レポート

2019.04.05

中小企業の経営者は抑えておきたい、継続雇用制度に関する知識

少子高齢化時代に突入し、労働力不足が深刻になっています。政府は様々な法的措置を講じて働き方改革を推進していますが、そのひとつに、希望する従業員の定年を65歳まで延長する継続雇用制度という制度があります。

長く働きたい従業員と、リソース不足を少しでも解消したい企業の要望に応えるために施行されたこの制度。中小企業にとっては、人材不足を補うための良案であると同時に、高齢労働者の労働環境の整備を行う必要もあり、いろいろな面で影響の大きい制度と言えます。

継続雇用制度とは

継続雇用制度とは、本人が希望すれば、企業が雇用している従業員は定年後も引き続き雇用されるという制度です。高齢者雇用安定法が改正され、希望者は全員継続雇用対象となることになりました。

高齢の従業員が多いとされる中小企業にとっては、この法律改正は好影響を与えてくれるものと考えられます。但し、この法律は細部で様々に修正されており、実際に中小企業の経営に影響を及ぼす部分を把握しておくことが大切です。

高齢者雇用安定法とは_働き方改革の一環

高齢者雇用安定法は、少子高齢化により実際の生産活動に従事する労働人口が減少に転じてきたことにより、改正が必要になりました。

日本企業の生産力を支える労働者の減少は、企業活動の維持が難しくなることにつながるため、企業は生産性を向上させることが不可欠です。そこで、今後の日本の労働市場を支えるために考え出されたのが、働き方改革です。

働き方改革とは

働き方改革は、日本の少子高齢化社会において、企業がその労働環境を変え、働く従業者の意識を改善していこうという政策です。そのポイントは、以下の3つです。

①  働き手を増加させる政策・・・ 女性や高齢者の継続労働力化

②  出生率を上げる政策

③  労働生産性の向上

このうち、①と③が中小企業にも求められている取り組みです。

働き方改革における継続雇用制度の狙い

働き方改革における継続雇用制度の法改正の目的は、高い技術やノウハウを持った就労意欲のある高齢労働者の戦力化にあります。高齢労働者の雇用年齢を高めることで、新たな労働力を補充せずにすみ、技術の継承などもより進むことから、労働生産性の向上にも繋がると考えられています。

ただし、会社経営にとっては、平均年齢が上がってしまうという問題が生じる可能性もあり得ます。

中小企業にとっての影響とは

同制度によって中小企業に生じる影響とは、「高齢従業員の定年延長によって生じるコスト」でしょう。新人の教育コストの削減や熟練の技術やノウハウの承継など、良い面を活かせば会社の発展に寄与することも充分に望めます。ただし、高齢従業員の定年延長を行いながら会社全体の生産性を維持するためには、行政の支援とその支援を受けるための手続きを有効活用をおすすめします。

この点をよく知っておくことで、高齢従業者の雇用によるメリットを生かし、それを強みとすることができるのです。

高齢従業者の定年の延長に関する改正

今回の高年齢者雇用安定法の法律改正で一番重要な点は、高齢従業者の定年の延長は、希望者全員がその対象になったことです。従って、継続を希望される方を対象とした企業内の制度整備が必要になります。

但し、これには、

  • 継続雇用制度は、65歳までの雇用延長を保証するものでなくてもよい
  • 本人の選択肢を設けて本人が継続雇用を望まなければ従来の定年制度があってもよい

とされています。

改正法でとれる継続雇用の考え方

55歳以降の雇用条件を低くした上で65歳までの雇用継続が保証される道と、55歳時点の雇用条件が継続される代わりに60歳で定年という道があり、従業員は選択することができます。また、継続した雇用を行うのであれば、65歳までの雇用義務が課されていない点も重要になります。途中で本人の希望によって退職になってもかまわないのです。

すなわち、雇用継続によって受け取る給与が、雇用保険や年金の受取額より下回る場合は、退職することもできるということです。

継続雇用の雇用条件が低いために対象者が継続雇用を希望しない場合、企業にとって法律違反にはなりません。但し、この場合には、経営者の「合理的な裁量の範囲での条件提示」が条件になっており、裁量範囲の判断は、行政や専門家に相談する必要があります。

行政の支援と届け出

働き方改革では、中小企業が継続雇用制度を活用する場合に、助成金など行政の支援を受けられる制度があります。

継続雇用制度の活用に当たって利用できる助成金の種類

厚生労働省には、65歳超雇用推進助成金があります。継続雇用に向けた雇用環境を整備するための制度で、3つのコースが設けられています。

・65歳超継続雇用促進コース

・高年齢者雇用環境整備支援コース

・高年齢者無期雇用転換コース

それぞれ、(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構が支給申請の受付窓口になっており、支給条件もさまざま設けられています。それぞれ支給額も違っていますので、直接問い合わせてから申請を行います。

【65歳超継続雇用促進コース】

65歳超継続雇用促進コースは、就業規則などに、

・65歳以上への定年引き上げ

・定年の定めの廃止

・希望者全員が66歳以上までの雇用される継続雇用制度を導入

のうちのひとつが盛り込まれた制度を実施し、それによって経費が発生した場合に助成金が受けられます。支給申請先は、(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構になります。

【高年齢者雇用環境整備支援コース】

高年齢者雇用環境整備支援コースは、雇用環境整備計画を作成して、(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構の理事長の認定を受け、その計画に基づいて実施した場合に助成金を受けられます。

【高年齢者無期雇用転換コース】

高年齢者無期雇用転換コースは、50歳以上でかつ定年年齢未満の高齢有期契約社員を無期雇用社員に転換した場合に受けられる助成金です。但し、事前に「無期雇用転換計画」を(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長の認定を受け、実施した場合に限られます。

継続雇用制度上の対応方法

継続雇用制度は、少子高齢化に対する働き方改革の一貫として行われており、高齢従業者を多く抱える中小企業も、今後の生き残りをかけて積極的に活用すべきでしょう。

経営者自身が、高齢者雇用に対する従来の考え方を転換させ、高齢従業者が働きやすく、彼らの持つ技術などを若い世代に引き継がせる職場環境を整備していく必要があるのです。今後、人材の確保がどんどん難しくなっていくなか、高齢従業員と若い従業員が協力して高い生産性を実現できる職場を提供していくことが不可欠になります。

経営者として、助成金を生かして、最善の対応を行っていくことが重要です。