レポート

2018.10.26

創業115年だけど年商2000万。老舗企業を活かす驚異のM&A術とは?

▼ シリーズ「継がせ人」 水兼税理士グループ 株式会社喜創産業 代表取締役 山本将司 氏 ②

 

こんにちは。バトンズ運営人 アンドビズCEOの大山敬義です。
昨日に続いて、実際の承継コンサルタントに、事業承継の本当の話を伺おうと言うシリーズ「継がせ人」喜創産業 山本将司さんの2回目です。
(第1回 年商数千万・赤字・債務超過でもM&Aを成功させる凄腕承継アドバイザーの仰天発想法 https://atotsugi.batonz.jp/blog/235/
前回はホテルと転売業というあっとビックリの異業種ディールを纏めた山本さんですが、今回は町の水道工事店のお話。
一見同業同士の普通のM&Aのように見えますが、ここにも一味違うものがありました。
(この記事は2018年10月18日開催の会計事務所博覧会での対談を再構成したものです)

▼ 創業6年と創業115年のM&A その意外な相乗効果とは?

 

大山  「次の成約事例ですが、これってTVで取り上げられたって聞いたのですが。」


山本氏 「はい、NHKの「所さん、大変ですよ」という番組で取り上げてもらいました。”ネットで買って夢の社長”というタイトルだったのですが、実際の譲渡式の場面にTVカメラが入り、私もアドバイザーとして取材を受けました。」


大山 「凄いですね。NHKが取り上げるほど話題性があったということだと思うのですが、どんな話だったのですか?」


山本氏 「譲渡される方は東京の水道工事店さんだったのですが、創業から数えれば115年という非常に古い企業です。ただ社長様もお一人だけいた従業員さんもご高齢で既に廃業に向けて準備に入っているような形で、売上も2000万円ほどになっていました。」


大山 「115年!それは凄いですね。でもここまで売上も減っていてはなかなか相手もでずらかったと思うのですが、確かバトンズに登録して3ヶ月間でマッチングしていますよね。譲り受けた会社はどんな会社だったのですか?」


山本氏 「私の地元、広島県三原市の同業の会社です。ただしこちらは創業6年の若い会社で、売上は2.5億円ほどでした。」


大山 「創業6年が創業115年を継承したわけですね。それにしても広島の若い会社がいきなり東京の企業を引き継ぐとは結構な決断が必要だったんじゃないですか?」


山本氏 「そうですね。本当のことを言うと、元々の相談は広島の県北の方に出たいという話だったんです。公共事業も手がけている会社だったので、カバー範囲を広げるという考えですね。」


大山 「それならよくわかります。それがなんでいきなり東京になったのでしょう?」


山本氏 「県北といっても広島の北部は山間部ですから、どこ行くにも三原からなら平気で3時間くらいかかりるんです。東京だって飛行機で2時間半ぐらいで行けますから、時間だけ見たら別に変わらない。」


大山 「まあ、そう言われれば確かにそうですが、そうは言っても流石に県北と東京では全然違うんじゃないですか?」


山本氏 「あと、ここが大事な点なのですが、上下水道というのは交換時期というのが決まっていて、その時期は大きな工事が出るのですが、それを過ぎるとメンテナンスのみになってしまうのです。三原地区は現在は大型工事が出ている時期なのですが、それも永続する訳ではない。」


大山  「なるほど、だから最初県内の別地域への進出を考えた、と。」


山本氏 「そうです。しかしそれも結局順繰りですから、最終的には経営を安定させるためには民間の仕事も増やしていかないといけない。とはいえ、地方で民間の仕事を増やしていくのは容易ではありません。ならば一番民間の仕事が多い東京が進出するならベストだと思うのです。もちろん一からお客様を開拓しようと思えばとても大変なことですが、M&Aで顧客を引き継げれば問題ありませんから。」


大山 「確かにお客様が引き継げると言うのはM&Aの最大のメリットですよね。しかも引き継いだ会社は品川区ですから、今後リニアや新幹線の新駅の設置で大開発が行われている場所です。ここの工事が取れるのはデカイ!」


山本氏 「それに地方と東京の企業の組み合わせには売り上げだけでないメリットもあるのです。」


大山 「ほう、例えばどんな点がありますか?」


山本氏 「一番大きいのは人です。水道工事にはどうしても技術者が必要ですが、東京ではなかなか中小企業に優秀な技術者が来てくれないし、賃金も高い。
地方は逆です。東京よりずっと安価な報酬でも優秀な人が来てくれますから、大きな工事なら、必要な時に出張してもらっても十分割りがあうのです。」


大山 「なるほど。三原は空港からも近いですし、新幹線の駅もありますからね。それに羽田空港へのターミナル駅で、新幹線の駅もある品川なら、実は広島ー東京間の人の交流という面でも有利ですね。」


山本氏 「もう一つ大きな点が歴史の継承というメリットです。実は両社とも資材などはほとんど同じものを、同じ先から仕入れていたのですが、買い手が地方都市で業歴が浅いため、売り手と比べると仕入れ値が1割くらい高かったのです。」


大山 「つまり、仕入れを売り手経由にするだけで10%も利益が上がる、ということですか!」


山本氏 「その通りです。確かに地方の会社がいきなり東京に出るのは覚悟がいりますが、一つ一つそこから得られるベネフィットを考えれば、自ずと答えは明らかだと思うのです。」


大山 「因みに結局投資額はどのくらいだったのでしょう?」


山本氏 「既に清算に近い状態だったので、実質的には残った現預金を退職金として支払う形でした。だから持ち出しという面では0に近いです。ただ当然引き継ぐための経費は諸々かかりますから、それを含めて500万強と言ったところでしょうか。」


大山 「500万で東京の老舗を引き継ぎ、事業を拡大できたというのは大きいですね。」

山本氏 「はい、しかしそれだけではありません。今回の事業承継を成功させたことで、社長の視点が一段階上がったことが何より大きなことだったと思います。それによってものの見方や考え方のスケールが明らかに大きくなり、経営者として大きく成長されたのではないかと思います。本当のことを言うと、これがこの事業承継の一番のシナジー効果だったのではないでしょうか。」


いかがだったでしょうか?


私が現場でM&Aのアドバイザーをやっていた時代を振り返ると、ともかく、どのような素晴らしい組み合わせが作れるのか、そしてその発想とそれを実際の企業戦略にまで落とし込む提案力が、アドバイザーの腕の見せ所でした。

ネット時代になり、また例え企業規模が小さくても、その本質というものはやはり変わらないものなのだと思いますね。

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