事業再生
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2021/01/20

【事業再生事例】金型・プレス加工業

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【事業再生事例】金型・プレス加工業
■事業概要  当社は金型製造とプレス加工を行う会社である。  企業規模は、売上高は5,000万円程度であり、社員数は5名(外注1人含む)である。  社長と息子が金型製造とプレス加工業務を担当し、社長の妻が経理、納品活動は一般社員、そして営業活動は外部の知人に委託しているという、家族経営に近体制である。  昭和30年台創業と社歴は長いが、近年は競争激化のため売上が減少傾向であった。  当社は、「金型製造+プレス加工」の双方での受注のみ受け付け、「金型製造」のみの注文は断っている。  理由は、金型のみだと単発で安定した売上にはならないこと、さらに金型販売で図面を提示することで技術が流出してしまうためである。  金型加工の見積の内訳は、「材料費」「脱脂費(補助材料費)」「外注費」「加工費」「管理費」という構成であり、当社がこの中で利益になるのは「加工費」である。  ただし、この加工費は「回転数」と「数量」によって決定される(1分間で何個できるか)ため、特殊な技術や差別化が利益に反映されない。  つまり、「高単価によって少量でも高い利益率を狙う」という、中小企業が取るべき差別化集中戦略で、利益を出しにくい業界であると言える。 ■問題点  問題点は、営業戦略を構築していなこと、そして営業を外注担当者任せにして振り返りを怠っていることである。  外注の営業担当者は、自社の強みを一応は理解しているが、詳しい訳ではなく、明確に伝えられていない。  また、彼は大手電機メーカー出身で、大手企業に広い人脈を持っているため、訪問先は大手メーカー向けに偏っている。ただし大手は新規で口座を開設することはほとんどないため、ほとんど受注に結び付いていない。  その他、ターゲットが不明確化なため、外注の営業担当者の訪問しやすい顧客を回っているだけである。  さらに、営業ツールがなく、当社の技術の理解が十分ではないため、受注につながる詳細な提案ができていない。  上記のような状況のため、日々多くの新規企業を訪問していても受注に結び付いていない。 ■強み  当社の強みは、その加工技術の高さで、特に「超薄型」「超小型」「複雑形状」の加工技術が高い。  金型を1㎛の誤差で作成可能である。  また、製品図面を見ただけで金型の工程をイメージでき、工程の簡素化による低コスト化が可能な高い設計力も持っている。  競合他社でも、ここまで高い技術を保有しているところは少ない。 ■改善策  改善策は大きく3つある。経費削減と、営業活動の見直しである。  経費削減は、具体的には人材の見直しである。  社長の息子がすでに高い技術を承継しており、設計や製造をメインで担っているため、社長自身の手待ちが多くなっている。  そのため、納品や営業活動は社長が行うようにすればいい。  それにより、高い外注費を削減でき、かつ営業活動は社長自身が行うため提案の質は向上する。  営業活動の見直しは、ターゲットを同業社に設定し、同業者向けの営業強化を行う。  同業他社は新規取引開始のハードルがなく、案件が発生すれば受注につながりやすい。  さらに、微細加工などで悩んでいるケースもあるため、それらを請け負うようにすることで、安定した受注を獲得できると考えられる。
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