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2021/02/22

中小企業は後継者不足で大廃業時代へ/個人M&Aのススメ

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中小企業は後継者不足で大廃業時代へ/個人M&Aのススメ
 会社と個人事業者を含めた日本の企業数は、1999年には485万者でしたが、2016年には359万社になり、実にこの間、約1/4の企業が姿を消しました。 「今後5年間で30万以上の経営者が70歳になるにもかかわらず6割が後継者未定」 「高齢化が進むと企業の業績が停滞する」 「70代の経営者でも承継準備を行っている経営者は半数」…。  これらの現状に危機感を抱いた中小企業庁は、2017年7月、事業承継のための支援を集中的に実施するため「事業承継5カ年計画」を策定しました。  そして2020年は5カ年計画の4年目にあたりましたが、この間国は、事業承継を地域で支援するためのプラットフォーム(事業承継引継ぎ支援センター)を設置して、事業承継のための啓蒙活動やマッチング支援に力を入れつつ、「事業承継税制」や「事業承継補助金」などの施策を実施し、中小企業の事業承継支援に力を入れました。  私の周りでも商工会議所の支援を受けて事業承継計画を作成した企業や事業承継補助金を活用して販路拡大のための新たな取り組みに着手した企業、経営資源引継ぎ補助金を利用して会社を売却(M&A)した中小企業の経営者など、いくつかの取り組み事例がありました。  これらの施策が一定の効果を生んでいるのは間違いありませんが、小手先の施策という印象は拭えません。  それは、事業承継が進まない真の原因である「後継者難」、そして「業績低迷」「借入過多」「連帯保証」といった各種問題の抜本的解決策を講じたとは言えないからです。  そして日本中がコロナ禍に見舞われた2020年に休廃業・解散した企業は4万9698件に上り、2000年の調査開始以来過去最高を記録、これらの企業に勤務していた従業員12万人以上が勤務先の変更や離職を余儀なくされました。  「休廃業・解散」とは、経営者の高齢化や後継者不足などを原因として、経営者が自ら事業をストップしたケースです。  休廃業・解散を選択した経営者は70代が41・7%と最も多く、60代以上で全体の84・2%を占めており、高齢になった経営者が事業の継続を断念するケースが多数発生していることが分かります。  そしてこれら休廃業・解散を選択した企業の6割以上が直前決算で黒字を計上していたことからも、事業の引継ぎ手がいれば存続できたはずの企業が相当数含まれていたことが伺われます。  一方「倒産」件数は、破産や民事再生法の適用を受けたケースや手形・小切手の不渡りから銀行取引停止となったケースなど、債務の支払不能などで経済活動を続けることが困難になった企業を集めています。  2020年は、新型コロナウィルス感染拡大を受けて倒産件数の増加が懸念されていましたが、持続化給付金や無利息貸付けなど政府の支援策の効果もあり、全体では7773件と前年の8383件から7・2%減少しました(東京商工リサーチ調べ)。  しかし、倒産件数のうち、代表者の死亡や体調不良など、「後継者難の倒産」に絞って見てみると、2019年の270件が2020年は370件(前年比37・0%増)と過去最多を記録し、あらためて後継者難で事業が行き詰まるケースが多いことが分かりました。  同調査においても、多くの中小企業は、代表者が経理や営業、人事など経営全般を担っているため、代表の死去や病気、体調不良などに直面すると事業運営に支障をきたすリスクが顕在化しつつある。と指摘しています。  国は円滑な事業承継のために、さまざまな支援策を講じていますが、日々中小企業の経営者と接して感じるのは、現在健康で日常業務に飛び回っている中小企業の経営者にとって、事業承継の話が大切なのは頭では分かっていても、経営者が病気にでもならない限り、緊急性が低いと判断され、具体的に議論するのが難しいケースが多いということです。  また、事業承継の支援に力を入れている専門家からも、このまま経営者が年を重ねた場合のリスク、後継者候補がいないこと、後継者の育成には一定の時間がかかること、さらには株式の扱いや借入金の連帯保証の問題など、論点を整理して検討する前の段階で止まってしまうケースが多く、なかなか議論が進まないという話をよく聞きます。  このようなことからも、休廃業・解散件数や後継者難倒産の件数は高止まりしたまま推移することが懸念されます。
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