事業再生
830
2021/01/22

中小零細企業と大企業の違い④:組織体制未整備

記載者情報
中小零細企業と大企業の違い④:組織体制未整備
 中小零細企業と大企業では、実は経営の参考書等では書かれていない様々な違いがあります。  そして経営の参考書やビジネス書などに書かれている内容の多くは大企業に関する内容であり、中小零細企業には当てはまらないケースも少なくありません。  そのため、M&Aで大会社のサラリーマンが買収して中小零細企業の経営者になった場合、大企業と同じような感覚で、教科書通りや、サラリーマン時代で経験した大企業の感覚で経営をしてしまい、その結果、うまく経営できず業績を悪化させているケースが多発しています。  中小零細企業の経営をまずは中小零細企業の実態を理解し、それを踏まえて評価しなければ、中小零細企業をうまく経営することはできません。  そこで、中小零細企業の実態について、8回にわたって大企業と比較しながら説明していきます。 中小零細企業と大企業の違い4回目は、「組織体制未整備」です。 ●組織体制が未成熟  中小零細企業は、社員数が10名以上いても組織体制が十分に整備されていません。  例えば、管理者がいない、あるいは機能していない、正社員ではなくパートが責任者で統制が取れていない、などです。  その場合、部門内の統制が取れず、現場の日々の問題が改善されない、部門内で協力体制が築けず対立する等が発生し、業務の品質低下や非効率化を招いてしまいます。  また大企業の場合、組織体制がしっかりと構築されているため、部門や役職で役割(業務内容)が明確ですが、中小零細企業の場合は役割が曖昧で、業務が属人的です。  そのため社員は、会社の都合ではなく、個人の都合で業務範囲を決めてしまうのです。  つまり、以前から続けている慣れた仕事しか取り組もうとせず、新たな仕事はやりたがらないのです。  従って、中小零細企業の社員は、日常のルーチン業務しか行わなず、社長や管理者が新たな方針を打ち出し、新たな業務を依頼しても「これは私の仕事ではありません」と断ってしまうのです。  その他、中小零細企業は、業務ルーチンに不備があって無駄な作業を日々繰り返す、PCが苦手で業務スピードが遅いなど、生産性は低くなりがちです。  また、大企業の場合は部下や後輩を育成することが仕事の一部になっていますが、中小零細企業ではOJTは仕事の一部になっておらず、部下を指導するかどうかは個々の社員に任されています。  また、マニュアルも整備されていない場合も多々あります。  そのため、中小零細企業の社員の成長が遅く、スキルが低いまま業務を行う社員も多く、スキルが一部の社員に偏ったりしています。  さらに、経営者からのトップダウンや現場からのボトムアップの情報の伝達が不十分になり、戦略や方針が現場へ浸透しません。 ●組織が硬直化、環境変化への対応が困難  以上により、中小零細企業は、人材や組織体制の柔軟性が低く、組織が硬直化してしまっています。  つまり、単純労働だけの、日常のルーチン業務を回すだけの体制に陥っているのです。  その結果、改革や業務改善、環境変化への対応が苦手な場合が多くなってしまうのです。
関連コラム