
▼さて、前回①は登壇者のご紹介だけで終わってしまいました。②では、本編についてご紹介したいと思います。
(左から織田竜輔氏、千布真也氏、中野雅之氏、市川紀幸氏、大山敬義)
テーマは「“あとつぎ”はイノベーションを起こせるのか」
ファシリテーターの織田氏は、イノベーションの研究をされているとのことで、その織田氏によれば、「イノベーションとは理想と現実をいかにつなぐか」であると言います。
瞬く間にスマートフォンは世界の携帯電話のスタンダードとなりました。大きくて重いPCを、ポケットに入れられる携帯電話と一体にして、自由に持ち運べるようにした。この「どこでもPCが使えたらいいのに」という理想と現実をつなげた結果、爆発的な拡がりを見せたのでしょう。
ただ、こと事業承継問題においては、「どこからでもあとつぎを探せたら」という理想は実はまだ小さいニーズです。今はまだ「廃業するよりいい方法はないか」そんな漠然とした理想と現実をつなぐものとして、“あとつぎ”がイノベーションになり得そうです。
単純なリバイバル商法ではだめ?
AMD千布氏は、金沢の伝統食材「こんかこんか」を引き継ぎました。ただこれは、昔流行った商品をもう一回販売してみよう、ということではないと言います。どんな場所で、どんなパッケージで、どんな謳い文句で販売するのかなど考えて、生まれ変わり商品とすることが必要なんだそうです。
新たな伝統の始まり。ここに地方都市成長のヒントがあるのではないかと、千布氏は言います。
事業承継に取り組む経営者はたったの2割
あらゆるところで大廃業時代が叫ばれるものの、アンケートによれば実際に事業承継に取り組む経営者は2割程度と川崎商工会議所中野氏は言います。というのも、当然自分で会社を興した経営者からすれば、「自分の会社をどうしようと勝手じゃないか」という思いもあるはずなので、特に誰にも相談せず、事業承継と言っても何をすればよいのかも分からないのでこうした数字になるのではとのこと。
しかも、川崎市に限らず、日本の企業は中小零細企業が大半ですから、ご家族と数名の従業員とともにひっそりと廃業していく、これしか方法がなかったんです。さらに、そうした時に廃業以外の道があることを専門家(税理士、会計士など)も知らない。なので相談に行っても「残念ですが廃業手続きをしましょう」で話が終わってしまいます。
会社を継いでくれる人が見つけられることを知る、サポートできる専門家を教育し増やす、この2点が今後廃業を食い止めるキーポイントだと中野氏は言います。
ピンチはチャンス!
実は素晴らしい時代になった、と言うのはアンドビズ大山。事業承継が一斉に起これば、当然日本全体がガラッと変わる。それは、誰にとってもチャンスなんじゃないかと思います。これまでの事業承継は、やりたくなくても、苦手でも、家業ならやらなければなりませんでした。でも、事業をやってみたい人、得意な人が承継したらどうでしょうか。千布氏のように、やりたい人が新たなアイデアをもって伝統事業をやってくれたとしたら、そこに必ずイノベーションが起こると思う、そう大山は語ってくれました。
小さな企業の承継は国もサポートしきれず
中小企業庁は全国に事業引継ぎ支援センターを設けて事業者の支援をするものの、小さな企業の後継ぎ探し(第三者への承継)については手が届いていないところだと言います。
今はまだ「(家業があるわけでない)自分が後継ぎになる」そんなイメージ自体湧いていない方がほとんどかと思います。でも、これから副業や起業・独立といった選択肢の中に、“あとつぎ”が含まれてくるのです。この発想が根付いていけば、廃業の減少を食い止めるどころか、起業の増加にもつながり、地域力、国力の増強になるのではないでしょうか。
これから起こる『あとつぎ革命』
今回、事業承継の在り方を変え得るイベントとして、「あとつぎ会議」に参加してきました。実際に後継ぎとして見知らぬ事業を引き継いだ社長、後継ぎ不在に悩み試行錯誤する行政、そして地域団体の方、後継ぎを探すサービスを提供する社長と、あらゆる立場の方それぞれに今思っていることを聞くことができました。
そして本会議のテーマ「“あとつぎ”はイノベーションを起こせるのか」への回答としては、「起こせる」ということになりそうです。“あとつぎ”が一般化すれば事業承継の在り方が変わり、起業→廃業といった当たり前の経済循環が、半永続的な事業の存続・成長(変革)へと移ります。最初にその事業を作り上げた方はその分のプレミアムとして廃業するよりも対価(金銭だけでなく、従業員の雇用、顧客取引継続など)が得られますので、理想と現実をつなぐという意味でイノベーションになり得ます。
実際の“あとつぎ”である千布氏の話を聞くと、引き継いだ事業に新たな伝統を作らねばダメなんだ、と言います。つまり、“あとつぎ”は継いだ事業に自分の理想も詰め込まねばならないのです。この意味では、「“あとつぎ”はイノベーションを起こさねばいけない」のかもしれないですね。
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