2025年にM&A支援専門会社として、京都銀行より分社化した京都M&Aアドバイザリー。全国でも珍しい地方銀行のM&A専門会社設立の動向に、多くの注目が集まっています。

案件の特徴ごとに3つのグループでM&A支援に取り組む当社企業戦略部の各グループ長に、それぞれの特徴や分社化のメリット、今後の事業構想についてお話を伺いました。

京都M&Aアドバイザリー株式会社の3名のグループ長

会社概要

京都M&Aアドバイザリー株式会社 京都銀行のM&A支援事業を引き継ぐ形で2025年7月に設立。上場・中堅企業向けの第一グループ、中堅・中小企業向けの第二グループ、外部提携のハブを担う第三グループで構成され、事業承継型M&Aや戦略的M&Aなどに対するM&A支援業務を遂行する。
HP:https://www.kyotobank.co.jp/kyoto-ma/

Interviewee

企業戦略部 企業戦略第一グループ グループ長
山本武(Takeshi Yamamoto)
2007年株式会社京都銀行入行(西院支店)、デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社にてトレーニー後、2014年4月よりM&A業務専担者として従事。2025年7月より、京都M&Aアドバイザリー株式会社に出向し、現職。
企業戦略部 企業戦略第二グループ グループ長
小柳大地(Daichi Koyanagi)
2009年株式会社京都銀行入行(西桂支店)、株式会社日本M&Aセンターにてトレーニー後、2015年10月よりM&A業務専担者として従事。2025年7月より、京都M&Aアドバイザリー株式会社に出向し、現職。
企業戦略部 企業戦略第三グループ グループ長
築澤考拓(Takahiro Tsukizawa)
2009年株式会社京都銀行入行(宇治支店)、株式会社レコフにてトレーニー後、2014年10月よりM&A業務専担者として従事。2025年7月より、京都M&Aアドバイザリー株式会社に出向し、現職。

M&Aに固執しない姿勢こそ、地域金融グループの強み



―まずは京都銀行におけるM&A業務の歴史と、貴社の成り立ちをお聞かせください。

山本:当社は2025年7月に京都フィナンシャルグループのM&A支援専門会社として、京都銀行のM&A支援事業を引き継ぐ形で創設されました。もともと京都銀行がM&A支援業務をスタートしたのは2001年。その後、2007年にM&Aの専任者を配置し、20年近くにわたりM&A業務に注力して取り組んできました。

これまでの累計支援先数は280先以上。銀行の一部門からM&A支援専門会社へと形は変わりましたが、地域のお客様に寄り添う姿勢はこれまでと変わらず、M&Aを通じた経営課題の解決に取り組んでいます。

―分社化によってどのような変化がありましたか?

築澤:京都銀行時代から、外部提携先との連携に力を入れていましたが、M&A専門会社になり、これまで以上に相談しやすいと新たに提携をいただいたり、提携を強化したいというお声をいただくようになりました。

こうした広がりは、単なる案件数の増加にとどまらず、地域のM&Aのハブとしての機能を果たす上で非常に意義があると感じています。

山本:分社化したことで、人材確保や経費配分の自由度が上がりました。中途採用者も設立来6名が新たに入社しており、スピード感をもって優秀な人材を獲得できています。

金融機関やM&A専門会社の出身者など、「分社化した新会社でM&A支援に挑戦できる」という部分に共感して入社されるなど、採用面の効果が出始めています。

企業戦略第一グループ グループ長:山本武様

企業戦略第一グループ グループ長:山本武様

―地域金融機関をバックボーンに持つ貴社の特徴を教えてください。

小柳:根底にあるのは「M&Aはあくまで選択肢のひとつである」という考え方です。我々はM&Aの専門会社でありながら、地域金融グループの一企業でもあります。成約自体が目的ではなく、本当にお客様にとってM&Aが最善の道であるならば全力でご支援する。このスタンスこそ、地域金融グループの当社がM&A支援に取り組む最大の意義であると考えています。

―他の地域金融機関とはどのような違いがあるでしょうか?

山本:他の金融機関との違いは、2001年からM&A支援に取り組んできた歴史。そして、広域型地方銀行として関西圏を中心に複数エリアに展開しているという特性を活かし、府県を跨いだ広域マッチングが可能な点にあります。

また、人事異動が多い銀行業界の中で、当社は10年以上M&Aの実務に携わっているメンバーが6名、5年以上を含めると13名が在籍していることも特徴です。経験豊富な専門人材が多数在籍していることで、ノウハウの共有と高い専門性を維持した組織づくりが可能となっています。


「M&A」を一括りに捉えず、それぞれの専門領域を深掘り
専門性を極め、顧客ニーズに寄り添うグループ分業体制



―貴社の事業内容や支援体制について教えてください。

山本:当社のM&A支援は、3つの組織で構成されています。上場・中堅企業をご支援対象とする第一グループ、中小企業を中心にご支援する第二グループ、外部連携によるご支援に特化した第三グループになります。

私が所属する第一グループは、中長期視点での役割を担う組織として明確に位置付けています。これにより、時間をかけてお客様との信頼関係を構築することができ、大型案件のご支援も着実に増えています。

また、M&Aの潜在ニーズを抱えるお客様に対する能動的なご提案や、エリアを跨いだM&A支援の拡大も、当グループの重要ミッションです。

小柳:第二グループは、後継者不在による事業承継型M&Aや、会社の成長を見据えた積極的な買収ニーズにお応えしています。

また、グループ内には業界特化型の「事業戦略チーム」があります。主に、特定の業界(ヘルスケア、学校法人、不動産M&A等)のお客様をターゲットにM&A支援を遂行するチームであり、各専門領域は、時代の変化や社会的ニーズをいち早く捉え、機動的に立ち上げてきました。一例ですが、不動産M&Aについては、コロナ禍で京都の宿泊業や観光ビジネスなどが甚大な打撃を受けたことで、従業員の雇用や地域のビジネスを守るためのサポートを私たちが担わなければならないという使命感から注力することとなりました。

今後も深刻な課題を抱える業界に対しては、地域金融グループとして意図的かつ積極的に関与していく方針です。業界に精通したプロフェッショナル人材を配置し、あらゆる業界課題に即座に対応できる体制を構築していくことを目指しています。

企業戦略第二グループ グループ長:小柳大地様

企業戦略第二グループ グループ長:小柳大地様

―2026年4月に新設されたという第三グループについて教えてください。

築澤:当社はもともと300〜400近い提携先と定期的に情報交換を行っており、昨年度だけでも年間150件を超える譲渡案件のご紹介をいただきました。しかし、ご紹介いただいた譲渡案件のマッチングに十分なリソースを割けないという課題がありました。

当社が目指すのは、京都フィナンシャルグループ内だけではなく、地域の公共団体や税理士の先生、他の金融機関の皆様と連携し、「M&Aならまずは京都M&Aアドバイザリーに相談しよう」と思っていただけるような、地域の相談役になることです。

その実現のために発足されたのが、外部から寄せられる譲渡案件の支援に特化した第三グループです。京都フィナンシャルグループが持つ豊富な買い手ネットワークと、外部からの譲渡案件を結びつけていくことが第三グループの役割となります。

企業戦略第三グループ グループ長:築澤考拓様

企業戦略第三グループ グループ長:築澤考拓様

―組織分業にはどのようなメリットがありますか?

山本:分業による最大のメリットは、それぞれのグループがそれぞれの分野で腰を据えて案件に取り組めるようになったことです。第一グループで言えば、PEファンドや事業承継ファンドの活用など、難易度の高い案件を特定の担当者が継続して担当することで、社内にノウハウが蓄積され、次の大型案件へと繋がっていく好循環が生まれています。実際に、2025年度の1件あたりの平均手数料額は5000万円程度となっており、戦略的な組織改編の成果が数字にも表れ始めています。


地域金融グループの使命である、京都の伝統産業を守った事例



―貴社の特徴や役割が活かされた事例をお聞かせください。

小柳:地元京都の伝統産業である、創業100年超の和装関連企業の事例についてご紹介します。もともと営業店取引があったお客様から、ご息女への親族内承継に関するご相談をいただいておりました。

その後、親族内承継が難しくなったため、第三者承継の検討を開始しました。他社との競合もありましたが、これまでの営業店の対応を評価いただき、当社でM&Aを支援させていただく運びとなりました。

売り手オーナー様は、同業に限らず柔軟な発想を持つ若い経営者がいる企業への譲渡可能性も含めたお相手探しをご希望されていました。そのため、地場ネットワークとプラットフォームを併用しながら幅広くお相手を探し、その中で、東京で動画制作を中心に事業を展開するA社とのご成約が実現しました。

本案件の支援で私たちが特に気をつけたことは、異業種参入となるA社に和装業界を理解していただくことです。複数回にわたるトップ面談の機会を設けて、A社に安心して検討頂けるように努めました。

最終的には「和装と言う日本独自の文化を自社のノウハウを活かして世界へ発信していきたい。」というA社の明確なビジョンが決め手となり、ご成約が実現しました。売り手オーナー様は当初、引継ぎ後に引退を希望されていましたが、「A社と共に新しいことに挑戦したい」との思いから、現在も意欲的に事業運営に取り組まれています。

日本には、優れたノウハウと顧客基盤を有しながらも、後継者や職人の不足、市場の縮小などの課題によって、廃業を余儀なくされる企業が数多く存在します。今回のお客様も同様の課題を抱えていましたが、地域内にこだわらず広くお相手を探したことで、和装事業に将来性を見い出したA社に承継することができました。

地域金融グループには、地域の伝統産業を守る使命があります。全てのステークホルダーにとって望ましい新体制でスタートできた本案件は、弊社にとっても象徴的な事例になったと感じています。

地域のM&Aに関するハブ機能を果たす相関図

京都M&Aアドバイザリーが目指す未来と果たすべき役割
分社化がもたらした好循環。M&A支援で創る地域の未来



―最後に、貴社の今後の目標をお聞かせください。

築澤:分社化から10年後となる2034年度に「100名体制・年間売上50億円」という数字を掲げています。地域金融機関発のM&A専門会社でもここまでできるということを社会に示すことは、M&A市場を活性化する上で意義があると考えています。

しかし、当社は決して売上のためにM&A支援に取り組むわけではありません。お客様の一番の相談相手として、それぞれの課題を解決してまいります。その真摯な取り組みの積み重ねが、結果として数字に結びつくと信じています。

我々だけで全てを完結させる必要はありません。M&A支援に取り組む他の金融機関や士業の方々、地方自治体や民間企業の皆様と様々な形で手を取り合い、1件でも多くの幸せなM&Aを実現していく、それが私たちの描く支援の形です。

集合写真

京都M&Aアドバイザリーの皆様と株式会社バトンズ 取締役 鈴木安夫

Interviewer

株式会社バトンズ 取締役
鈴木 安夫(Yasuo Suzuki)
足利銀行、日興コーディアル証券へM&Aトレーニーとしての出向を経て2004年日本M&Aセンター入社。経営支援室 執行役員金融法人部長 執行役員金融企画部長を歴任。2018年6月バトンズ取締役に就任。公的機関、金融機関などとの連携推進部門を管掌。