レポート

2019.03.25

サラリーマンがスモールM&Aで起業!成功するために必要な資本家マインドとは

2月26日、大盛況のうちに幕を下ろしたM&Aカンファレンス「WiNNOVATION 2019」。プログラムの中でも、アンドビズ代表の大山敬義と、日本創生投資 代表取締役社長であり、大ヒットした「サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい 人生100年時代の個人M&A入門 」の著者、三戸政和氏との対談セッションは参加者からの人気が高く、好評を博しました。

「スモールM&A」と題して行われた今回の対談では、両氏が“お金の稼ぎ方に対するマインドチェンジ”と“M&A起業のリアル”について、赤裸々なトークを展開。今回はそのエッセンスを紹介します。

ロスしても許容できるリスクの上限を決めておけば、M&A起業で恐れることはない

 

大山ここ1年程、小規模M&A市場では今までに経験したことがないような変化を感じ取っています。バトンズでは4年ほど前からインターネット上で案件を公開してきましたが、3年ほど前のユーザー数はわずか2400人ほどでした。それが、この1年くらいで2万3千人を超える方に利用されるまでになっています。比例してバトンズ上で成約した案件数も急に伸びており、現在までに180件成約しています。

三戸M&Aによる事業承継を考えている人が増えた背景には、中小企業の*社長の連帯保証(経営者保証)を、銀行が求めなくなったことが浸透してきたことが、市場が伸びている大きな要因のひとつではないでしょうか。経営者が保証人になる必要がなくなったため、会社が倒産しても、社長は借金地獄に陥らなくて済むようになりました。小規模M&Aのニーズが喚起されるきっかけになっているのではないかと考えます。

※「経営者保証に関するガイドライン」について政府広報オンラインから抜粋:

“このガイドラインは、金融庁と中小企業庁の後押しで、日本商工会議所と一般社団法人全国銀行協会を事務局とする「経営者保証に関するガイドライン研究会」の検討の成果としてまとめられたもので、融資の際に経営者保証が不要な条件を明らかにするとともに、早期に事業再生や廃業を決断した場合は経営者に一定の生活費を残し「華美でない自宅」に住み続けられる可能性などを示したもの”

自著を出版して以降、ツイッターなどで本当に多くの方から質問をされるようになりました。そうしたやりとりをする中で感じるのは、みなさん必要以上にリスクを恐れて行動に移さないということです。リスクを取らない人ほど、リスクを考える傾向があると感じています。M&Aはディールブレークが多発するもの。いいマッチングをするためには、数回のマッチングが上手くいかないからといってすぐに行動を止めてしまわず、行動し続けることが非常に大切です。

必ずリスクはあるため、冷静にそれがどこまであるのかを考えることが大切です。基本的には会社を買うということは有限責任*ですから、仮に300~1000万円 でM&Aによって会社を譲受した場合、その出資額以上の返済リスクはありません。最悪のケースはどういった状況か、ロスしてもなんとかなるお金の上限はどこまでかを自分で考えておけば、それ以上の損失を被ることは基本的にはないと言えるでしょう。

※ 有限責任: 会社が倒産したときなどに、会社の債権者に対して出資額を限度として、責任を負うということ

大山おっしゃる通り、ギャンブルのような感覚で企業することは絶対にしてはいけません。しかし、すぐにマッチングのお相手探しを辞めてしまってはいいM&Aを実現できないないですからね。実際に小規模M&Aを考えている人は、リスクがあってもカバーできるくらいのお金、あるいは、ビジネスチャンスがあっても追加投資できるくらいのお金は残しておくべきです。背負えるリスクを熟考し、そのうえで、“会社を買う”ことが目的ではなく、“経営者から引き継ぐ形で自分がやりたいことを実現する”という気持ちがなければうまくいかないでしょうね。

三戸我々ファンドの場合も、何百件あるうちの一件しか投資しません。時には、我々が実になると思って提案しても、反対に相手から断られるケースもあります。理由がお金でなく断られることも。そういう時、経営者はうまくいかない時の気持ちのコントロールの仕方を学び、メンタリティーを維持することが大切だと思うんです。

気持ちのコントロールができていないと経営はできませんから。自分は本当にこの事業をやりたいのかを考え、一緒に仕事をしていきたいと思える会社をお相手に選ばなければ、どこかで心が折れてしまう。

資本家マインドをもったサラリーマンが“株主業”を選択することがあたり前になる

大山三戸さんは、“サラリーマンは資本家になれ”とおっしゃっていますよね。これはどういう意図なのでしょう。

三戸そのように著書でも書いているのは、ゼロイチで会社を立ち上げることと、既にあるリソースを活用して起業することの苦労を比べると、圧倒的に後者のほうが成功しやすいからです。私自身、昔、ゼロイチで会社を立ち上げたことがあるのですが、すごく大変でした。ものすごく汗をかきながらも、そんなに儲けられない。その時に、金の卵(利益の上がる事業)を生むにわとり(エクイティ)を持っていることがいかに重要であるかを痛感したのです。

さらにいうと、極論ですが“株主業”をやれば自分が汗をかかなくてもお金を稼ぐ仕組みを得ることができます。資本家としてお金を稼ぐ仕組みを得たときの対価と、サラリーマンとして働いて得る対価を比べたときの差は桁違いです。そこで、複業が解禁されたいま、資本家のマインドを持ち、会社員として培った組織運営のノウハウを小規模企業の経営に活かすことができれば、複業としての株主業を行うことは不可能ではないと考えます。

大山なんというか、もともと我々は、お金って労働の対価だと思ってきました。頑張って働けばお金がもらえる。しかし、“実際にはそれがすべてではないのかもしれない”という指摘をされたのは、とても重要です。昔はこのようなことを言う人はいなかったですよね。それどころか、働かざる者食うべからずというというのが常識でしたからね。笑

三戸そうなんです。これをいうと敵を作ってしまうかもしれません。笑 しかし、そうした事実もあるということを理解してもらったうえで、働き方を選べると思っています。

大山いまは選ぶことができる時代なので、選択するときに明確な意思を持っていることが大切ですよね。ふたつの稼ぎ方に対するマインドがあり、どちらがよいかは自分で選べばいい。ある意味、資本の秘密を語っていますね。サラリーマンよりも資本家になれというのではなく、ふたつの選択肢があることをまずは知ってもらいたいですね。

事業承継型のM&A起業が成功しやすい理由

大山私も自分で起業して見て分かったのですが、起業には死の谷(売上1千万円を超えるかどうか)という難関があると思います。バトンズの場合も、売上1千万円を超えるのがすごく大変でした。

三戸確かに、起業してから売上1千万円を超えるまで、様々なハードルを越えなければいけません。特にゼロイチからの起業の場合は、法人口座を作らなければならないなど、会社を立ち上げる準備するだけでもハードルが高い上に、名前もない会社で人を採用しようとしてもいい人材が来るわけがない。ゼロイチレベルの起業は99%が失敗するといわれています。そうした現状を踏まえると、あえてしんどい道をいくよりも、すでにある資源を活用する方が単純に楽だろうと思って。

すでに銀行口座があって、銀行から融資まで受けていて、社員もいる会社が10~20年と存在しているのなら、そのインフラを活用して、自分のやりたいことを付け加えたり、モデルチェンジをしていけば、起業と変わらないのではないでしょうか。そうすることで、単純にビジネスの初速が上がるでしょう。

私は、ファンドでベンチャーキャピタルのゼロイチ起業も事業承継も見てきましたが、どっちが楽かなと考えたら、事業承継の方が圧倒的に有利です。例えば、ユニクロの柳井正さんの例をとっても、お父様から譲り受けた会社があったからこそ、様々な事業を経て、あそこまで大きく成長されました。

大山今後、廃業を余儀なくされる企業のほとんどは中小企業です。すでにある資産(会社)を有効活用することで、ビジネスの成功率が上がるというのであれば、活用しない手はないですよね。

現在、バトンズで公開されている案件は約1500件ありますが、案件の入れ替わりは活発化しており、毎月およそ100件の新しい案件が更新されている状況です。ということは、事業承継型M&Aを活用して起業しようとしている人は、1年あれば1000件超の新しい案件に目を通せるということになる。

また、実際に成約した事例を少し紹介しますと、創業100年以上の歴史ある京都のお惣菜屋さんが、70代の経営者に引き継がれました。錦市場内に店舗があるためインバウンド集客を見込めると考え、引き継いだ経営者は店内を改装し、購入した商品を店舗内で食べられるようにし、英語のメニュー表なども設置したところ、売上が7倍になったといいます。

また金沢では、地元の人に愛されてきたこんかづけという保存食をなんとか存続させたいと、東京のデザイン会社がこんかづけの製造会社を引き継がれました。M&A 後は、新こんかづけとして、昔ながらの味をそのまま引き継ぎ、パッケージはデザイン会社の考案によって一新。無事、地元に愛されてきた味を存続させることができました。現在はクラウドファンディングなどで販売されています。

どちらのケースも、事業に対する想いや計画性が明確にあったからこそ実現した事業承継型M&Aです。ぜひみなさんも、諦めずに根気強くお相手探しを続けていただくことで、必ず、“自分で真剣に経営をやってみたい”と思える会社との出会いがあると思います。

三戸失敗から学んでいくという気持ちを持って、スモールM&Aにトライし続けて欲しいですね。

 

三戸政和  株式会社日本創生投資 代表取締役社長
ソフトバンク・インベストメント インキュベーション部/SBIホールディングス 海外事業部シンガポール駐在/兵庫県議会議員/Tajimaya UK 代表取締役社長/同志社大学卒
日本最大級のベンチャーキャピタル(運用総額1,500億円)にて、国内外の投資先に経営参画しながら、成長戦略、株式公開支援、M&A戦略、企業再生戦略などを行う。その後、兵庫県議会議員として、行政改革に着手後、地元の加古川市長選挙出馬のため議員辞職し出馬するも、落選。ロンドンにて神戸ビーフのプロモーション会社Tajimaya UKの立上げを行い、従業員へ事業引き継ぎ。中小企業むけの事業承継・事業再生専門の投資ファンドである日本創生投資を創業。

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