ノウハウ

2020.03.04

スモールM&Aでも人気の調剤薬局、M&Aが活発になっている背景とは?

「コンビニの数よりも多い」と言われる調剤薬局やドラッグストア。

高齢化社会や健康志向の高まりに伴い、次々と大手企業が店舗を構えるなか、調剤薬局業界は「薬剤師不足」や「薬剤師の高齢化」が問題視されています。

また、近年では診療報酬や調剤制度の改正、調剤師の教育課程の改正に伴い、調剤薬局を取り巻く環境がめまぐるしく変化していることでも調剤薬局業界が注目を集めています。

今回は調剤薬局業界にフォーカスして、調剤薬局の現状や市場の動向、調剤薬局をめぐるM&Aについて解説します。

 

調剤薬局の定義

以下の条件をすべて満たしている事業所や店舗が、「調剤薬局」に当てはまります。

・薬剤師が常駐(管理薬剤師が必要※兼任禁止)している

・調剤室がある

・医師の処方に基づいた調剤を行える薬剤師がいる

・都道府県知事の認可を得ている

 

調剤薬局は厚生労働省の地方部局「地方厚生局」から保険指定を受けた「保険薬局」でもあります。保険薬局は病院やクリニックの医師が交付する処方せんに基づいて調剤を行う薬局を指します。

調剤薬局と呼ばれる医療機関で従事する薬剤師は、薬局医薬品、要指導医薬品、一般用医薬品を取り扱うことができ、中でも薬局医薬品を中心に扱う薬局が「調剤薬局」です。

 

調剤薬局業界の現状

2018年度末現在の日本全国の薬局数は 59,613 施設で、これは同時点でのコンビニエンスストアの58,340施設よりも多い数字です。現在の調剤薬局業界の状況について見ていきましょう。

調剤薬局市場の動向

現時点でコンビニよりも店舗数の多い調剤薬局ですが、2016年以降は減少傾向にあります。

現状では大手調剤チェーンや大手ドラッグストアといったトップ企業の売り上げ占有率はわずか2.8%で、上位10社の合計でも20%に満たず、全体の約7割は個人経営の薬局が占める低寡占市場です。

しかしこれからの調剤薬局業界は、M&Aによって力を付ける大手企業と経営に苦しむ小規模薬局との二極化が進むのではないかと予想されています。これはドラッグストアの大型化や薬事法など、法律の改定が背景にあります。

従来のシステムに変化

地域医療の強化を目的として、厚生労働省がかかりつけ薬剤師・薬局の増加を推進しており、これも調剤薬局業界の再編を後押ししています。

従来の病院やクリニックに併設している「門前薬局」で調剤を受け取る仕組みから、かかりつけ薬局で受け取る仕組みへの変更が推奨されたことで、門前薬局であるだけでは利益を得られない薬局が増えてきているのです。

 

薬剤師の不足問題

薬剤師が不足していることも、調剤薬局業界が右肩下がりになっていることの原因のひとつと考えられます。

薬剤師になるための薬学教育が6年制になった影響

薬剤師不足の原因のひとつに、2006年度より薬剤師養成のための薬学教育が、従来の4年から6年に延長されたことが挙げられます。

薬剤師を目指す学生の、「6年も勉強したのだから、小さな薬局ではなく大きく安定した企業の運営するところに勤めたい」という心理もあり、大手調剤薬局へ人材が流入しているという現状があります。

薬剤師不足に困る調剤薬局

薬剤師が不足すると、現役の薬剤師は過重労働となりやすい問題もあります。

薬剤師1人あたりの処方箋枚数は1日40枚までと定められており、これ以上の処方を行うのであれば2人以上の薬剤師が必要になります。

また、調剤薬局で処方する薬の多くは薬剤師でないと処方できないものであり、薬剤師が休みをとってシフトに穴が開くと処方ができず客離れの原因となるため、なかなか休めないという悪循環も生じています。

さらに、個人の調剤薬局は地域密着型が多いため、薬剤師が高齢になっていても、地域のために閉められないといった現状もあります。

 

今後はM&Aが更に盛り上がる

制度改正や薬剤師の高齢化・人手不足により、調剤薬局業界は廃業件数が増えている一方で、今後は益々M&Aが活発に行われていくと予測されます。

買い手側と売り手側、双方のM&Aの目的を見ていきましょう。

かかりつけ薬局の買収

2018年度から厚生労働省がかかりつけ薬剤師・薬局の増加を推進していることから、門前薬局やグループ薬局の調剤報酬は引き下げられることになります。

そのため、それらの薬局は生き残りを図るために、かかりつけ薬剤師の導入およびかかりつけ薬局への移行を進めており、M&Aによって個人経営の小規模な調剤薬局が買収のターゲットとなることが考えられます。

さらに、大手調剤薬局やドラッグストアでは、近年スケールメリットや地域のヘルスケアネットワークの構築を見込んだM&Aが盛んです。

2019年にはココカラファインやウエルシアといった大手ドラッグストアがM&Aで競合ドラッグストアや調剤薬局を統合し、市場占有率を高めました。

 M&Aとともに、薬剤師を確保したい

地域密着型の調剤薬局を構える薬剤師が、高齢化により事業承継を希望するケースも増えています。

2018年の厚労省の調査では、一般企業で定年を迎える時期でもある「60~69歳」の薬剤師は、全国で4万1,437人、「70歳以上」は1万6,771人で、薬剤師全体の18.7%にのぼります。創業者が世代交代の時期を迎えていることと、高い営業権(のれん代)が付くことで買い手のニーズの高さが合わさり、今後もM&Aによる第三者への承継は進んでいくと考えられます。

顧客管理のクラウド化も必要に

前述の薬剤師不足の問題と併せて、1人あたりの薬剤師が担当する顧客管理の煩雑さ、ジェネリック医薬品の取引量の拡大に伴う在庫管理の複雑化といった課題も浮き彫りとなっています。

これらの課題をクリアするためには、管理業務のクラウド化や医療分野へのICT(情報通信技術)化など、IT分野に強い他業種や、同業との協業、提携によって経営の効率化を図ることも必要となってくるでしょう。

M&Aを通じて業務拡大を図るのではあれば、他業種との協業によって業務効率化・IT化も同時に進めるとよいでしょう。

 

調剤薬局のM&A動向に今後も注目

高齢化社会に突入したわが国において、調剤薬局のニーズは高まり続けていくでしょう。

一方で、創業者の世代交代の時期も重なっていることで、今後もM&Aは盛んに行われていくことが予想されます。

M&Aの成功には、確かな実績を持ったプロのサポートが欠かせません。

M&Aによって優良な調剤薬局を買収したい方、あるいは高齢化に伴い第三者への事業承継を考えている方も、M&A仲介業者などプロのサポートを受け、M&Aを成功に導きましょう。