TOPM&A記事・コラム事業承継・M&AトピックスROEとは?3要素に分解して構造を理解し、戦略展開へのポイントを押さえよう

ROEとは?3要素に分解して構造を理解し、戦略展開へのポイントを押さえよう

2021.06.10

ROEは重要な財務指標の1つです。日本でもROEを経営上の重要な指標と考えてIRを行う上場企業が増えてきており、その数値の意味を理解することは重要です。

この記事では、ROEの構造をわかりやすく解説し、ROEをアップさせる方法、重要なポイント、分析する際の注意点をお伝えします。

ROE(自己資本利益率)とは?

ROEとはReturn on Equityの頭文字をとったもので、株主資本に対する当期純利益の比率を計算することによって「経営の効率性」や「株主に対する還元効率」を示す財務指標です。

ROEは管理会計上のみならず、株主の目線で企業の収益性や効率性をはかるための指標となります。Returnは会計上の利益が採用されるのですが、株主資本が分母なので、それとのつじつまを合わせるために当期純利益を用いることが一般的です。詳しい計算方法は後述します。

ROEが重視されるようになった背景

ROEが重視されるようになったのは、株主や投資家を意識した経営をする企業が増えてきたということが背景にあると言えるでしょう。日本は伝統的に売上至上主義であるため、これまでは営業利益率が重視されてきました。しかし、上場企業はステークホルダーである株主がいる以上、株主に対して経営の効率や財務上の収益性・効率性を数値で説明できる必要があります。特に最近はアクティビストファンド(経営破綻や分社化、M&Aなどの分岐点を利用して収益を狙う投資ファンド)等の存在も大きくなってきたことから、ROEを意識した経営をする企業が多くなっています。

日本のROEの現状

ROEはもともと、コーポレートファイナンスの先進国である欧米で、重要な財務指標としてアニュアルレポートやIRで開示されることが多くなっていました。日本では従来、ROEは低い状態にして、実質的な無借金経営を目指す企業が多い傾向にありましたが、コーポレートガバナンスの認識が広がるとともに、株主の目線を意識した経営が注目されるようになりました。主に上場企業など大企業を対象に、ROEがIR上の重要な数値であるという認識が広まってきています。しかしいまだ日本のROEは、欧米に比べると低い水準にとどまっています。これは、利益の株主還元や再投資を手厚くするよりも、自己資金を高めることを重視してきたためと言われています。

ROEを重視することのメリット

ROEは、利益と資産活用の効率性、借入額と自己資本の完全な割合などを同時にみることができる指標です。そのため、ROEを意識することは、企業を成長させていくための経営能力の確認にも有効です。同じ理由で、金融機関からの格付け評価があがることにもつながります。

また、ROEを重視することで株主目線での経営が可能になり、ROEが改善した場合は株主から好感を持って受け取られることになるので、株価向上も期待できるでしょう。

一方、株主の立場にとってみれば、ROEを重視する理由は明快で、当期純利益が株主に帰属する利益であるからです。株主資本を効率的に使って当期純利益が上がれば、それが株主への配当の原資になるからです。

ROEを導く計算方法

ROEは、「当期純利益÷株主資本」で計算されます。

当期純利益を親会社株主と少数株主に帰属するものと考える場合は、分母は少数株主持分を含めた数値で計算します。一方で親会社株主に帰属する当期純利益を分子にして計算する場合には、分母は少数株主持分を除く株主資本になります。

なお、分子がPL*項目であるため、分母は期末と期首の平均値を採用することが一般的です。

*PL:Profit and Loss statement 損益計算書のこと

ROEの計算式は分解できる

さきほど、「ROE=当期純利益÷株主資本」で計算されると説明しましたが、ROEはさらに分解して計算することが可能です。

ROE = 当期純利益/売上高 × 売上高/総資産 × 総資産/株主資本

すなわち

ROE = 売上高当期利益率 × 総資産回転率 × 財務レバレッジ

上記の式より、ROEを上げるためには「売上高当期利益率」「総資産回転率」あるいは「財務レバレッジ」の3つの数値を改善することが重要だと分かります。

純利益率

売上高純利益率=当期純利益÷売上高 で計算されます。

当該数値が高い場合は株主目線での収益性が高く、低い場合は株主に帰属する純利益が十分に稼げていないということが分かるでしょう。

総資産回転率

総資産回転率=売上高÷総資産 で計算されます。

総資産回転率が高い場合は、総資産を利用して高い売上高を生み出している、つまり経営の効率性が高いと言え、低い場合は総資産をうまく活用できていないという判断になります。

財務レバレッジ

財務レバレッジ=総資産÷株主資本 で計算されます。総資産=株主資本+他人資本(借入金などの負債)です。

財務レバレッジが高い場合は、借入等の負債を活用していると判断でき、一方で財務レバレッジが低い場合は、借入に依存せずに自己資本を活用した企業と判断できます。

ROEの分解とデュポン分析

上記のROEを「売上高純利益率・総資産回転率・財務レバレッジ」の3要素に分解して分析することを「デュポン分析」といいます。この3要素を上げることができれば、ROEの向上が可能になります。

①売上高純利益率をアップさせる方法

売上高純利益率をアップさせる方法は「利益を維持して売上高を減少させる」「売上高を維持して純利益を増加させる」というアプローチが考えられます。前者は現実的に実現させる難易度が高いので、、後者の純利益を増加させる手法が一般的です。

純利益は、営業利益から営業外損益と特別損益を控除した数値です。営業利益、営業外収益(金利収入など)、特別利益(資産の売却など)を組み合わせることで向上可能となります。重要なポイントは、営業外項目や特別損益項目で純利益を稼ぐのではなく、本業から得られる営業利益増加を図ることです。

例えば、売上高1,000の企業の営業利益が300・純利益が100の場合、営業利益率30%・純利益率は10%となります。当該企業は売上高が横ばいなので販管費を50削減し、営業利益350・当期純利益150にしました。その結果、営業利益率35%・当期純利益率15%になり売上高純利益率が5%増加します。

売上高の水準が一定、事業状況の変化が少ないなどの前提であれば、営業利益増大がそのまま純利益率向上に反映されることがわかります。売上高純利益率を上げることで企業の収益性改善を示すことができるので、株主や債権者からの印象が良くなるというメリットがあります。

②総資産回転率をアップさせる方法

総資産回転率をアップさせる方法は、売上高が一定であるとすれば総資産の数値を小さくすることで、実現できると考えられます。

例えば、売上高100で総資産100である場合の総資産回転率は1ですが、総資産を80にすれば1.25です。重要なポイントは総資産を意図的に小さくするのではなく、不採算事業からの撤退や、滞留資産の処分等により資産圧縮を図るなどの経営判断を実行することです。総資産回転率を向上させることで、事業に関係ない資産を圧縮して事業に関連性の高い資産で売上高を計上することができ、資産効率性が高まっているという印象を与えることができます。

③財務レバレッジをアップさせる方法

財務レバレッジをアップさせる方法は単純です。他人資本である借入金を増やせば自己資本の金額は相対的に小さくなり、財務レバレッジは上昇します。

例えば他人資本100、自己資本100の場合、財務レバレッジは2になります。一方で他人資本を増加させ(借入実行など)他人資本200・自己資本100にした場合、財務レバレッジは3となり、結果として財務レバレッジが上昇するのです。

ただし、借入により財務リスクが高まるので企業の財務安全性を考慮した範囲で、実行を進めていくことが重要です。財務レバレッジ上昇により自己資本の比率が相対的に小さくなり、ROE上昇が狙えると同時に、調達した資金を事業に投下し、さらに利益を獲得することが期待できる半面、実行には十分な注意が必要です。

ROEをアップさせる際の注意点

では、ROEをアップさせたいと考えたときどのような点に注意すればよいのでしょうか。

ROEを用いた比較は同業内で行おう

ROEは企業間で比較することも多いですが、その際は事業内容が類似している企業で行いましょう。例えば、小売業とSaaS(サービスとしてのソフトウエア)を提供する企業では収益性や資本構成も異なり、一貫した比較にはなりません。また、株主や投資家も同業他社比でROEを比較するのが一般的です。

過度な施策は安定性を損なう危険性がある

ROEの向上は重要ですが、過度なROE偏重主義は問題です。これは短期的な利益追求主義や、無為に財務レバレッジを増加させて財務リスクを高める結果になるためです。

売上高純利益率が高いことは望ましいことですが、投資家や株主は利益率のみならず過去から比較した場合の利益成長率を重視します。特に株価の上昇を考えた場合、成長企業は売上高や利益の成長率が高い会社が目立つので、利益率の絶対値のみに注目しないことが肝要です。

財務レバレッジは自社に適した設定を

先述したように、財務レバレッジが高すぎれば財務リスクの上昇、信用格付けの低下という結果を招くことがあり、銀行からの借り入れや社債発行がしにくくなる弊害もあります。財務レバレッジ、即ち資本構成は最適な水準に保つことが重要です。

企業の売上高が伸びていなくても、自社株買い等の資本政策を実行して自己資本を圧縮することもできるので、財務レバレッジやROEが高くなっているケースもあります。

まとめ

企業の経営や財務に問題はないか、資金活用・使途は的確かを判断するためには、売上高や利益の増加を図りつつ、デュポン公式に基づきROEを3要素に分解することが重要であることがわかりました。

①収益性=売上高純利益率の向上、②資産効率の向上=総資産回転率の増大、③資本構成の見直し=財務レバレッジの改善を並行して行いながら分析、ROEの改善を実現することが望ましいと言えるでしょう。

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