりします。

ということは、2社や3社がそれぞれ行なってきた総務、経理、労務、人事などの管理業務を集約することができます。管理業務の担当者を、総合的に減らすことができます。

さらに、会社が大きくなると受注できる仕事量が増えるので、資材や材料の1回の発注量が増えて価格交渉が有利になります。コストダウンが進むので、利益を出しやすい「儲け体質」になります。

 

まとめ

インフラをつくっている建設業は、日本を支えている業界といえます。その建設業を支えている建設業者が弱体化することは、企業自身にも日本経済にも損失になるため政府のよる様々な支援が行われています。

しかし、建設業者も民間企業である以上、自助努力としての経営強化が欠かせません。「建設業界の下請企業だから小規模でよい」という考えは通用しづらくなっています。M&Aは、企業を儲け体質に変え、強い経営を実現するでしょう。

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