ライフイベントにまつわる様々な業界で透明性の高い取引の実現に挑む株式会社MOTA。同社は、従来の自動車流通業界が抱えていた「鳴りやまない営業電話」や「アンフェアな取引プロセス」などの「不」を独自の入札システムで解消。そのビジネスモデルを不動産査定へと横展開するなど、領域拡大を進めています。

次なる展開として、M&Aを活用した「既存サービスの強化」と「新規事業(人材業界)への参入」を目指すMOTAの事業構想や思いとは。代表取締役社長である佐藤氏と、M&A推進を担う経営戦略部の田中氏にインタビューを実施し、M&Aで描く会社の未来について伺いました。

株式会社MOTA 佐藤大輔氏と田中潤一郎氏

株式会社MOTA 代表取締役社長:佐藤大輔様(左)、経営戦略部:田中潤一郎様(右)

会社概要

株式会社MOTA 1999年に米国オートバイテル社の日本法人として設立。現在のMOTA社は、同社を母体に2018年に経営体制が刷新され、現代表が就任。翌年に株式会社MOTAに社名変更し、中古車一括査定サービス「MOTA車買取」や不動産一括査定、引越し見積もりサービスなどを展開。ライフイベントにおける「不」の解消に向けた複数領域への進出を目指す。
HP:https://mota.inc/

Interviewee

代表取締役社長
佐藤 大輔(Daisuke Sato)
人材サービス企業での勤務を経て27歳で起業。2年で事業売却を実現し、2011年にリクルートに入社。退職後に2度目の起業を行い、再び2年で事業売却に成功。その後、2018年からMOTAの代表取締役社長に就任。モノやコトのフェア・トレード実現を掲げ、新サービス創出に取り組んでいる。
経営戦略部
田中 潤一郎(Junichiro Tanaka)
SAPにて生産管理・プロジェクト管理モジュール担当のコンサルタントとして従事。その後、ファーストリテイリングで店舗運営を、虎屋では営業管理・営業企画・経営戦略に携わる。2024年にMOTAへ入社後は、経営戦略部にてクライアント営業支援・データ分析・M&A推進を担当し、事業成長を牽引。

自動車・不動産、そして人材へ。業界課題を根底から見直す



——まずは貴社の企業概要について教えてください。

佐藤:当社は「世界中に、もっとフェア・トレードを。」をミッションに掲げるDX企業です。主力事業である中古車一括査定サービス「MOTA車買取」は、業界最大級の規模にまで成長を遂げ、2024年には不動産査定へとサービス領域を拡大。自動車流通業界にとどまらず、不動産や引越し、転職といったさまざまなライフイベントで発生する「不」を解消するために、業界の垣根を越えた課題解決に挑戦しています。

当社が掲げる「フェア・トレード」とは、情報の非対称性をなくし、ユーザーと企業の双方が安心して取引できる透明性の高い取引のことを指します。この課題を抱えるさまざまな業界に入り込み、サービス開発力やデジタルマーケティングのノウハウを活かした事業拡大を進めています。

株式会社MOTA 代表取締役社長 佐藤大輔氏

——なぜ主力領域から不動産へと事業領域を広げられたのでしょうか?

佐藤:自動車流通業界が抱えていた問題は、他のさまざまな業界でも同様に存在しており、その解決に挑みたいと思ったことが大きな理由です。また、当社が構築したビジネスモデルは、他の業界へも確実に応用ができると見込んでいました。

その中で最初に不動産を選んだのは、サービスを横展開しやすい類似構造だったことと、人生に対するインパクトが大きい領域だからです。今後は「人材業界」を新規参入領域として捉えていますが、この業界も人生における影響が大きく、また私自身が人材プラットフォーム企業に勤めていた経験もあるため、解像度高くビジネス課題に向き合えると考えています。

例えば、この業界は求人情報誌の時代から「企業側の販売支援」を目的とした広告モデルが主流であり、企業側の都合が優先されがちな古い体質が残っています。求職者にとって透明性の高い取引とは何かを追求し、既存のマッチングシステムを根本から見直したいと考えています。

株式会社MOTAの沿革

株式会社MOTAの沿革

「圧倒的なマーケティング力」を譲渡企業の成長エンジンに



——貴社がM&Aに取り組み始めた背景と目的を教えてください。

田中:私たちは既存事業の強化を図りつつ、新しい領域(人材業界)への進出も並行して検討しています。しかし、ゼロからの立ち上げは膨大な時間と労力がかかるため、すでに事業基盤をもつ企業とご一緒することで、ビジョン実現に向けたスピードを飛躍的に高めたいと考えています。

M&Aの対象として検討しているのは、「自動車、不動産/引越し、人材」の3領域です。自動車業界では、既存事業の強化として中古車の流通データを持つ企業や、査定をAIで自動化していくための技術をもった企業などを想定しています。

不動産領域でも、当社とのシナジーが見込まれるサービスを持つ企業や、引越し事業を展開されている企業との提携を広く検討しています。引越し業界でも一括査定サービスなどで同様の課題があるため、その解決に取り組みたいと考えています。

人材業界はこれから参入する領域のため、人材紹介会社やプラットフォームを提供する会社など幅広く検討していく方針です。業界課題の解決に向けて、手を取り合えるパートナー企業を探しています。

さらに、全業界で横断するテーマとしてATS(採用管理システム)を提供するSaaS企業にも関心を持っています。私たちは業界の「不」を解消したいという強い思いがあるため、現状の延長線上ではなく、お互いの知見やノウハウを掛け合わせながら、新しい価値の創出にともに挑戦したいと思っています。

株式会社MOTA 経営戦略部 田中潤一郎氏

——譲渡企業にどのような価値提供やシナジーを発揮できるでしょうか?

佐藤:当社最大の強みは「マーケティング力」です。これまでSNSや動画、ラジオなど「デジタル」と「リアル」双方におけるマーケティング施策を積極的に展開してきました。それにより、すでに大手企業がひしめく領域において、後発ながら業界最大級のサービスへと成長させた実績があります。

直近では十数名規模のマーケティング専門人材の採用も進めており、これまで以上に精度の高い施策をスピーディーに実行できる体制が整っています。M&Aでご一緒になる企業においても、当社のマーケティングノウハウは事業を大きく飛躍させる起爆剤になるのではないかと考えております。

自身も会社売却を経験したからこそ、心情に寄り添うM&Aを



——佐藤社長の売り手としてのご経験についてお聞かせください。

佐藤:私は20代の頃に、自分で起業した会社の譲渡を経験しました。事業は順調に伸びていましたが、さらなる拡大には大規模な投資が必要というタイミングで、投資会社からM&Aの打診を受けたのです。

当初は「これだけ苦労して育てた会社を売るわけがない」という心情でしたが、彼らはM&A後の事業の未来を真剣に語ってくれました。心が動いたのは、お金ではなく「本当にお客様を幸せにしたいなら、我々のリソースを使って一緒に事業を大きくしよう」と言ってくれたその熱意です。この時の体験が、私のM&Aに対する価値観のベースになっています。

その後、2度目のM&Aも経験しましたが、売り手側の経営者や従業員がM&Aに対して「得体の知れない不安」を抱くのは非常によくわかります。経営体制が変わることで、会社や自分の行く末に不安を感じるのは当然のこと。だからこそ、相手を心から尊重することが何よりも大切だと考えています。

M&Aを単なる資本取引ではなく対等なパートナーシップと捉え、相手企業の歩んできた歴史や実績に敬意を払って対話を重ねることを何より大切にしています。

また、M&A後に当社の文化を無理やり押し付けるようなこともしません。ゆっくりと時間をかけて納得していただきながら、一つのチームへと融合していくプロセスを大切にしています。自分自身が会社を手放す経験をしたからこそ、売り手の方々の心情に寄り添ったM&Aができると考えています。

株式会社MOTAの売上高推移と顧客数

——現在の主力事業はどのように成長してきたのでしょうか?

佐藤:従来の自動車流通業界は、中間業者の高額な手数料や不透明な査定プロセスなど、ユーザーに不利な取引となりやすい構造上の課題を抱えていました。また、これまでの査定サービスは「利用者情報を一斉送付し、買取業者が架電競争で顧客を取り合う」といった、ユーザーの利便性を完全に置き去りにした設計が常態化していました。

その後、ご縁があって2018年にMOTAの経営を引き継ぐことになりましたが、代表に就任した当時も古い業界構造は変わっておらず、ここを根本から変えたいと強く決意しました。

さまざまな試行錯誤を経て当社がリリースしたのが、「入札上位3社紹介制」の一括査定サービスです。具体的には、最初に車のデータのみを加盟企業側に公開して最大20社が事前入札を行い、高価格をつけた上位3社に限定してユーザー情報を開示する仕組みを採用しました。

これにより、ユーザーは数十社からの鳴りやまない営業電話に悩まされることなく、安心して車を売却できる。また、価格のスクリーニングを当社が事前に行うため、アンフェアな価格に応じてしまうというリスクも防げます。この独自の仕組みは特許も取得しており、他社には真似できない強みとして業界トップクラスのサービスへと成長することができました。

MOTA一括査定のビジネスモデル

共に社会課題へ挑むパートナーとしての「共創型M&A戦略」



——貴社の今後のビジョンを教えてください。

佐藤:当社は2027年に売上250億円、2030年に売上1,000億円という目標を掲げています。既存の自動車流通領域では、流通プロセスで発生する多重な中間マージンを削減し、より合理的でシンプルな業界構造への変革に挑み続けます。

長期的には、車・家・仕事など、人生の重要な取引において生じる「情報の非対称性」や「不(不安・不便・不可能)」をテクノロジーの力で解消し、透明性の高いインフラを構築することで、誰もが納得してフェアな取引ができる社会を実現することが私たちのビジョンです。

——最後に、譲渡を検討している企業へのメッセージをお願いします。

田中:私たちにとってM&Aは「戦略的な成長の加速手段」であると同時に、社会課題へ挑む「パートナーシップの入口」でもあります。常に軸に置いているのは「この事業が持つ本来の価値を、どう最大化できるか」という問いです。

単なる数字の合理性ではなく、譲渡企業の皆様が積み上げてきたものへの敬意と、それを活かす具体的な構想を持って、対話を重ねることを大切にしています。ともに業界の「不」をなくしていけると感じた方とは、ぜひ率直にお話しさせていただきたいです。

佐藤:自動車や不動産領域で培った「マーケティング力」や「Webサービスの再定義」というノウハウを、新しい領域へと波及させるためのエンジンとしてM&Aを捉えています。

譲渡企業の皆様が築き上げてきた専門性と、当社のノウハウを融合させることで、業界の進化を牽引したい。単なる買収ではなく、共に業界の「不」を解消するパートナーとして、新たな価値を社会に実装していく未来を共に創りましょう。